2022年8月31日に誕生した、日興アセットの新しいファンドシリーズ「Tracers(トレイサーズ)」。
「こんなの欲しかった」をデザインし、ルール通りに運用(トレース)する。
このキャッチコピーのもと、インデックスファンドはもちろん、既存指数に縛られない独創的なファンドを今後ラインアップしていきます。
「Tracers」に関わる日興アセットの「中の人」ならではの、あふれる想いや商品のこだわりポイントなどを多くの方に伝えたい!それがこの「社員が語るTracers!」ページです。
日興アセット中の人「社員が語る Tracers」
2022/09/30 作成
01_Tracers 構想
―Tracers 立ち上げ。そのコンセプトと背景は。
有賀 潤一郎(商品開発部長):
やっと整えられたのかな、という感じです。
「Tracers(トレイサーズ)」は、全く新しく作ったものというよりは、これまでやってきたこと、そして今後やりたいことなどを集約していける枠組みなのかなと。
金澤 拓也(商品開発部):
そうですね。「Tracers」は日興アセットのファンド開発の歴史そのものだと思います。それをいま、見える形にしてシリーズとしてまとめ始めたということです。
投資信託には大きく2つのカテゴリーがありますよね。ひとつは「アクティブファンド」、そしてもうひとつは「パッシブファンド」。パッシブファンドの中には、いわゆる指数に連動させていく「インデックス運用」と、ある決まったルールに基づき、それに逸脱することなく、つまりファンドマネージャーの見通しに基づく判断などを入れずに淡々と運用をしていく「ルールベース運用」*があります。「ルールベース運用」ってかなり業界用語ではありますが、当社はこの運用手法を活用して、これまでも様々な商品を作り世に送り出してきました。
*当社独自の考えに基づく分類であり、一般的な分類とは異なる場合があります。
有賀:
もちろん、まっさらな「インデックスファンド」も当社には数多くあります。しかし、その一方で、「ルールベース運用」って金澤さんが言いましたが、指数や先物などを使って「投信の箱」の中で別なものに仕立て直すような商品開発も行なってきました。それはこれからもやっていくことだと思います。
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
当社のファンドでは、最近では「グローバル3倍3分法ファンド」などがまさにそれですよね。他にも「グローバル5.5倍バランスファンド」も。資産配分について言えば「スマート・ファイブ」や「ファイン・ブレンド」もそうですね。「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)」になると、それこそ15年以上前に設定されたファンドですが、これらはすべて「ルールベース運用」なんですよね。指数に縛られずに仕組みの力を使う「投信ならでは」の考え方は、日興アセットのファンド開発の大きな特徴だと思います。
リスク費用はこちら:
グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)
グローバル3倍3分法ファンド(隔月分配型)
グローバル5.5倍バランスファンド(1年決算型)
スマート・ファイブ(毎月決算型)
スマート・ファイブ(1年決算型)
ファイン・ブレンド(毎月分配型)
ファイン・ブレンド(資産成長型)
財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型
金澤:
商品開発担当として、この「ルールベース運用」の考え方に、今後の商品の拡がりとともに大きな可能性を感じています。「パッシブ型」と聞くと少し物足りないような感じがしたり、もしくはインデックスファンドのことかなと思ったりする方は多いのかなと。でも実はパッシブ型の選択肢って、もっと広くて、もっと柔軟なんです。
有賀:
ルールに基づき、まさに何かを「トレース」していく。そういった投信ならではの商品群をシリーズ化して並べていこうと。今回誕生したシリーズの「Tracers」という名前にはそういう意味合いが込められています。
阿部:
「投信ならでは」という考え方はすごく重要だと思っています。
運用会社として投資家に対して提供できる価値、提供すべき価値とは何か、と考えたときに、あらゆる情報の中から市場の大局を捉え、それを投資判断に活かしていくことだと思います。インデックス投資というのはある指数に連動するように運用していくものです。指数そのものに直接投資することはできないので、投信の形にパッケージして提供するのも運用会社の役割の一つです。一方で、私は創意工夫を加えたアイデアを投資信託の中に落とし込み、提供することに大きな意義を感じています。
金澤:
パッシブ運用でも投信の「箱」を使って様々なものが作れます。「こんなの欲しかった」とか「あったらいいな」、というアイデアをファンドの設計に取り入れて、ルール通りに運用していこうというのがTracersのコンセプトです。
アイデア自体はそれこそ膨大に出すことは可能かもしれませんが、一方でなんでも作ればよいというわけではありません。既存の指数に縛られることなく、当社ならではの独創的なアイデアを形にしていきたいと思います。

