運用担当者インタビュー

グローバルREIT市場の動向と今後の見通し

インフレの進行を背景にした各国中央銀行による利上げや今後の動向、景気減速懸念などを背景に投資環境は引き続き不透明な状況が続いています。グローバルREIT投資において、足元の状況はどのように捉えるべきでしょうか。

「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)/(1年決算型)」のマザーファンドの運用を行なう、ラサール インベストメント マネージメント セキュリティーズ エルエルシ―(以下、ラサール社)のマット・スグリッツィ氏に、グローバルREIT市場の動向と今後の見通し、そして投資機会や注目のセクターついてインタビューを行ないました。

マット・スグリッツィ氏
ラサール インベストメント マネージメント
セキュリティーズ エルエルシー、CIO
佐々木 裕子
日興アセットマネジメント
資産運用推進部

1.インフレ・金利上昇とグローバルREIT市場


―物価上昇を上回る不動産の利益

佐々木(日興アセットマネジメント 資産運用推進部):
2022年は世界的なインフレの進行を背景に、中央銀行による利上げが進むなど様々な出来事がありました。しかし、ここ最近では変化の兆しも出てきたように思います。まずは、一般論として、インフレや中央銀行の利上げフェーズは、不動産・REIT市場のファンダメンタルズにどのような影響、あるいは関係性があるのでしょうか。

スグリッツィ氏(ラサール社CIO):
それでは簡単にこれまでの投資環境を振り返りたいと思います。この数年間は本当に例外的な投資環境だったと思います。それはまさにコロナの影響によってもたらされたものです。コロナ禍における需要急減などを背景とした、世界的なデフレ懸念と景気悪化に対応するため、中央銀行は積極的に反応し、大量のマネーを市場に供給しました。また人・企業等を支援するための巨額の財政・金融政策も行なわれました。

一方で、長引くサプライチェーンの停滞等から、製品や資源、食料の価格上昇が急速に進み、その後インフレが引き起こされました。コロナ禍からの実体経済の回復は大変素晴らしかったと思います。多くの人が想像していたよりも経済はずっと速く回復し、ずっと力強いものだったことが分かりました。

スグリッツィ氏:
インフレと不動産・REIT市場に関しては、非常に強い相関関係があると考えています。インフレの進行に伴ない、REITの収益は拡大しており、多くのREITセクターにおいてその上昇率はインフレ率を上回っています。一般的に、不動産はインフレ耐性を持つ資産の代表例だと言われていますが、米国の消費者物価指数と不動産が生み出す利益(不動産営業利益)を約30年にわたって比較してみると、不動産の利益は物価上昇を上回って推移してきました(図表1)。この理由の1つとしては、特に海外の不動産の賃貸借契約には、物価の上昇に応じて賃料が引き上げられるインデクセーション(Indexation)という条項が盛り込まれている場合が多いことが挙げられます。加えて、今は新規物件供給が少ない状況ですから、賃料を上げやすい環境にもあると見ています。

■(図表1)米国の不動産営業純利益(同一物件ベース)と物価の関係

1992年第1四半期~2022年第3四半期、起点を100として指数化
※消費者物価指数:米労働省労働統計局(季節調整済みの全都市消費者物価指数)、不動産営業純利益(同一物件ベース):NCREIF(米国不動産投資受託者協会)よりラサール社が算出※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

スグリッツィ氏:
ただし、金利上昇があらゆるアセットクラスに影響を及ぼすように、不動産・REITにおいても金利の影響を完全に免れることはないということです。経済がデフレ懸念からインフレ懸念へと急速に転換した中で、私たちは資本市場の著しい変化を見てきました。それは中央銀行がコロナ禍で市場に投じた資金を引き上げたことに起因する、実質金利の大幅な上昇です。その結果、2022年は多くのアセットクラスのリターンがマイナスとなりました。

通常、株式やREITが下落するときは、突然の需要ショックが起きた時などです。経済成長が非常に弱含んでしまったか、外的なイベント、あるいはリセッションに起因する場合が多いのですが、2022年はそうではありませんでした。確かに今後リセッションに入るのではないかという懸念はあります。しかし、2022年の動きは違っていて、不動産床需要も弱くはなっておらず、私は「バリュエーション・リセッション」と呼んでいるのですが、資本市場のショックが原因だと考えています。


