運用担当者が語る

グローバルREIT市場の動向と注目ポイント

2021年末以降、低調な値動きを見せてきたグローバルREIT。各国の政策金利引き上げもあり厳しいとみられる環境下、私たちはグローバルREIT市場をどのように捉えればいいのでしょう。

世界的な総合不動産サービス企業の一角として不動産投資を手掛け、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)/(1年決算型)/(奇数月分配型)」の実質的な運用も行なうラサール社のリサ・カウフマン氏とクリス・バティスタ氏にお話をお伺いしました。

リサ・カウフマン氏
ヘッド・オブ・ラサール グローバル ソリューションズ
クリス・バティスタ氏
シニア・プロダクト・マネージャー

(本記事は2023年11月29日時点の見解に基づきます。)

1.グローバルREITの価格動向


―グローバルREITの長期の価格動向

代表的な指数であるS&PグローバルREIT指数は、長期では右肩上がりに推移してきました。この間には、様々な調整を経験しましたが、2021年末以降の下落もその一つで世界金融危機やコロナ感染拡大以外では、これほど大きな調整はありませんでした。そして、この足元の下落要因の多くは、金融情勢の変化や金利上昇によるものでした。

こうした長期トレンドとともに、調整局面のことを強調する理由は、足元の動きがREIT市場への良好なエントリーポイントを示唆していると考えているからです。過去の動きからは、大幅な調整が絶好の買い場を提供していたことが分かります。そして、不動産が生み出す手堅いキャッシュフローを踏まえると、価格面の調整は、将来リターンを得るための好機になり得るといえるでしょう。

■グローバルREIT指数の推移
期間:2006年1月1日~2023年11月15日

出所:LaSalle Investment Management Securities
グローバルREIT指数:S&P先進国REIT指数(グロストータルリターン、現地通貨建て)。S&P先進国REIT指数(グロストータルリターン、現地通貨建て)は、当ファンドのベンチマークではありません。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。


―2021年末以降の株式や債券との違い

足元の動きを更に詳しく見ていくと、株価指数や債券指数に対してもREIT指数が下回っていました。

長期社債利回りは、金融情勢を表すものと考えられますが、この動きを見るとREIT指数と金融情勢の間には高い相関があることも分かります。これは、不動産が借入などによって調達した資金を投じることで収益をあげる資本集約的な産業であるために金融情勢、つまりは金利の動きに敏感で、金利の上昇がREIT価格の下押し材料になっているためだと考えられます。そして、長期社債利回りは、2023年11月に入り急速に低下しましたが、これを好感する形でREIT価格は、反発の動きを見せました。

■資産クラス別の価格推移
期間:2021年12月31日~2023年11月15日、価格推移はグラフ起点を0%として算出

出所:LaSalle Investment Management Securities
REIT:FTSE EPRA Nareit Developed指数(グロストータルリターン)、株式:MSCI World Equity指数(グロストータルリターン)、債券:Bloomberg Global-Aggregate Total Return指数(すべて現地通貨建て)。長期社債の実質利回り:社債利回りー期待インフレ率(Moody’s BAA指数からLaSalle社が算出)。FTSE EPRA Nareit Developed指数(グロストータルリターン)は、当ファンドのベンチマークではありません。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

REITが株式を下回ってきた理由について多くの質問を受けてきました。

その理由としてまず挙げられるのは、REITが資本集約的で金利の動きに過敏に反応するという点です。そして次に、不動産はセクター毎に大きな違いがあるものの、それが見落とされているという点にあると思います。特に、オフィスセクターでハイブリッドな働き方が広がったことが、グローバルREITの価格の下落に表れていると考えています。

多くの投資家は「REIT=オフィス」という、大きな誤解をしているようです。しかし、グローバルREITに占めるオフィスの比率は5%程度で、オフィスREIT以外で保有されるオフィスを足し合わせても、たった8%程度です。(2023年10月末時点)

また、REIT価格が株価に対して下回っている要因には、過去2年間の株式市場で、一部のハイテク銘柄が好調であったということも指摘できると思います。そうした一部のハイテク銘柄を除けば、株式とREITの値動きの差は縮小することになります。