有賀:
独自に定めたルールに沿う(トレースする)「ルールベースファンド」だけでなく、指数に連動する(トレースする)「インデックスファンド」、どちらもTracersの候補です。商品ラインナップは厳選しつつも、世の中のニーズに合うような、そして長期の効率的な資産形成ツールとして投資家に選んでもらえるような魅力的なものを揃えていきたいと考えています。
―なぜこのタイミングでシリーズ化?
有賀:
このような運用スタイルものをまとめてシリーズ化したいなというのは、実はずっと頭の中にあったんですけど、一方でそうする必要性が今までなかったのかもしれないですね。これまで金融機関の窓口などでファンドを購入される投資家の方が多かったので、私たちも1つ1つ魅力的な商品をつくり、証券会社や銀行などの販売会社の窓口でお取扱いいただき、それをお客様へご販売いただくということにフォーカスしていました。もちろんこれは今も変わらず大事なことです。
金澤:
そうですね。ただ、いまはまさにパラダイムシフトが起きていて、特に現役世代を中心に投資信託はネットで買うという方が多くなっています。その際、「このブランドの、このアセットクラスを買おう」、といった選び方をされている可能性があります。もし、「このブランドの」というところに投資家の方の第1段階の入り口があるのなら、“ブランド”ではない商品はそもそも相手に届きにくくなっているということです。そう考えると、ある程度似たコンセプトの商品を集めて、1つのブランドとして認知してもらう必要があるだろうというのが問題意識としてありました。
阿部:
Tracersはネット専用で展開していきます。ファンド選びでは「リターン優先」で考えていただきたいと思ってはいるものの、現状ではコストを重視する投資家の方たちがとても多いのも事実です。ネットで取引される方の中にはコストに敏感な方たちもたくさんいらっしゃいます。
有賀:
Tracersはルールに沿った運用なのでコストは相対的に抑えることができます。コスト意識の高い方にも、「Tracersというシリーズには指数も指数以外の商品もラインナップされていて、考え抜かれた面白いファンドを低コストで揃えているシリーズだな」と思っていただけるように育てていきたいと思いますね。
金澤:
今後、このTracersを通じて投資家の方一人一人に合ったものを、投資家の方ご自身に見つけていただくことで、選択肢というか、ファンド選びの可能性を拡げていただく機会を提供できるのではないかと思っています。そういう意味でも、このTracersは、今までにない付加価値を届けることができるのではないかなと考えています。
2022/09/30 作成
2023/05/27 更新
02_まずは2つのファンドから
―「投信ならでは」の仕組みが効いた2つのファンドでスタート
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
第1弾は「Tracers S&P500ゴールドプラス」と「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」。これらはどちらもまさに「投信ならでは」の仕組みを使ってルールに沿って純資産の2倍相当に投資するファンドです。単純なブルベア型や指数レバレッジの商品とは異なり、株式と金、あるいは全世界株式に分散してレバレッジをかけることは、まさに投信を通じないとアクセスできない領域です。
有賀 潤一郎(商品開発部長):
日興アセットの商品開発の特徴がよく現れているファンドかなと思います。
「投信という箱」で先物を上手に活用することで、個人の方では難しいリスクリターンの投資機会を提供していくことを目指しています。長期投資家の効率的な資産形成ツールとしてTracersのスタートにふさわしい2ファンドだと思います。
金澤 拓也(商品開発部):
純資産の2倍に投資をする、いわゆるレバレッジをするのですが、そこに先物を活用しています。先物では現金(証拠金)を差し入れることによって、その元本以上の取引が可能になります。今回の「Tracers S&P500ゴールドプラス」で言うならば、S&P500の部分の一部を株価指数先物にすることによって資金を浮かせます。それを証拠金として金先物に投資します。そうすることでS&P500を純資産総額の100%、そして金にも純資産総額の100%、トータル200%分の投資ができるという仕組みです。うまく先物を使ってお金を浮かせて、それを元手に追加の先物に投資するという発想を実践しています。
阿部:
「つみたてNISA」を使って長期の資産形成をしようという方々が増えていますよね。特に若い世代の方もどんどん始めています。ただ、もっと積立投資をやりたいと思っても資金が潤沢でない可能性もあります。投資資産の2倍、3倍相当のレバレッジをかけて運用することで、たとえば毎月1万円の積立投資をしていても毎月2万円、3万円の積立投資をしていることと同じような投資効果を得ることができる。投信ならではの仕組みで適度な倍率でレバレッジしていくことは、長期の資産形成にも有用だと考えています。
有賀:
ただし、レバレッジするならしっかり分散していることが大事になります。リスクをいっぱい取るからこそ、分散されてなければならないんです。「Tracers S&P500ゴールドプラス」と「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」は両ファンドとも、長く持っていただけるよう分散して2倍化しており、ルールに基づき「トレース」しています。

―S&P500とゴールドの組み合わせ
金澤:
「Tracers S&P500ゴールドプラス」の商品開発では、まず株と金を組み合わせたら面白そうだという案があり、最初はS&P500以外にもいろいろな株価指数が候補に挙がりました。
阿部:
株価指数の部分を何にするかで議論しましたよね。金澤さんも様々な指数でシミュレーションをされていました。
金澤:
そうです、たくさんシミュレーションをしましたね。ただ、実際ファンドとして立ち上げるとなったときに、やはり株式の部分にはある程度知名度があって、名前を見ただけでどんな商品性かすぐに分かってもらえることが大事だということになりました。S&P500は非常に認知度が高いインデックスなので、金と組み合わせることで、たとえば今すでにS&P500を持っている方にも興味を持ってもらえそうだという意見がありました。
今任 英信(投信インフォメーション部):
金の活用も当社ならではの着眼点かなと思います。わたしはS&P500との組み合わせで「金」と聞いたときに、「来たな!」って思ったんです。
当社にはすでに金へ投資するファンドや金を組み入れたバランスファンドがあります。長期投資を続けるための商品設計に金を活用してきたという、当社のこれまでの歴史があったからこそ今回のアイデアが生まれたのかなと思いました。
金澤:
このファンドのリターンの源泉はとてもシンプルで、S&P500のリターンと金先物のリターンの合計になります。S&P500は一部の先物部分を除き現物に投資しますので、為替の影響があります。一方、先物部分は為替変動の影響を受けませんので金のリターンはそのままとなります。
阿部:
S&P500だけで200%にするのではなく金で2倍化。S&P500のリターンを削ぐことなく、プラスで金のリターンも得たいという方に興味を持ってもらえるのではと思っています。また金は現物ではなく先物に投資しているというところは、私はある意味で新しいと思っています。

※市況動向および資金動向などにより、上記のような運用が行なえない場合があります。
金澤:
商品開発にあたり、実際シミュレーションをしてみたら非常にパフォーマンスが良好だった、というところも当然ありますね。相性も良いです。S&P500と金先物の相関もマイナスの相関になっており、何か危機が起きたときにS&P500が下がっても、金がクッションの働きをしてくれる時もあります。

