インデックス運用とパッシブ運用の違いとは?

インデックス運用とパッシブ運用の違いとは?

  • 公開日:2023年10月25日

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

資産運用業界にいるとインデックス運用、パッシブ運用の言葉は良く使うのですが、その概念をあまり詰めて考えることは少ないかもしれません。改めてこの概念を整理してみたいと思います。

インデックス運用は運用目標を表したもので、パッシブ運用は主に運用手法に着目した概念ではないかと思います。運用目標はどのような運用パフォーマンスを目指すのかということで、運用手法はその目標をどのように実現していくかというものです。

運用目標としては、
①特定のインデックス(対象指数)を定めて、そのパフォーマンスをトラック(追随)していくこと、
②特定のインデックス(対象指数)を定めないで、一定の目標パフォーマンスを獲得するもの、
③特定のインデックス(対象指数)に対して上回るパフォーマンスを狙うものです。

通常、インデックス運用、パッシブ運用の対義語は共にアクティブ運用です。しかしながら上記運用目標②の中でルールベースの運用はアクティブ運用ではなくパッシブ運用です。また、③の中でルールベースの運用は運用の裁量範囲が、狭ければパッシブ運用とも、広ければアクティブ運用とも言える場合があります。インデックス運用の対義語はアクティブ運用ではなくて「インデックス運用ではない運用」と整理したほうが良いと思われ、以下の表のようにまとめられます。

運用手法と運用目標

※上記は当社独自の考えに基づく分類であり、一般的な分類とは異なる場合があります。

これから順を追ってご説明したいと思います。

なお、2023年10月16日現在、日興アセットは36本の国内ETFを運用しています。その総てがパッシブ運用のETFで、うち35本は指数に運用成果を高位に連動させるインデックス運用のETFになり、残りの1本は対象指数を定めないルールベースの運用を行います。

インデックス運用

運用手法と運用目標(インデックス運用)

※上記は当社独自の考えに基づく分類であり、一般的な分類とは異なる場合があります。

インデックス運用は、運用目標がインデックス(指数や指標、特定の価格)の動きと運用成果が高位に連動することを目指す運用です。つまりインデックス運用は運用目標を表現したものになります。

インデックス運用の特徴

投資家の視点からは、インデックス運用には以下の特徴があると思います。

✓ 安定性

インデックスの値上がり、値下がりに連動した運用成果になりますのでインデックスの価格変動特性がそのまま反映されることになります。ただし、その運用成果が大きくインデックスと乖離することが少ないということからインデックスに対する運用の安定性は高いと思われます。

✓ 比較的運用コストが安い

競合商品が出易く、価格競争にさらされるため比較的運用コストが安い傾向があります。

✓ リスク分散

連動対象のインデックスによりますが、多くの銘柄が組み入れられていますので投資対象が分散されることにより、リスク分散されます。

インデックス運用のETF

今まで、日本の証券取引所に上場しているETF、日本で組成された国内ETFと海外で組成された外国ETFは総てインデックス運用のETFとなっていました。2023年6月29日にはインデックス運用でないETF、アクティブETFの制度が導入されました。

ご参考:JPX アクティブ運用型ETFの説明

◆ 日興アセットマネジメントのインデックス運用ETF

✓ 日本株

分類 コード 愛 称  連動対象指数 特 徴
日本株 1308 上場TOPIX TOPIX (東証株価指数) 東証上場銘柄に広く分散投資
1330 上場225 日経平均株価 日経平均に投資するETF
1358 上場日経2倍 日経平均レバレッジ・インデックス 日経レバレッジインデックスに連動
1399 上場高配当低ボラティリティ MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数 高配当と低ボラティリティを目指すETF
1481 上場日本経済貢献 JPX/S&P 設備・人材投資指数 設備・人材投資に積極的な企業に投資
1490 上場高配当低ボラティリティ(βヘッジ) MSCIジャパンIMIカスタムロングショート戦略85%+円キャッシュ15%指数 ロング・ショート戦略に連動
1578 上場日経225(ミニ) 日経平均株価 小口投資が可能なETF
1586 上場TOPIX(除く金融) TOPIX Ex-Financials ダブルギアリング規制を回避
1592 上場JPX日経400 JPX日経インデックス400 JPX日経400に投資、小口投資が可能
1698 上場高配当 東証配当フォーカス100指数 高配当株(リートを含む)に投資