資本集約的な不動産市場は、金融情勢の変化を大きく受けた。
REIT市場の構造に対する投資家の誤解も下落の一因だ。
クリス・バティスタ氏

―国・地域の差が大きいグローバルREIT市場

他の地域に比べて日本は、中央銀行の緩和的な政策が支援材料となっていました。2021年末以降の動きに注目すると、日本はグローバルREIT市場の平均を20%近く上回っていたことが分かります。

オーストラリアは、中央銀行による金融引き締めサイクルからいち早く転換した地域であり、その恩恵を受けています。より具体的には、指数の約1/3を占める物流施設銘柄が、寄与しました。AI(人工知能)の進歩や関連するニュースを目にしたことがあると思いますが、この銘柄が、今後データセンターを開発すると発表したことは市場に好感されました。

最後に、英国、米国、カナダについてですが、これらは長期にわたる金融引き締めとインフレの影響を受けました。ただ、米国は、データセンターやヘルスケア、戸建て賃貸住宅などの成長セクターが寄与し、他の地域を若干上回りました。

■国・地域別のREITの騰落率

出所:LaSalle Investment Management Securities
S&P先進国REIT指数の各国・地域別指数(グロストータルリターン、現地通貨建て)。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。


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2.グローバルREITの展望と期待


―反発を見せたREIT価格の現在地

足元では、グローバルREITが上昇する動きが見られています。この動きは、株式に対して下回ったことで、REITに対する見直しが行なわれたためともいえます。そしてこれは、継続保有の重要性や反発を狙った新規・追加の投資を考えるタイミングにあることを示唆していると思います。

私たちは実物不動産市場や株式市場に対して、REITが下回っている点にも注目しています。REIT価格は、2023年11月前半の反発を経験してもなお、純資産価値(NAV)に対して約8%ディスカウントされた割安な水準にあります。ただ、このディスカウントは永遠に続くものでなく、いずれ解消されるでしょう。 歴史的に見ると、純資産価値(NAV)に対する大幅なディスカウントは、その後の強力な反発のシグナルとなっていたからです。

■グローバルREITのNAVプレミアム/ディスカウントの推移
期間:2006年11月30日~2023年11月15日

出所:LaSalle Investment Management Securities
FTSE EPRA Nareit Developed Indexに含まれるREIT、またはREITとして認定されていないもののREITと同様に賃料収入を主な収益源とする銘柄からLaSalle社が算出。NAVプレミアム/ディスカウント=((投資口価格/投資口当たりの純資産価値)-1 ) ×100%で算出。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。


―REITの利益成長期待の裏にある賃料上昇

これまでのREITの動きは、金融情勢の影響を強く受けたものであったことはお伝えしましたが、一方で、米国REITの保有物件の利益成長率が、長期平均を上回っている点は見逃せません。確かに、景気減速とインフレ鈍化を受けて、足元で減速する動きもありますが、これは私たちの予想通りのトレンドです。

成長率の伸びは引き続き減速していく可能性がありますが、「インフレに対するヘッジ手段」という不動産の特性に変化はなく、利益成長自体は、今後も継続して達成できると考えています。

今後の利下げ観測が出るなど、景気減速を意識される局面になってきましたが、そうした中でもREITは利益成長を達成できると考えています。その理由は、ここまでに観察されてきた賃料の上昇に由来します。

実物不動産市場で見られる賃料水準の上昇は追い風。
景気減速局面でもREITの利益成長は達成できるだろう。
リサ・カウフマン氏

コロナ前の2019年末から直近までの不動産セクターごとの累積の賃料上昇率を見てみると、すべてのセクターで賃料は上昇し、いくつかのセクターは驚くべき上昇を遂げていました。 物流施設やライフサイエンス、戸建て賃貸住宅、個人向け倉庫などは、コロナの恩恵を受けたセクターの代表格です。