●S&P500:S&P500指数(税引後配当込み、円換算ベース)●金先物:ブルームバーグ金サブ指数(エクセスリターンベース、米ドルベース)●S&P500(100%)+金先物(100%)(シミュレーション):S&P500と金先物を100%:100%の割合で合成し、月次リバランス●S&P500(50%)+金先物(50%)(シミュレーション):S&P500と金先物を50%:50%の割合で合成し、月次リバランス※エクセスリターンとは、先物取引のロールオーバーなどを考慮したものです。 ※金先物は米ドルで決済される先物取引を活用しますが、買建額に対する為替変動の影響がないことから米ドルベースを掲載しています。なお、実際の金先物取引では、評価損益分や外貨建て証拠金については為替変動の影響を受けます。※上記指数は、当ファンドのベンチマークではありません。※信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
※上記は、過去の指数データをもとに算出したシミュレーションの結果であり、将来の運用成果などを約束するものではありません。当ファンドの運用においては、売買コストや信託報酬、運用資産の規模、設定解約に伴なう資金流出入などによる影響が生じます。そのため、当ファンドの運用成果が、上記シミュレーションと同様のリターンを達成することを約束するものではありません。当ファンドの実際のパフォーマンスなどについては、開示資料などをご覧ください。※純資産の200%の運用を行なうことなどから、当該シミュレーション期間中の値動き(リスク)が大きかった点には十分ご留意ください。
●S&P500:S&P500指数(税引後配当込み、円換算ベース)●金先物:ブルームバーグ金サブ指数(エクセスリターンベース、米ドルベース)※エクセスリターンとは、先物取引のロールオーバーなどを考慮したものです。 ※金先物は米ドルで決済される先物取引を活用しますが、買建額に対する為替変動の影響がないことから米ドルベースを掲載しています。なお、実際の金先物取引では、評価損益分や外貨建て証拠金については為替変動の影響を受けます。※上記指数は、当ファンドのベンチマークではありません。※信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
金澤:
また、リターンの向上だけでなく運用効率も上がりました。S&P500も金も過去から長期的にみればリターンはプラスになっていますが、それぞれ単体で持つよりも、両者を100%ずつ併せ持ち、合計で200%に投資するほうがメリットがあるということです。
阿部:
レバレッジするなら分散していることが大前提だと有賀さんが言ってましたが、まさにそれですよね。S&P500にしても組入銘柄数は500などに分散されていますが、資産を超えた分散という考え方はそもそもあるべきで、指数を単体で持っている方にとっても真の分散効果を提供できそうです。
今任:
資金効率アップの手法としては、S&P500とかNASDAQなどの指数を2倍にするといったファンドもありますが、投資家にとって長期投資であればあるほど「リターンの源泉」と「リスクの要因」をしっかりと分散した上で2倍化(レバレッジ)していこう、という当社ならではの考え方を実践しているのがこのファンドですね。
金澤:
同じ指数をレバレッジしているのか、または分散効果がある金と株式を組み合わせているのかというところですが、当ファンドと各指数を2倍にレバレッジした場合のシミュレーションをしたところ、特に当ファンドでは最大ドローダウンが非常に抑えられていることが分かりました。また運用効率(リターン/リスク)も優れていました。ですので、より投資家に長く持っていただきやすい仕組みになっているのかなと考えています。

●当ファンドのシミュレーション:S&P500 (税引後配当込み、円換算ベース)と金先物ブルームバーグ金サブ指数(エクセスリターンベース、米ドルベース)を100%:100%の割合で合成し、月次リバランス●S&P500 2倍レバレッジシミュレーション:UBSマーケット・ベータ・米国株式インデックス・エクセスリターン(米ドルベース) の月次リターンを2倍化し、円キャッシュ(円1ヵ月LIBOR)の運用収益を加味●NASDAQ100 2倍レバレッジシミュレーション:UBSマーケットベータ・米国グロース株式インデックス・エクセスリターン (米ドルベース)の月次リターンを2倍化し、円キャッシュ(円1ヵ月LIBOR)の運用収益を加味※エクセスリターンとは、先物取引のロールオーバーなどを考慮したものです。 ※リターンは月次リターンの平均、リスクは月次リターンの標準偏差を、それぞれ年率換算。※上記指数は、当ファンドのベンチマークではありません。※信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
※上記は、過去の指数データをもとに算出したシミュレーションの結果であり、将来の運用成果などを約束するものではありません。当ファンドの運用においては、売買コストや信託報酬、運用資産の規模、設定解約に伴なう資金流出入などによる影響が生じます。そのため、当ファンドの運用成果が、上記シミュレーションと同様のリターンを達成することを約束するものではありません。当ファンドの実際のパフォーマンスなどについては、開示資料などをご覧ください。 ●純資産の200%の運用を行なうことなどから、当該シミュレーション期間中の値動き(リスク)が大きかった点には十分ご留意ください。
阿部:
ただし、金と分散しているとはいえやはり「投資金額を2倍化」している分、値動きは大きくなる可能性もあります。そういった意味でも、長期投資の時間とリスクを取る覚悟はあるけれど、毎月積立にまわすお金は多くできないといった方などに、少額からの長期的な資産形成ツールとして活用いただけるのではと考えています。
今任:
投資家の方の中にはマーケットの変動に対して大きなリスクを取りたくない方もいらっしゃると思います。またレバレッジすることにも抵抗感がある方もいらっしゃると思います。「有事の金」はそのような方々の“心の用心棒”になれるかもしれないと、わたしは思います。また、なかなか投資の第一歩を踏み出せなくてどうしようかと考えている方にも、よく知る「S&P500」と有事の「金」の組み合わせの分かりやすさが、投資を始めるきっかけとなれたら嬉しいです。
阿部:
足元のようにインフレが常態化しつつある中で、金を投資対象に入れるという選択はこれまで以上に必要というか、かなりニーズは出てくると思います。ですから、このファンドは本当に“ゴールデンコンビ”なのではないかな、とそう思っています。
Tracers S&P500ゴールドプラス
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―地球上の株式に徹底分散*し 2倍にして投資
*市場規模や流動性、取引規制などの投資環境を考慮し、当社が投資可能と判断した世界各国の株式へ分散して投資を行ないますが、現時点ではカバーできない国・地域も存在します。
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」は2021年12月に設定したファンドですが、今回、名称変更してTracersシリーズとなりました。
有賀 潤一郎(商品開発部長):
このファンドは、正式名称にもカッコ書きしているように新興国株式を含む世界の株式を投資対象として、地球全部、隅々のところまで徹底的に分散して、それを2倍のエクスポージャー(投資している状態)にしていくという発想のファンドです。決めたルール通りにまさに「トレース」するということで、Tracersシリーズに加えることになりました。

※市況動向および資金動向などにより、上記のような運用が行なえない場合があります。
奥村 崇(資産運用サポート部):
単一指数連動の2倍ではない、という点がユニークなポイントになりますよね。
有賀:
「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、MSCI ACWI指数)」の2倍レバレッジのイメージに近いですが、全体が200%の投資比率になる中で、1つの国への投資上限を100%*というルールを定めており、米国株式への投資比率は全体の半分までに抑えます。
*純資産総額比
阿部:
現在、世界の株式時価総額の約50~60%は米国が占めていますので、インデックスベースで考えるとどうしても米国への投資比重が高くなりがちな投資家の方も多いのではと思います。このファンドでは強い企業が集まる米国はしっかりと100%分押さえた上で、それ以外の国の企業にも、もう100%分投資するかたちを持つことになりますね。シンプルに世界の株式のリターンを追求したいという方にも興味を持ってもらえるのではと思っています。
有賀:
S&P500などの主要指数先物はもちろん、ETFも駆使して時価総額ベースで世界の株式市場の大半*を、いわゆる「MSCI ACWI指数」よりも広範にカバーするルールをつくり、それをトレースしていきます。指数を2倍にするという考え方もありますが、このファンドではリスクテイクの水準を高くするにしても、できるだけ分散したかたちで2倍にしたいと考えました。投資対象としては株式のみですが、とにかく広く世界中の株式に分散することを目指しています。
*市場規模などを考慮して世界各国の株式市場に分散して投資を行なうことで、時価総額ベースで世界の大半をカバーした運用。