―不動産・REIT市場からみる景気の行方

佐々木:
経済は既にリセッションに入っているのでしょうか。

スグリッツィ氏:
誰もがまさにそこに注目しています。私たちは不動産・REIT市場から景気の動向を見ています。景気循環を予測するのは簡単ではありません。しかし、各指標を非常に注意深く見ることによって、蓋然的に見えてくるものはあります。私たちとしては、2023年の1-3月期に米国と欧州で景気後退が起こる可能性が高そうだと考えています。だだし、これはGDPの観点からだけではなく、より幅広く具体的な経済活動を確認する必要があります。米国は2022年上期のGDPはマイナスでしたが、雇用は伸びており、経済そのものは景気後退になっていませんでした。日本は2022年7-9月期にGDPがマイナスになっていますが、実際はコロナ禍から景気回復しています。

2022年の不動産・REIT市場のファンダメンタルズは非常に強かったものの、今後は減速を予想しています。ただし、それでも相対的には健全な状態にあると思われます。中央銀行の金融政策に伴ない、全ての金利が上昇しイールドカーブ全体も上昇しましたが、実は不動産に影響を与えうる長期金利は、短期金利ほど上がっていません。よって金利上昇についてはそれほど懸念してはいないのです。現在の不動産・REIT市場のファンダメンタルズ全体としてはこのような見立てですが、世界全体の変化を捉えるためにリサーチを続けています。

佐々木:
今年、景気後退あるいは景気後退に近いような状況が起きれば、それこそ中央銀行の利上げのペースもスローダウンしていくだろうと考えられます。政策金利自体は上がっていくのかもしれませんが、長期金利はむしろ下がるような状況は、不動産・REIT市場にとってポジティブなのでしょうか。

スグリッツィ氏:
様々な要素の組み合わせにもよると思いますが、概ねその通りだと考えています。ただし、FRB(米連邦準備制度理事会)が、今後短期金利をどのようにしていくのかには注意を払う必要があります。債券市場は、FRBのアクションが実際の需要や経済にどのような影響を与えるのかを見ています。より経済成長に関して大きな懸念があれば長期金利が下がるかもしれないですし、クレジットスプレッドが上昇するかもしれません。また、インフレ期待が下がるかもしれません。金融引き締めが景気を崩さず、ほどよい経済成長を目指していく世界では、REITはその恩恵を受ける資産だと、私は考えています。

すべてを予想することは難しく、また各要因がどう組み合わさり、それらが不動産市場にどのような影響をもたらすのかということを私たちは常に考えています。アセットクラスとしてのREITは、債券と株式のハイブリッドのようなものなので、このようにあらゆる要因から分析することが必要になります。不動産は経済の重要な構成要素でありながら経済そのものだと私は思っています。

佐々木:
REITとは、債券と株式のハイブリッドのような資産とおっしゃいました。例えば、株式投資だったら基本的にはキャピタルゲインをメインに考えます。もちろん、配当などのインカムを重視する投資戦略もありますが、基本的には株式はキャピタルゲインを期待したいものです。債券投資は、インカムの安定性が重要なポイントだと思います。REITの場合は、その両方を捉えていこうとするものと考えて良いでしょうか。

スグリッツィ氏:
その通りです。REIT投資のストーリーというのは、インカムと価格上昇の両方が組み合わさっています。不動産のインカムにはインフレ耐性があり、また株式のように株価の成長も期待できます。REITは株式や債券とはまた違うアセットクラスであり、債券ポートフォリオや株式ポートフォリオに分散効果をもたらします。ですから、多くの投資家にとってREITのエクスポージャーを持つことは重要だと私は考えています。


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2.グローバルREITのバリュエーション



―歴史的な割安水準

佐々木(日興アセットマネジメント 資産運用推進部):
2023年のグローバルREIT市場の注目ポイントをお聞かせ下さい。

スグリッツィ氏(ラサール社CIO):
2022年のグローバルREIT市場は下落の年となりましたが、一方で大幅な価格調整により、より高いインカム・ゲインとキャピタル・ゲインの獲得機会が生まれており、期待リターンは昨年よりも高まっています。もちろん、景気後退や金融引き締めなど、様々なリスク要因や予測不可能なことも出てくると思いますので、すべてを予想するのは大変難しいことですが、今の市場環境を考えると、非常に魅力的なポジションにあると考えます。例えばラサール社が算出するグローバルREITの「NAV(Net Asset Value)プレミアム・ディスカウント」によると、グローバルREITは引き続き長期平均を大きく下回るディスカウント水準で推移しています(図表2)