覚えておいていただきたいのは、この賃料はこの間に市場で取引が成立したもの、もしくはテナント募集の際に不動産オーナーが提示する賃料についてのものであるという点です。つまり、REITの保有物件については、その新規契約時や契約更新時には、こうした上昇後の賃料水準が反映されることになるため、今後、仮に景気が減速しても、REITの賃料収入は上昇していくという見通しが立ちます。

■セクター別のREITの騰落率
期間:2019年第4四半期~2023年第2四半期

出所:LaSalle Investment Management Securities
戸建て賃貸住宅及び個人向け倉庫については個別のREIT銘柄(Invitation Homes、Public Storage)による公開情報、またライフサイエンスについては同セクターにおける主要8市場から、その他のセクターについては、米国の各主要都市からLaSalle社が算出。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

さらに、新規の開発着工件数の大幅な減少も、すでに物件を保有しているREITにとっては良い兆しであると考えています。金融引き締めにより資金調達が難しくなっているだけでなく、資金調達コストの上昇によっても新規の着工が抑制されています。今後3年ほどは、物件の供給量が鈍化していくと予想していますが、これは景気減速時に、REITが保有している物件のサポート材料となるだけでなく、景気回復時にはREITの更なる利益成長要因となります。

また、景気減速に直面したとしても、特に物流施設や賃貸住宅をはじめとした成長セクターREITは、力強い成長を遂げると見込んでいます。 そして、賃料の上昇や限定的な供給量に加え、REIT指数に占める成長セクターの割合が高まっていることから、グローバルREITは景気減速を十分に乗り越えられると考えています。


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3.米国ではなく、グローバルを選ぶ理由


―国・地域間の価格変動差が大きいREIT市場

グローバルREITへの投資の魅力は、異なるステージにある不動産市場に投資できる点にあります。不動産投資に限らず、リスク分散の観点から、多様な市場に目を向けることは重要です。REITの値動きに影響する要因は多岐にわたりますが、広範囲に投資することで価格変動を低減しつつ、様々な投資機会を掴むことができるので、特定の市場の影響を和らげることができます。

世界最大のREIT市場は、米国ですが、グローバルREITへの投資で最も重要なのは、米国以外にも多くの市場があるという点です。同じREITとはいっても、各国・地域のREIT市場の騰落率にはばらつきがあり、その順位も基本的に毎年のように入れ替わっています。

そして、過去10年の最上位と最下位の騰落率の差は、平均で30%近くになるというのも見逃せません。つまり、適切に機会を捉えることができれば、大きなリターンを得られる可能性もあるということです。

■国・地域別のREITの騰落率の推移
期間:2014年~2023年(2023年は10月31日まで)

出所:LaSalle Investment Management Securities、S&P Global
S&P先進国REIT指数の各国・地域別指数(グロストータルリターン、現地通貨建て)。S&P先進国REIT指数(グロストータルリターン、現地通貨建て)は、当ファンドのベンチマークではありません。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。


―個々の市場にある割安度合いの差

REITの純資産価値(NAV)に対する割安・割高度に目を向けると、多くの国・地域のREIT価格が割安な状況にあることが分かります。そして、最大市場の米国は、グローバルと同程度の水準にありますが、香港、大陸欧州、カナダなどは大幅に割安な価格で取引されています。

■国・地域毎のREITの割安・割高
2023年11月15日時点

出所:LaSalle Investment Management Securities、S&P Global
S&P先進国REIT指数の構成銘柄より算出。NAVプレミアム・ディスカウント=((投資口価格/投資口当たりの純資産価値)-1 ) ×100%で算出。S&P先進国REIT指数は、当ファンドのベンチマークではありません。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

こうした違いをもたらす要因としては、セクターや国・地域によってREIT価格の動きに大きな違いがある点が挙げられます。セクター毎の違いを考えてみると、オフィスは非常に厳しい見方がされ、取引量が非常に少なくなっている状況です。一方で、商業施設や賃貸住宅といった伝統的セクターだけでなく、通常は将来の成長を織り込んでNAVプレミアム(割高)水準で取引されることが多い、戸建て住宅やデータセンターなどでも割安となっているものがあります。より広い投資対象から選別できるという面でも、グローバルに投資する意義があると考えています。