✓ 外国株(米国株、中国株、先進国株、新興国株、日本を除く世界株)

分類 コード 愛 称 連動対象指数 特 徴
外国株 1322 上場パンダ 円換算したCSI300指数 中国本土株(A株)に投資
1547 上場S&P500米国株 円換算したS&P500指数 米企業500社に投資(為替ヘッジなし)
1554 上場MSCI世界株 円換算したMSCI ACWI ex Japanインデックス 日本を除く全世界株に投資
1680 上場MSCIコクサイ株 円換算したMSCI-KOKUSAI インデックス 日本を除く先進国株に投資
1681 上場MSCIエマージング株 円換算したMSCI エマージング・マーケット・インデックス 新興国株式に投資
2521 上場S&P500米国株(為替ヘッジあり) 円換算したS&P500指数(円ヘッジ) 米企業500社に投資(為替ヘッジあり)
2235 上場ダウ平均米国株(為替ヘッジなし) ダウ・ジョーンズ工業株価平均(TTM、円建て) 米企業30社に投資(為替ヘッジなし)
2562 上場ダウ平均米国株(為替ヘッジあり) ダウ・ジョーンズ工業株価平均(TTM、円建て、円ヘッジ) 米企業30社に投資(為替ヘッジあり)
2568 上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジなし) NASDAQ100指数(円換算ベース) 米国上場100社に投資(為替ヘッジなし)
2569 上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジあり) NASDAQ100指数(円建て、円ヘッジ) 米国上場100社に投資(為替ヘッジあり)
2239 上場S&P500レバレッジ2倍 S&P500先物2倍レバレッジ日次指数(エクセスリターン) S&P500の日次騰落率2倍を目指す
2240 上場S&P500インバース S&P500先物インバース日次指数(エクセスリターン) S&P500の日次騰落率マイナス1倍を目指す

✓ 外国債券(米国債、豪州国債、フランス国債、世界国債、新興国債)

分類 コード 愛 称 連動対象指数 特 徴
外国債券 1486 上場米債(為替ヘッジなし) S&P 米国債7-10年指数(TTM、円建て) 米国国債に投資(為替ヘッジなし)
1487 上場米債(為替ヘッジあり)
S&P 米国債7-10年指数(TTM、円建て、円ヘッジ)
米国国債に投資(為替ヘッジあり)
1566 上場新興国債 円換算したブルームバーグ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックス 新興国の債券に投資
1677 上場外債 FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース) 先進国の債券に投資
2843 上場豪債(為替ヘッジあり) ブルームバーグ豪州国債(7-10年)インデックス(為替ヘッジあり、円ベース) 豪州国債に投資(為替ヘッジあり)
2844 上場豪債(為替ヘッジなし) ブルームバーグ豪州国債(7-10年)インデックスTTM(為替ヘッジなし、円ベース) 豪州国債に投資(為替ヘッジなし)
2861 上場フランス国債(為替ヘッジなし) ブルームバーグ・フランス国債(7-10年)インデックスTTM(為替ヘッジなし、円ベース) フランス国債に投資(為替ヘッジなし)
2862 上場フランス国債(為替ヘッジあり) ブルームバーグ・フランス国債(7-10年)インデックスTTM(為替ヘッジあり、円ベース) フランス国債に投資(為替ヘッジあり)