■(図表2)グローバルREIT指数 NAVプレミアム/ディスカウント推移

2006年7月末~2023年1月末
出所:FTSE EPRA/NAREIT先進国REIT指数構成銘柄のうち、賃料収入を主な収益源とする、指数時価総額の約9割にあたる銘柄を対象にラサール社が算出※上記指数は当ファンドのベンチマークではありません。※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

佐々木:
こちらの「NAV (Net Asset Value)」とは、REITの純資産価値ですね。REITが保有する不動産の価値を時価評価した値から、借り入れなどの負債を引いたものです。そのNAVに対し、REITの価格が割高(プレミアム)なのか、割安(ディスカウント)なのかをみるのが、「NAVプレミアム・ディスカウント」です。確かに割安の状態にあるようです。こちらはなぜでしょうか。

スグリッツィ氏:
1つには、REITは株式市場に上場する証券ですので、株式市場全体の下落の影響を受けて過度に価格の連れ安が起きているためだと考えられます。一方で、REITが保有する不動産のファンダメンタルズは堅調です。稼働率はコロナが収束するにつれて改善し、賃料も上昇基調にあります。物件の新規供給も少ないですから、ダウンサイドも底堅い。世界で取引される不動産価格でも大幅な下落は見られません。つまり、実物不動産に投資をするよりもREITに投資をしたほうが割安な状態である、そして世界金融危機以降で最も割安感が強いタイミングだと考えられます。


―国・地域別でみるグローバルREIT市場

佐々木:
国・地域別のNAVプレミアム・ディスカウント(図表3)を見てみますと、地域によって状況が異なるようですね。シンガポールのみがプレミアム水準で取引されているのは何故でしょうか。

■(図表3)グローバルREIT指数 国・地域別 NAVプレミアム/ディスカウント

2023年1月31日時点
出所:S&P先進国REIT指数の構成銘柄に基づきラサール社が算出
※上記指数は当ファンドのベンチマークではありません。※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

スグリッツィ氏:
シンガポールREITについては、中国でのゼロコロナ政策の緩和による同地域へのプラスの影響が期待されたこと等を背景に、2022年にグローバルREIT全体を上回るパフォーマンスを示したことによる影響等を受けていると考えます。

佐々木:
最も規模が大きい米国REIT市場については若干のディスカウント、という状況なんですね。

スグリッツィ氏:
米国REITについては2022年終盤に価格パフォーマンスが回復し、その結果ディスカウント幅が縮小しました。価格パフォーマンスについては、金融環境の変化や景気後退懸念が和らいだことによる影響もありますが、不動産ファンダメンタルズが引き続き良好な点も後押しする要因になったとみています。

佐々木:
なるほど。香港は大幅にディスカウントされている状況ですが、これは地政学リスクなども関係しているのでしょうか。

スグリッツィ氏:
香港のREIT市場は、商業施設にフォーカスした1社のREITが市場の大半を占めていますので説明が少し難しいのですが、地域レベルでみると、香港と同じく大きなディスカウント状況にある欧州は、どちらも金融引き締めがあり、またどちらも緩和的な状況から引き締まっているということで、ある程度は状況として似ているかもしれません。また、たしかに欧州と香港には地政学的な懸念があり、それも重荷になっていると考えています。

佐々木:
国・地域によって様々な背景や要因がありますよね。だからこそ、REIT投資ではグローバルな視点で市場を捉え、銘柄を見極めつつ、しっかり分散していく必要があるのだと思います。


―セクター別でみるグローバルREIT市場

佐々木:
セクター別のNAVプレミアム・ディスカウント(図表4)ではオフィスは大幅に割安評価されています。リモートワークの普及などを背景にオフィスの需要が減っているからでしょうか。

■(図表4)グローバルREIT指数 セクター別 NAVプレミアム/ディスカウント

2023年1月31日時点
出所:S&P先進国REIT指数の構成銘柄に基づきラサール社が算出
※上記指数は当ファンドのベンチマークではありません。※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

スグリッツィ氏:
コロナ禍で多くの人がリモートワークを経験しました。その後、オフィスに戻る人が少ないというのは世界的な現象であり、地域によって影響の大小はありますがオフィスREITも一定の影響を受けています。人々の働き方が柔軟になっており、以前ほどオフィスの利用が減ったことは、オフィスビルの価値の低下に影響を及ぼしています。また、今後はオフィスビルの競争力を維持するため、貸主のコスト負担が増加するかもしれません。そういった要因が懸念され、価格に下落圧力が加わっており、オフィスセクタ―は大きなディスカウントが続いていると見ています。