上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
阿部:
投資対象がインデックスの先物やETFなので実はファンドの中で発生しているコストも抑えられていますよね。コスト意識の高い方や世界株式に興味のある方にも注目してもらえるのではないかな、と思っています。
有賀:
そうですね。このファンドで使う先物やETFは非常に流動性の高いものばかりで、またコストの点でも、売買取引の点でも非常に効率的な運用ができる商品設計になっています。
実はSNSなどで、「MSCI ACWI指数」なのか「グローバル2倍株(地球コンプリート)」なのか、といった議論をしてくださっている方もいらっしゃって、非常に嬉しいです。当ファンドは新興国も含めた世界中の株式が投資対象です。現時点では流動性などの関係からカバーできないエリアも、将来的にはカバーして「コンプリート(完成)」させることを目指しています。
奥村:
現状、先物やETFを通じて約8,000銘柄に投資していますが(2022年7月末時点)、今後も投資する国・地域・銘柄の数は増加していくと。このファンドのユニークさはそこにもありますよね。


上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
有賀:
地球全体を塗りつぶしていく(極力広く国・地域に投資する)という発想です。今後、純資産残高の増加に応じて異なる先物やETFなどにも投資を行なうことで、投資する国・地域・銘柄の数は増加する見込みです。ファンドの成長とともに地球上の株式を徹底分散して「コンプリート(完成)」させていきながら「地球2つ分*」の投資をしていきます。
*株価指数先物取引の活用によって、純資産総額の2倍相当額を世界各国の株式に分散して投資を行なうこと。
阿部:
2倍でレバレッジをかけているので、為替リスクも2倍になるの、というご質問をいただくことがあります。このファンドは株式指数先物を活用していることがポイントです。実質的に為替変動の影響を受けるのは、主に新興国株式部分です。先進国部分については、先物取引の証拠金や評価損益部分にのみ為替リスクが発生しますが、それ以外は発生しません。


※先進国の株価指数先物取引においては、買建額に対する為替変動の影響がないものを中心に投資対象とするため、為替変動の影響を受けるのは、主に評価損益分と外貨建証拠金となります。また、米ドル建て資産の部分(ETFや証拠金など)と、新興国の株価指数先物取引における実質的な米ドル売り(新興国通貨買い)の部分が相殺されることによって、実質的に米ドルについての為替ヘッジを行なった場合と同等の効果が期待されます。
奥村:
確かに投資家の中には、世界株式のリターンを得たいけれど、一方で必ずしも為替リスクを取りたいわけではない方もいらっしゃると思います。普通の海外株式インデックスですと100%の為替リスクを持つことが多いので、その点も当ファンドのユニークさですね。
阿部:
「グローバル2倍株(地球コンプリート)」は、例えば1万円投資すると、米国に1万円と米国以外にも1万円分を投資していることになります。もちろんリスクはその分大きくなる可能性がありますが、だからこそ長期の資産形成ツールとして、少額からでも、長い時間軸とともに活用していただきたいファンドです。
Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)
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~ 商品開発者が語る設計思想 ~
2022/09/30 作成
03_投資家に広く知られる「ブランド」を目指して
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
わたしが社会人になりたての頃、日本の個人金融資産はだいたい1,500兆円くらいだと言われていました。そのうち1,800兆円になって、最近発表された最新統計では2,000兆円を超えています*。しかしその中で投信の保有割合ってまだ5%にも満たないんですよね。運用会社として、そこを拡大していきたいという強い想いがまずあります。
*2022年6月末時点
奥村 崇(資産運用サポート部):
つみたてNISAが普及してきたこともあり、一般の方が資産運用にアクセスしやすくなってきたのは非常に良い流れですよね。
今任 英信(投信インフォメーション部):
同世代のいわゆるミレニアル世代同士で会話していると、こういう仕事をしてるのでやはり資産運用の相談みたいな話になります。確かに「つみたてNISAはもうやっているよ」という友人が多いです。その上で、プラスアルファでやるとしたら何がいいのかと聞かれることも多くなりました。その時にいつも思っていたのが、私自身のおススメのファンドはあるけれど、それがそれぞれの人に合ったぴったりフィットしたものなのかな、ということでした。
金澤 拓也(商品開発部):
年代とか、投資家のその資産構成とかによって、どのようなリスクを取るのがいいのかは、本当は全然違っていますしね。例えば毎月少額の積み立てしかできない若年層の方がいたとして、でも時間は十分ある。そういう方には少しリスクを高めて2倍にしておくとか、例えば金(ゴールド)も追加で持っておくとか、いろいろな選択肢があると思います。
阿部:
インデックスファンドももちろんひとつの正解だと思います。ただ別解を持っておく必要もある。正解と別解を持つことで選択肢が拡がります。別解のひとつとしてTracersを育てていきたいですね。インデックス投資家にとっての次の選択肢であり、あるいはこれから投信にエントリーする方にとっても最適なソリューションを提供しているシリーズファンドとして認知してもらえるようになりたいと思っています。
有賀 潤一郎(商品開発部長):
Tracersはシンプルにしっかりと設計されたものをコストを抑えながらルールベースで“トレース”していこうとするファンドシリーズです。インデックス投資も視野に入れ、いろんな選択肢があるということをTracersを通じて訴求していければいいのではと思います。
金澤:
今後の商品開発としても、それこそTracersのアイデアは無限大、という話がありましたけど、まさにいろいろな選択肢がある中で、次に何をするかということが一番難しいところではありますね。何と何をどの割合で組み合わせるかとか、バックテストではこれが良かったということだけでは決めきれません。現役世代の方だったらこの割合の方がいいよね、とか様々な考え方があります。投資家のニーズなども取り入れ、その中で最適解を見つけていく過程は大変ですが、非常にやりがいもあります。
有賀:
つみたてNISAの口座で投信を買われてる方が非常に増えているので、そういう方にとってはつみたてNISA以外の商品は選ばれにくいのかもしれない。もうド直球で●●インデックスファンドのようなものもTracersで出していくっていう選択肢もあるでしょうし、そこはまた議論していきたいなと思っています。
今任:
議論といえば、Tracersブランドとしてのロゴやデザインのところ、すごく盛り上がりましたよね。最終的に「ルールに沿う=なぞる」というイメージで羽ペンのイラストをあしらったネイビー色のデザインに落ち着きましたが、社内のみなさんすごく熱いものをお持ちで。どこに集約させるか、価値判断は非常に難しかったです。
奥村:
ロビー活動してましたよね、今任さん。このデザインでどうですか?って社員の一人一人に。
今任:
はい。いろいろと活動しました。笑
有賀:
ネット専用・ノーロード・低コストのファンドシリーズって他社もいろいろ提供していますから、その中でTracersを広めていこうというのはなかなか簡単な話ではないけれど、でも目標は大きく持ちたい。Tracersをインターネットを利用している日本中の人が知っている、というところになるまで頑張らないと、と思っています。Tracersはそうなれるくらいの大きな可能性があると信じています。皆で悩み倒したTracersのロゴが、日本中の皆が知ってるくらいになれるといいよね。
今任:
誰もが知っているファンドのシリーズブランドになる、そんな未来ですよね。Tracersシリーズで今後、様々なラインアップがそろってくると思います。今度また友人から相談を受けたときに面白いファンドシリーズがあるよと紹介しようと思っていて、その時を楽しみにしています。
金澤:
Tracersのキャッチフレーズにもありますけれども、やっぱり「こんなのほしかった」ですかね。あったらいいなというワクワク感があるものをぜひ、投信業界に投げ込んでいきたいなと。Tracersで大きな変化を起こしていきたいと思っています。
2023/02/16 作成
04_シリーズ初のインデックスファンド