✓ リート、外国リート

分類 コード 愛 称 連動対象指数 特 徴
リート 1345 上場Jリート 東証REIT指数 日本のリートに投資
2552 上場Jリート(ミニ) 東証REIT指数 小口で日本のリートに投資が可能なETF
2566 上場ESGリート 日経ESG-REIT指数 日本のリートにESG投資ができる
外国リート 1495 上場アジアリート 円換算したFTSE EPRA/NAREIT アジア(除く日本)リート10%キャップ指数 日本を除くアジアのリートに投資
1555 上場Aリート 円換算したS&P/ASX200 A-REIT指数 豪州のリートに投資

それぞれの指数が連動対象となっています。
ETFラインアップはアラカルト料理のようになっていて、特定の資産、指数に投資したいという方には便利な品ぞろえになっているかと思います。ただし、このように投資対象を決めることが難しい投資家の方もいらっしゃると思います。そのような方には「ETFの運用方法について」を参考にしていただければと思いますが、幅広く分散投資されたい方は日本株、日本を除く世界株、世界債券、リートを組み合わせるのがおすすめです。

パッシブ運用

運用手法と運用目標(パッシブ運用)

※上記は当社独自の考えに基づく分類であり、一般的な分類とは異なる場合があります。

一方のパッシブ運用ですが、インデックス(指数や指標、特定の価格)の動きと運用成果が高位に連動する、インデックスの動きに受け身的についてゆく運用成果を目指すことを意味している場合はインデックス運用と同義語になりますが、インデックスの構成銘柄・構成比率を様々な手法でコピー、複製するような運用を意味するパッシブ運用は運用手法を表現したものになります。
運用手法には以下のような手法があります。

パッシブ運用の運用手法 1.現物運用

パッシブ運用の運用手法には、インデックス(指数や指標、特定の価格)の構成資産・銘柄(株や債券等)に投資する手法が一般的です。現物運用(Physical replication=現物複製)と言うこともあります。

◆ 完全法

インデックスの構成銘柄・構成比率に沿って、そのまま複製するような運用を完全法といいます。

◆ サンプリング法

意図的に代表銘柄に寄せて運用するサンプリング法と言います。

◆ 最適化法

計量的モデルを使って銘柄選択、組入れ比率を調整する最適化法があります。

パッシブ運用では、運用成果がそのインデックスと乖離することが最も困ることなので、指数をそのまま複製しようとする完全法は手堅い運用方法です。ただし、インデックスの構成銘柄数が多いとか、構成銘柄数には流動性が低く売買コストがかさむ銘柄もあります。そのため完全法で運用する意図であるものの、ETFの資産規模がある程度以上無いと投資しきれなかったりすることがあったり、投資にコストがかかりすぎてしまうことから当該銘柄への投資をしないこともあります。それをルールベース、計量的な管理を取り込んだ手法がサンプリング法であり最適化法になります。その手法は連動対象指数の構成銘柄・組み入れ比率からファンドの構成銘柄・組み入れ比率を変えていくことになります。

パッシブ運用の運用手法 2.シンセティック・レプリケーション運用

連動対象インデックスに相関性が高い別の資産(仕組債、ETF)や先物やスワップ取引のようなデリバティブを使って運用するものもあります。シンセティック・レプリケーション(Synthetic replication=合成複製)運用などと呼ぶことがあります。シンセティック・レプリケーションは指数に採用されていない先物やスワップといった代替資産で行います。

このように見ていくと、パッシブ運用といっても、完全法から、サンプリング法、最適化法、シンセティック・レプリケーションに行くにつれて銘柄選択の裁量が高くなってゆきます。

運用手法と運用目標(パッシブ運用)