しかし私たちは、今後オフィスの需要がなくなるとは考えていません。オフィスは引き続き重要な価値ある資産であると考えています。足元、景気が弱含んでいる状況でもあり、オフィスのファンダメンタルズの改善を見極めるには、まだ時間がかかるのではないかと思います。

佐々木:
確かに働き方は変化していますが、オフィスの需要が全くなくなることは考えにくいですよね。逆にこのディスカウントを投資機会の1つとして捉えることもできそうです。ところで気になったのはデータセンターです。データセンターと言えば、ニーズは高い気もするのですが、こちらもディスカウントの状況にありますが、これはなぜでしょうか。

スグリッツィ氏:
確かにデータセンターは非常に堅調に成長していますし、コロナ禍においても物流施設のように需要が非常に高くなりました。一方で、不動産に対するリスクプレミアムが低く、そのため利回りが比較的低いセクターでもあります。よって、このディスカウント率は、データセンターのファンダメンタルズに起因するというよりは、金融引き締めの影響だと考えます。つまり金利上昇により利回りが上昇し、価格が下落したことの表れだと見ています。

佐々木:
なるほど。セクターの特性によって金利の影響を受けやすいもの、受けにくいものがあるということがよくわかる事例ですね。一方で、ディスカウント率が小さいのが産業関連セクターのようです。例えば物流施設などはeコマースの普及で需要が高まっただろうということが日本でも実感できますが、この傾向はグローバルでも同じでしょうか。

スグリッツィ氏:
グローバルも同様です。コロナ禍でeコマースの普及は急速に進みました。特に物流施設は空室率が非常に低いため、米国の不動産セクター別賃料成長率をコロナ前から2022年第3四半期の累積で見ると、賃料他のセクターと比較しても大きく上昇しています(図表5)。また現在は、「質の高い物流施設」の需要が非常に高まっています。トラックの燃料費や人件費など全ての物流コストも劇的に上がっていますので、物流会社はなるべく届け先のエリアに近い場所や、ロケーションの良いところに物流施設を置きたいと考えています。そうすることでより良いサービスを顧客に提供できますし、コストも抑えることもできます。物流施設は需要が供給を上回っており、堅調な賃料成長を背景に各REITの決算も良好な状態にあります。

■(図表5)米国REITのセクター別賃料増加率(累積)

2019年第4四半期以降の累積、2022年第3四半期時点
出所:JLL(ライフサイエンス及びオフィス)、Public Storage Supplemental Financial(個人向け倉庫)、Invitation Homes Supplemental Financials(戸建て賃貸住宅)、Realpage(集合賃貸住宅)、Prologis Supplemental Financials(物流施設)、CoStar(屋外型商業施設及びホテル)、NIC MAP(高齢者住宅)、CoStar(ホテル)のデータよりラサール社が算出
※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。


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3.投資機会と注目のセクター


―今後REIT市場の成長を牽引するセクターとは

佐々木(日興アセットマネジメント 資産運用推進部):
2023年、あるいは少し先を見据えて注目しているセクターはありますか。

スグリッツィ氏(ラサール社CIO):
まずREIT市場のファンダメンタルズを見る上で重要な指標のひとつである、利益成長率(同一物件ベース)は前年比で10%ほど上昇しています。長期平均が3.0%であることを考えると、かなり高い成長率であり、REIT全体のファンダメンタルズは全体的に好調な状況にあります(図表6)

■(図表6)米国REITの利益成長率(同一物件、前年同期比)

2002年第1四半期~2022年第3四半期
出所: FTSE Epra Nareit All Equity REITs 指数、Citi Researchよりラサール社が算出
※上記指数は当ファンドのベンチマークではありません。※上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

スグリッツィ氏:
今後、景気の後退によりファンダメンタルズに影響が出るセクターもあるかもしれませんが、これまで良好なセクターは今後も成長を続けると考えています。特に、注目しているのが、私たちが「Sheds and Beds」と呼んでいるセクター群です。「Sheds(=小屋)」は倉庫や物置のようなイメージで、物流施設や個人向け倉庫を指しています。「Beds(=ベッド)」は人が家で寝る場所ということから、住宅関連セクターを指し、ヘルスケアや高齢者住宅などのセクターも入ります。これらの「Sheds and Beds」が今、最もファンダメンタルズが強い状況にあります。そして、こういったセクターが、今後もREIT市場全体の成長を牽引していくと考えています。