―目新しさと納得感のある
投資家にとっても分かりやすい指数に注目
金澤 拓也(商品開発部):
Tracersシリーズ初のインデックスファンドなので、S&P500指数などのような代表的な指数とは違う、長期的なパフォーマンスが期待できるエッジが効いた指数がよいと皆で考えていました。そう社内で相談しているときに、お客さまの声を聴く機会も多い阿部さんたちから、「S&P500配当貴族指数はどうか?」という話がありましたよね。
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
そうですね。「高配当株式を使ってFIRE(経済的自立と早期退職を目標にする造語)する」というのが、少し前に話題になったので、「配当を切り口に考えるのは良いのでは?」という話になりました。ただ、単純に高配当だけに焦点を当てると、世にあるファンドとの違いを感じてもらえないとの意見がありました。そんな時、名称自体も面白いこの指数が候補に挙がったんです。
川名 翼(投信インフォメーション部):
名称は確かに面白いですよね。この指数自体、2005年5月(税引後配当込、米ドルベースは2014年5月)に算出が始まったのですが、当時もインパクトのある名前だなという印象を持ちました。
でも、それだけじゃなくて、指数の作られ方がS&P500指数とは違うという点は見逃せないポイントですよね。
阿部:
そうそう。算出開始当時も、目新しいだけじゃなくて、理にかなった指数だなって思ったのを覚えています。お馴染みのS&P500指数から銘柄は抽出されているのですが、「連続増配」に注目して、「均等配分で投資」するというのは、ユニークだなと。
金澤:
「25年以上連続増配」の企業で固めるというのは、米国市場だからこそできる手法だなと思います。他国でも連続増配企業は存在しますが、25年以上増配を続ける企業の数は米国ほど多くはないでしょうね。この指数は、時価総額や流動性にも基準を設けていますが、銘柄の時価総額は、平均で約907億米ドル(約11.8兆円。2022年12月末時点)もあります。流動性も十分にあるので、「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」は、インデックスファンドの新たな選択肢になると思います。


※S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社など信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
※25年以上連続で増配している企業の数が一定数を下回った場合には、連続増配年数が25年に満たない企業の株式も構成銘柄に追加される場合があります。
―連続増配企業は株主還元に前向き
投資家と同じ目線で経営される企業
川名:
高配当を聞いたことがある人はいても、連続増配ってそれほど馴染みがないかもしれませんね。S&P500配当貴族指数自体も、S&P500指数に比べると配当利回りが高いので、「高配当に注目した指数」と誤解する方がいるかもしれません。
金澤:
高配当が「その時の配当の水準」に注目しているのに対して、配当貴族は「増配の継続性・安定性」に注目しているというのが違いとして表現できますね。極端な例ですが、業績が低迷して株価が低空飛行を続けていても配当が高ければ高配当銘柄にはなり得ます。一方、連続増配は、そもそもの業績が継続して良くないとできないですよね。
阿部:
25年以上連続増配って、四半世紀前から配当を増やし続けていることですからね。簡単なことじゃないですよね。今(2023年)から数えると1998年よりも前ってことですから、ITバブルやリーマン・ショックなんかも乗り越えて増配を続けてきたわけです。その間、ずっと利益を成長させて、株主還元を続けてきたという企業姿勢はすごいと思います。
川名:
株主を向いた経営をしている企業が多いというのは、もともと米国企業に多い印象ですよね。
阿部:
そうそう。米国企業のCEOにとっては、株価を上げることが至上命題で、そのために新しい商品やサービスを作るっていう意識を持つ方が多いみたいですね。そして、それが配当や株価の上昇という形で、株主還元につながっている。「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」への投資は、「自分たち(投資家)のために頑張ってくれている企業を応援する」っていう気持ちの表明と言い換えることもできると思います。
―市場悪化時に下げに強い傾向の背景に生活必需品中心の偏りの少ない業種配分
川名:
S&P500指数を市場全体だと捉えると、S&P500配当貴族指数は、市場全体が下がる局面で踏ん張るディフェンシブな動きをしてきましたよね。長期的には配当利回りの高さなど、リターンの向上につながってくるというイメージはしやすいと思いますが、それ以上に下げ局面での強さにはインパクトがありますよね。