一国だけを見るのは、他の投資機会を見逃すことにつながる。
広い対象から選別できることが、グローバル投資の妙味だ。
クリス・バティスタ氏

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4.ファンドが投資する注目銘柄


―魅力的な物件を持ち、競争力を持つ銘柄を選別

REITを取り巻く環境は決して悪いものではありません。REITにとって最大のリスクは、マクロ経済の動向ですが、賃料の引き上げ余地やREITの高い財務健全性を踏まえると、過度に景気後退を警戒しすぎる必要はないと考えています。

しかし、銘柄の選別にあたっては慎重な姿勢が必要です。保有物件の立地や業態などに加え、その物件を更に進化させたり、あるいはリサイクルして他の成長機会を探るといった運営力ともいえるものも重要な選別要因となります。そして、世界最大級の不動産サービス企業であるジョーンズ ラング ラサールの一員であり、世界中の不動産市場の情報にアクセスすることのできることは、私たちの大きなアドバンテージになっているいえます。

保有物件の立地や業態だけでなく、
その物件をどう活かし成長していくかにも注目している。
リサ・カウフマン氏

プロロジス(米国)

先進的な設備を備えた物流施設を運営する同社には、高い開発能力による外部成長と、保有物件の高い運用能力による力強い内部成長の両方が期待されます。保有する物件の既存賃料は、市場賃料よりも低いことから、契約更新などに伴う賃料上昇が利益成長をけん引していくと見込んでいます。

私たちは、同社の今年の保有物件の利益成長率は約10%になると予想していますが、同社は30億米ドル規模のプロジェクトを控えるなど開発にも積極的です。

また、これまでに3つの上場REITを買収するなど、買収による成長も行なってきたことから、資金調達コストが低下してきた場合は、物件への投資に加えて、他のREITを買収する動きも出てくるでしょう。


デジタル・リアルティー・トラスト(米国)

データセンターREITに分類できる同社の物件には、近年強い需要がみられています。

デジタル分野の需要の高まりやITアウトソーシングの流れから、データセンターの需要は非常に高まっており、過去数四半期、新規賃借面積が歴史的な水準となっていますが、同時にデータセンターの新規供給も増加がみられました。その一方で、直近1年間は電力不足や用途地域の制限などにより、米国市場ではデータセンターの供給が抑制気味で、これらが同社の保有物件の競争力を高める要因になっています。

こうした外部環境の変化は、同社にとってプラスであり、同社の保有物件では年率平均で約5%の利益成長を達成すると分析しています。加えて、60億米ドル超の不動産価値を創出可能な土地も有しており、同社の利益成長を更に押し上げるものとみています。


アバロンベイ・コミュニティーズ(米国)

住宅市場のファンダメンタルズは鈍化するとみていますが、賃貸住宅を手掛ける同社の物件は、湾岸地域を中心に供給量が少なく相対的に魅力があると考えています。また、保守的な財務運営を行なっていることも、物件の開発をサポートする要因になっています。

高い開発力を有するとともに、優良立地を厳選しており、供給が難しい湾岸地域でも素晴らしい実績を有していますが、重要な点は、これまでの同社の開発がフリーキャッシュフローまたは、保有資産の売却資金で行なわれてきたという点です。古い物件を売却して新しい物件を取得するなど、物件の老朽化に対しても資本的支出を抑えることで対応している点は財務面でポジティブな材料となっています。

上記銘柄は、ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)/(1年決算型)/(奇数月分配型)のマザーファンドの組入上位10銘柄(2023年10月31日現在)の一例です。
ご紹介する銘柄について、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当ファンドにおける将来の銘柄の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。


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NISA(成長投資枠)適格ファンドもラインアップ

世界各国のREITを投資対象にし、中長期的な信託財産の成長をめざす投資信託

ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)

ファンドの概要 / リスク・費用PDF

ラサール・グローバルREITファンド(1年決算型)

ファンドの概要 / リスク・費用PDF

ラサール・グローバルREITファンド(奇数月分配型)

ファンドの概要 / リスク・費用PDF
  • 2024/01/19 作成


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