ただし、2023年は、REIT全体のファンダメンタルズは少し減速すると予想しています。私たちが常に見ているのは、最適な投資機会はどこにあるのかということです。ファンダメンタルズと金融市場、投資環境を組み合わせて常に最適な投資機会を探しています。

投資戦略については必ずしもトップダウンではありません。物流施設が良いから単に物流施設だけに投資するということはせず、適正な価格を提示している先を見つけ出して投資をしていきます。それは常に変化していくものです。しかし、ファンダメンタルズが最も優れているセクターに関しては、たとえ景気後退があったとしても、来年も高い成長を遂げると考えています。


―需要高まる米国の戸建て賃貸住宅

佐々木:
米国では住宅価格は大きく上昇しており、またFRBの金融引き締めで、住宅ローン金利も上がっていると思われます。そうするとなんとなく住宅関連は厳しいような気がしていたのですが、いかがでしょうか。

スグリッツィ氏:
それでは、REITの中でも非常に興味深い、戸建て賃貸住宅セクターをご紹介します。これはREIT市場では比較的新しいセクターであり、世界金融危機で住宅価格が非常に落ち込んだ時に誕生しました。それ以前は、米国REIT市場においては戸建て賃貸住宅というセクターはありませんでしたが、今、非常に素晴らしいビジネスモデルだと評価されています。

スグリッツィ氏:
米国の住宅価格はコロナ前と比較すると大きく上昇し、ローン金利も上昇しています。住宅購入にかかる1ヵ月あたりの費用は何とコロナ前と比較して8割も上がっているという調査もあります。しかし一方で、米国では構造的に住宅の需要が供給をずっと上回っている状況にあり、特に手頃な価格の住宅に供給不足が続いています。

戸建て賃貸住宅REITは、相対的に手頃な価格の住宅を賃貸で提供するものです。物件所有者が強い価格決定力を有していることなどから、賃料の上昇などの不動産ファンダメンタルズの見通しは非常に良好な状況です。また、売りに出される物件の数が限定的であることや、住宅ローン金利の上昇に伴ない、持ち家の購入が難しい環境が継続し、賃貸を選択する世帯が増えていることも追い風となっています。人口の多いミレニアル世代による家族形成の増加も追い風ですね。住宅価格については、今後は下がるかもしれませんが、ユーザーにとっての価値は上がっていくでしょう。

米国戸建て賃貸住宅セクター

【注目ポイント】
■良好な不動産ファンダメンタルズ
  • 米国では構造的に住宅の供給が不足
  • 物件価格とローン金利の上昇を背景に、賃貸の経済的な魅力が向上
  • ミレニアル世代による家族形成の増加が追い風

■今後は、REITによってさらに物件の取得が進み、規模のメリットを生かした物件管理がされると期待

スグリッツィ氏:
米国の住宅市場全体において、戸建て住宅は大きな割合を占めていますが、その多くは「自己所有」物件です。いわゆるマイホームですね。「賃貸住宅」も少しありますがこれは特にプロではない、普通の一般人の大家さんが貸し出している物件です。そういった住宅が中心となっているのが現在の米国住宅市場です。その中で、戸建て住宅のうちREITが保有している物件は全体のまだわずか0.2%程度に過ぎません。つまり、巨大な住宅市場の中で、戸建て賃貸住宅REITは、今後更なる物件取得を進め、ポートフォリオを拡大していく大きなポテンシャルがあると言えます。したがって、長期的には非常に強い稼働率・賃料成長という内部成長と、物件の追加取得という外部成長の両面が期待できると考えています。

佐々木:
各国・地域別ごとに様々な背景があり、さらにセクター別でもそれぞれ違いがあると改めて感じます。世界規模で魅力的なREIT市場の台頭や拡大がみられる中、投資家の皆様にも、このグローバルREITへの投資を通じて、これらの魅力的な投資機会へアクセスいただけたら嬉しいですね。幅広く投資対象市場を分散できる点や、価格水準が異なる中でより多くの割安な投資機会が得られる点も、足元のグローバルREIT投資の魅力だと考えます。本日はありがとうございました。

スグリッツィ氏:
こちらこそありがとうございます。日本の投資家の皆様に、今後もグローバルREITへの投資が資産形成の重要なツールのひとつとしてご活用いただけるよう、引き続き努めてまいります。


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  • 2023/02/22 作成


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