S&P500配当貴族指数とS&P500指数の年間騰落率

※両指数の価格特性の比較を目的とするため、米ドルベースの年次騰落率を使用
期間:2000年~2022年●S&P500配当貴族指数(税引後配当込み、米ドルベース)の算出開始日は2014年5月1日です。なお、算出開始日前のデータは、算出開始日における算出要領に基づき当該指数の開発元が試算した値であり、指数の実際のパフォーマンスではありません。●「S&P500配当貴族指数(税引後配当込み、米ドルベース)」はあくまで参考情報であり、当ファンドのベンチマークではありません。また、S&P500指数は参考として掲載したものであり、当ファンドのベンチマークではありません。●信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成●上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
阿部:
まず、時価総額加重平均で計算されるS&P500指数は、時価総額の大きな銘柄の動きに引っ張られやすいというのは強調しておきたい点ですね。だから、このグラフでも、それまで市場をリードしていたIT(情報技術)系の企業の落ち込みが大きかった、2000年初期のITバブルや2022年はS&P500指数は下落してしまった。
金澤:
確かに、構成銘柄の違いが大きく影響していますよね。業種を見てみると、値動きが大きくなりやすい情報技術が多いS&P500指数に対して、S&P500配当貴族指数は生活必需品が多い。相対的に業種の偏りが小さいのもS&P500配当貴族指数の特徴で、これがパフォーマンスにも現れているのでしょうね。

【ご参考】S&P500指数(左)とS&P500配当貴族指数(右)の業種別構成比

2022年12月末現在
※上記の業種は、世界産業分類基準(GICS)のセクター分類で表示しています。※四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。※信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
川名:
市場全体の株価が上がっているところでは、同じ程度にS&P500配当貴族指数も上がっているというのは驚きです。
金澤:
業種の違いだけでなく、個別銘柄の配当利回りや財務健全性、均等配分という持ち方など、さまざまな要因が絡み合った結果じゃないかなと思います。景気が悪くなっても生活必需品の需要は極端に落ちないというのはありますが、景気が良くなる時はそういった企業の製品・サービスの需要も増えるというのはあるのでしょうね。
―もっと知ってほしい
いろいろな人に使ってほしい
阿部:
「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」の運用をスタートしてSNSでも結構話題になった時、すごく良いものができたなって思いました。それでも、まだまだ知られていないなって感じています。
金澤:
S&P500指数という圧倒的な強者がいるので、それ以外は知らないという人も結構多いですよね。名前は伏せますが、金融業界でも「配当貴族」というのは、「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」のために日興アセットが作った言葉だって思った人がいたみたいです(笑)。
川名:
指数の名称だけではなくて、ファンドの名前の後ろに「(米国株式)」ってわざわざ書いたのも、少しでも分かりやすくしたいっていう思いからでしたよね。同じ米国株式であってもS&P500指数などとは違う特性があるというのは大切なポイント。銘柄特性の分散を図るという考え方に基づいて、併せ持ちなども検討できそうですよ。
阿部:
先日、日興アセットが出展した個人投資家向けセミナーでアンケートを取ったのですが、回答してくださった100名強のうち半分程度が、「S&P500配当貴族指数を知っていた」との回答だったことに驚きました。10年前なら「S&P500指数を知らない」という人も多かったと思うので、資産運用がますます身近になってくると「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」ももっと知られてくると感じましたね。
金澤:
Tracersシリーズは、パッシブファンドということで、運用自体はすごくシンプルです。それに加えて、インターネット経由での情報提供や売買を前提に、できるだけ人を介さない設計にすることで、信託報酬率も低く抑えています。S&P500配当貴族指数に連動するファンドに低コストで投資できる点には大きな価値があると思います。
川名:
「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」は、魅力的な米国株式を厳選しながらも長期的に投資をしたいという投資家の皆さまにとっての「こんなの欲しかった!」を実現したものだと思うので、これからもいろいろな形で情報発信をして、もっと知ってもらいたいなと思います。
Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)
ファンドの詳細はこちら / リスク・費用はこちら
2023/03/02 作成
05_リスクに注目したバランスファンド

―Tracers初のつみたてNISA適格
分かりやすさと納得感を大切にしたバランスファンド
岡 大輔(投信インフォメーション部):
Tracersシリーズ初のバランスファンド「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」が、2023年2月10日に設定されましたね。
奥村 崇(資産運用サポート部):
本当に「ついに」って感じ。最近よく聞く「株式ファンド100%で長期積立が万能」のような論調に疑問を持ったことが開発のきっかけで、それに一石を投じる意味のあるファンドだから感慨深いです。
有賀 潤一郎(商品開発部):
そうなんだよね。例えば、年齢を重ねてそんなに投資期間を取れないというシニア層や、すでにある程度まとまったお金があるミドル層の方にとっては、違った考え方をベースにしたファンドが必要とされているんじゃないかっていうのが始まりだった。
岡:
日興アセットでは、投信初心者の方を対象としたオンラインセミナー「オトナの七・五・三」を開催してきましたが、そこでもまとまったお金の置き場所に悩んでいるという参加者の方は少なくなかったそうです。
奥村:
「じゃあ、どんなファンド?」ってなり、そこからは頭を悩ませましたよね。バランスファンドが候補になったんですけど、世の中にバランスファンドって、すでに1,000本以上*1あるんですよね。そんな時、ネット証券の方から聞いた、「極端にリスクが低いものよりも、もう少しリスクを取って、でもリターンも期待できるというものは意外と少ない」という話は、「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」で目指す商品性を考えるうえで参考になりました。
*1 契約型公募投資信託における資産複合の本数は1,286本(2023年1月末時点)
出所:一般社団法人投資信託協会
岡:
確かに、「ある程度のリスクは許容するから、リターンも期待したい」という方は意外と多い気がしますね。それにしても運用の考え方自体がユニークなファンドですよね。特に「リスク・パリティ」を取り入れているという部分。「いくつかの資産を分けて持ちましょう」というのは、よく言われることですが、そのときの配分の仕方を「リスクの大きさに合わせる」というあたり。
有賀:
そうなんだよね。それぞれの資産が「ファンドにもたらすリスクの大きさが等しくなること」を目指すのが「リスク・パリティ」なんだけど、要は一つの資産の影響を極端に受けないようにするための考え方。株式やREITのリスクって債券よりも大きいものだから、その分だけ少なく持ちましょうっていうこと。「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」は、「株式20.0%、REIT13.3%、債券66.7%」を基本資産配分として、これを維持する運用をするんだよね。*2
*2 リスク・パリティを概ね実現するために、各資産の価格変動リスクおよび為替変動リスクについて、ファンド設定時点における過去長期間のデータを基に、日興アセットマネジメントが独自に各資産の組入比率を決定しました。なお、設定後の各資産の価格変動リスクおよび為替変動リスクの変化に応じた基本資産配分比率の変更は、原則として行ないません。