※上記は当社独自の考えに基づく分類であり、一般的な分類とは異なる場合があります。

パッシブ運用のETF

東京証券取引所に上場する多くの国内ETFの運用方法はパッシブ運用、完全法のものが主力です。一部のETFに関して、サンプリング法、シンセティック・レプリケーションのものが見られます。
多くの日本株式、外国株式、外国リートETFの運用手法は完全法ですが、採用銘柄数が多い連動対象指数に比してETFの純資産残高が多くない場合、結果、サンプリング法的になっているものがあります。なお、中国株とアジアリートのETFはETFを買って運用するもの(シンセティック・レプリケーション、日興アセットマネジメント調べ)になっています。
外国債券ETFでは、採用銘柄数が多い連動対象指数(グローバル債券、新興国債券)のETFはサンプリング法で運用されています。債券は株式よりも個別の値動きをすることが少ないので、代表銘柄に片寄せして運用することができるといった背景もあります。採用銘柄数が少ない連動対象指数のETFでは完全法で運用されています。
日本リートのETFは、ほぼ完全法で運用されています。

◆ 日興アセットマネジメントのパッシブ運用ETF

2023年4月末の日興アセットマネジメントが運用する国内資産(株式・リート)のETFは以下の表になります。

✓ 国内資産(株式・リート)のETF

国内内資産(株式・リート)のETF

この表は連動対象指数の採用銘柄数に対して、ETFがどのくらい指数採用銘柄を保有しているか見たもので、その殆どが指数採用銘柄を全部保有している手堅い運用手法、完全法で運用されています。
上場インデックスファンドTOPIX Ex-Financials(1586)は、ファンドの純資産規模対比で指数採用銘柄がすべて入りきらないのですが、手堅い運用手法、完全法を目指しています。
上場インデックスファンド日経レバレッジ指数(1358)の連動指数は、日経平均株価の日々の変動率の2倍を指数化したもので、この指数には採用銘柄がありません。この指数の動きに連動するために、ETFは株価指数先物、ETFを使って運用されています。レバレッジ・インバース指数の特徴は採用銘柄が無く、元の指数の変化率を倍にしたりマイナス1倍にしたりしています。その運用法は、詳しくは記事「レバレッジETF・インバースETFとは?」をご参考にいただければと思いますが、先物などの派生商品による運用が主なので、シンセティック・レプリケーション運用のETFと言えます。これは次に出てくる海外資産に投資するETFのレバレッジ・インバースETFも同じです。

次は2023年4月末の日興アセットマネジメントが運用する海外資産(海外株式・海外債券・海外リート)のETFになります。

✓ 海外資産(海外株式・海外債券・海外リート)のETF

海外資産(海外株式・海外債券・海外リート)のETF

この表も連動対象指数の採用銘柄数に対して、ETFがどのくらい指数採用銘柄を保有しているか見たもので、多くが指数採用銘柄を全部保有している手堅い運用手法、完全法で運用されています。
しかしながら広範な国の株式に投資するETF(上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本(1554)上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(1680)上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)(1681)上場インデックスファンド新興国債券(1566)上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型(1677))では、指数採用銘柄の総てが保有されているのではありません。基本、完全法の運用を考えつつ流動性からくる取引コストや指数の組入れ比率からの影響度合いを勘案したもので、手堅い運用とコストのバランスを考えたものです。世界各国の債券に投資するも上記と同じ運用です。
一方、海外のETFで現地の資本規制が厳しい、運用対象資産の流動性からETFで代替投資をする運用方法もあります(シンセティック・レプリケーション)。上場インデックスファンド中国A株(パンダ)E Fund CSI300(1322)は連動指数に300銘柄が採用されていますが直接株式に投資せず、中国本土に上場しているETFに投資しています。また、上場インデックスファンドアジアリート(1495)については連動対象指数に、43銘柄が採用されていますが直接リートに投資するのではなくシンガポールに上場しているETFに投資しています。

以上、インデックス運用とパッシブ運用の違い、パッシブ運用の運用手法について考察・整理してみました。昨今、インデックス運用のETF、投資信託は人気があると言われますが、その人気の理由の中心は安定性にあるのではないかと思うことがあります。運用商品で顕在化する問題の多くは「投資してこんなはずではなかった」ということです。運用会社は投資家の期待に応えなければならないと強く思いました。

(以上)

[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。