奥村:
投資家の皆さまから支持されている「つみたてNISA」の対象ファンドとなることも、ファンドを開発するときに絶対押さえたいポイントでした。「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」が、インデックスファンドを通じて株式・REIT・債券に投資しているのもそういう理由ですよね。
岡:
リスクに焦点を当てて決めた配分を、インデックスファンドで実現するっていうのは、かなりシンプルだし納得感がある気がします。インデックスファンドの組み合わせだから、低コストに仕上がっていますし。
奥村:
株式・REIT・債券って、代表的な資産で馴染みもあるものだと思うんですけど、もっと他の資産も入れるっていう考えはあったりするんですかね?あと、値動きもその時々で違うので配分を固定しちゃっていいのかなとか。
有賀:
確かにいろいろな資産を入れるっていうのも選択肢としてはあるよね。でも、「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」で目指したかったのは、つみたてNISAの要件を満たす最も広い分散投資だったから3資産にしたんだ。値動きの大きさは、今日・今週・今月っていう短い時間軸だと確かに全然変わってくるけど、長期だとある程度の水準で落ち着いてくるんだよね。長い目で見ると株式・REITは債券に比べてリスクが大きいし、株式・REITは債券とは違う動きをする傾向があることからも、この3つの相性はいいよね。
岡:
忘れたらいけないのは、株式・REIT・債券の比率は維持するけど、その中身の地域ごとの配分は、市場規模に応じて決めているっていうところ。時代の変化にも対応できるような配慮が感じられますよね。
―3つの資産だけどリスク要因は4つ?
リスクを考慮した考え抜かれたバランス
奥村:
シンプルなんだけど、この「リスク・パリティ」って考え方は奥が深いですよね。
有賀:
そうなんだよね。リスクを抑えようとするときに資産を分散するっていうのは基本で、株式や債券とか、国・地域って視点で分散を語られることは多いけど、「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」では、為替のリスクも意識しているというのもポイント。
岡:
この部分の表現は、本当に難しかったです。口頭だとなんとなく伝えられるんですけど、イメージ図を描くのに苦労しました。株式とREITの海外資産部分では為替リスクを取っているけど、債券では為替リスクを取らないっていうあたりとか。3つの資産に投資しているけど、為替も含めた4つのリスクの大きさを概ね均等にするとか。


※上記は「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」についてのご理解を深めていただくためのイメージであり、実際のリスク・リターンなどの運用成果を保証するものではありません。
有賀:
ここはしっかり伝えたかったところだったけど、本当に岡さんが試行錯誤してくれた。なぜ為替にこだわったかと言うと、為替リスクって案外見過ごされがちだからなんだよね。たとえば、世界全体に分散投資しようとした結果、外貨建ての比率が多くなり過ぎるみたいな。
奥村:
確かに。資産は分散したはずなのに、実はすごく為替リスクを取っていたみたいな。株式やREITといった資産クラスのリスクには目がいきやすいですが、去年のように為替が大きく動かない限りは為替リスクって陰に隠れてしまいがち。株式・REIT・債券だけじゃなくて、日本人がきちんと意識すべき4つ目のリスクとして、為替も正面から捉えたのが「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」ってことですね。
岡:
この図を初めて見た人は、株式とREITの一部には為替リスクがあるのに、債券にはないことを不思議に思うかもしれませんが、その背景にはこういった意図があるんですよね。株式・REIT・債券と為替のリスクが、パリティ(等価・同等)になるところを計算しに行った結果、資産毎の為替ヘッジの有無も決まっている。
有賀:
そうそう。それに、去年、株式と債券が同時に下落したといった話があったように、普段は逆に動きやすいものでも状況によっては同じ方向に動くことはあるんだよね。だから、資産を分散っていうよりも、為替も含めた「リスクの要因を分散する」っていう考え方は、改めて大切にしないといけない。
奥村:
この考え方は、ファンドのビジュアルにも表れていますよね。4つのリスクなんだから天秤は4皿でしょとか、3資産なんだから3皿でしょとか、どっちも正解だから社内でもパシッとは決まらなかった(笑)。
岡:
最終的には、4皿の天秤で1つだけ違う色にするというデザイン。リスクの大きさに注目した「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」らしい、色合いも含めてすごく落ち着いた仕上がりになりましたよね。すごく苦労しましたけど(笑)。

―「おとな」の投資家にも活用しやすい
いろいろな使い方を試していただきたい
岡:
Tracersシリーズ全般で言えることですけど、今回は特に、目論見書での表現の仕方にかなり頭を悩ませましたね。そもそも「おとな」っていう部分とか。
奥村:
投信って誰でも買えるものなので、「このファンドはこういう人にふさわしい」みたいなことは言いづらいんですが、今回は、「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」を「どういったスタンスで持っていただきたいか?」っていうところにこだわりましたよね。
岡:
さっき有賀さんが言ってくれたところが伝えたいところだったので、目論見書では、「まとまったお金」の振り向け先や「期間が限られた積立投資」っていう使い方を例として挙げました。
「おとなのバランス」とは?
リスクを相対的に低く抑えることを志向する当ファンドは、一般的な株式ファンドなどに比べて、ゆったりと落ち着いた(“おとな”の)スタンスで保有していただけるファンドとなることをめざしています。
それは、預貯金でコツコツと築いた「まとまったお金」を資産運用に振り向けたい、「期間が限られた積立投資」を行ないたいといった、いわゆる「おとな」の投資家にも活用しやすいバランス、「おとなのバランス」であると考えています。
※ファンド設定後は原則、基本資産配分比率を固定します。
有賀:
つみたてNISA適格のファンドだけど、積立投資しかダメってわけじゃないからね。積立投資の時よりも大きな金額を一度に投資したいって思った時とかの選択肢になってくるとうれしいよね。まとまったお金で買うから、おとな買いって感じ?
奥村:
おとな買いって、意味ちがいますよ(笑)。でも、このファンドは積立でも一括でも、どっちでも使えるってことは、これからお伝えしていきたいです。
岡:
たくさんの人に知ってもらいたいし、利用してほしいですよね。株式100%のファンドに投資をするのがすべての人にとっての正解では必ずしもないと思うので、バランスファンドを見直してもらうきっかけになればなと。「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」は、それだけ懐の深いおとなのようなファンドだと思います。
Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)
ファンドの詳細はこちら / リスク・費用はこちら
2023/04/26 作成
06_王道のインデックスファンド

―世界の株式に広く投資できる
王道のインデックスファンド
加集 勇夫(マーケティング部):
2023年4月26日に運用を開始するのが、シリーズ第5弾となるTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)。これまでのTracersシリーズは、ポートフォリオのすき間を埋めるようなファンドが多かった印象でしたが、今回は違いますね。
阿部 慎太郎(資産運用サポート部):
まさに「王道」とも言えるインデックスファンドの登場といった感じ。ベンチマークである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)*」は、個人投資家の間でも結構知られた指数なので、興味をもっていただけると思います。
*公表指数をもとに日興アセットマネジメントが円換算します。連動をめざす対象指数(ベンチマーク)については、当ファンドの商品性および運用上の効率性などを勘案して、委託会社の判断により変更する場合があります。
金澤 拓也(商品開発部):
「全世界株式」というだけあって、先進国と新興国あわせて47ヵ国、約2,800銘柄でこの指数は構成されています(2023年1月末現在)。「幅広く網を張っている」というのが印象で、「世界の主要企業の株式に幅広く投資したい」という人にとっては、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は、よい選択肢になるでしょうね。

(ご参考)MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの国・地域別構成比率
(2023年1月末現在)
※上記は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスのものです。
※四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
加集:
「世界に網を張る」と言いつつ、「約60%が米国」というのは、正直、偏りがあるようにも感じました。世界経済を引っ張っているとは言え、構成比率で見たときの米国の割合が高いという点に違和感を覚える方もいるかもしれないですが、どう考えるとよいと思いますか?
金澤:
まずは、この比率がずっと続くわけではないというのは押さえておきたい点ですよね。ここ数年の米国企業の存在感にはすごいものがありました。ただ、1970-80年代の日本や、2000年代初頭のBRICs*をはじめとした新興国の勢いも見過ごすことはできません。
*2000年代以降に著しい経済発展を遂げたブラジル、ロシア、インド、中国(、南アフリカ)を総称する造語。
阿部:
アベノミクスで日本株が注目されたり、最近だとインドが再び話題になったりというのもありますよね。時代が変化すると、新たに存在感を増す企業も出てくるでしょうし、その可能性は誰にも否定できないと思います。資産運用は「今」のためではなく「将来」のためにするものだということを踏まえると、株式市場の変化にあわせて構成銘柄が変わる仕組みを備えているというのは、この指数のよいところだと思います。
金澤:
国や地域ではなく、企業から考えてみるのも重要ですね。この指数が対象にする「各国に上場する時価総額上位85%の企業」ともなると、世界的に有名な企業も多くなってきます。そして、そうした有名企業を集めたら、結果として今は米国に本社を置く企業が多かっただけという見方もできますね。
阿部:
確かに、「世界の主要企業の株式に幅広く投資したい」という人にとっては、企業の国籍はそこまで重要ではないのかもしれません。あくまでも、「全世界の株式市場の動きを捉える」ということが大切であって、それを捉え続けられる仕組みがあるのが、この指数ということですね。
―「こんなの欲しかった」がコンセプトだから
シンプルに低コスト
加集:
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の誕生にあたって切っても切り離せないのは、コスト負担の軽さの部分だと思います。購入時や換金時の手数料がゼロというだけでなく、保有期間中にかかる費用の代表的な部分となる運用管理費用(信託報酬)が年率0.05775%(税抜0.0525%)というのは、様々なところで話題を呼びそうですよね。
阿部:
Tracersシリーズは、これまでは“ありそうでなかった”投資アイデアに基づいたファンドが多かったですが、ポートフォリオを作り上げるうえでは、やはり資産を育てていく際のコアとなるようなシンプルなインデックスファンドも外せない。さらに、Tracersのコンセプトである「こんなの欲しかった」と思ってもらうポイントはどこだろうと考えた結論が、「コストにこだわる」というところでした。
金澤:
インデックスファンドは運用での差が出づらいので、コストにすごく敏感な方が多いというのが実態だと思います。しかし、低コストの投資信託はすでに多く存在しているので、「Tracersシリーズでやるならこうした方がいい」となったんですよね。
阿部:
「この水準は、日興アセットだけでは実現できなかった」というのは、強調しておきたいですね。信託報酬は、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の提供に関わる委託会社・販売会社・受託会社の3社一律で0.0175%(税抜き・年率)の配分になっており、通常最も低率の受託会社の料率に3社が合わせるという水準です。
加集:
そもそも「パッシブ運用はコストが低い」というイメージがありますが、日興アセットとしては、インターネット経由前提での商品設計にしたり、すでにあったマザーファンドを活用するなどして、コスト低減の余地を模索してきました。ここまで思い切った決断に至る理由は何だったのでしょうか?
阿部:
新しいNISA(少額投資非課税制度)の存在は大きかったと思います。国を挙げて、個人の資産運用を強力にバックアップする方針が示されたので、これから投資にチャレンジしようという方もさらに増えてくると思います。そうしたときに、コスト面でのハードルを下げるというのは、投資信託を提供する側ができることの一つだと言えます。
加集:
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は、つみたてNISAの対象商品にもなっているので、現NISAも含めて活用していただきたいですよね。4月に運用を開始するということで、新生活をきっかけに資産運用を始めるといった方にとっての「はじめの一歩」を後押しできそうな気もします。
金澤:
新しいNISAが恒久化されると、現NISAのような「制度上の投資期間(一般NISA:5年、つみたてNISA:20年)」がなくなることになります。そうすると、投資期間もより長くなってくる可能性があるので、インデックスファンドにおけるコストの水準には、より注目が集まり易くなってくるかもしれませんね。
―どう活用するのが正解なのか
これだけ?それとも組み合わせ?
加集:
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)が、長期的な資産運用をする中でのコアの役割を担えるポテンシャルを秘めていることがより理解できてきました。では、実際にどういった持ち方というのが考えられると思いますか?
金澤:
「これだけ」という考え方もあってよいと思います。資産運用のことを考えるのにそこまで時間を掛けられない、でも長期的なリターンを取りにいきたいという方には、まずはこのファンドを試してもらうという意味で。ただ、はじめた後に足りないと思う資産を追加していくという気持ちも必要かなと思います。
阿部:
追加していくときも、債券やREIT(リート)といった異なる資産クラスに縛られる必要はないと思います。例えば、新興国に注目しているなら新興国株を買ってみるのもよいでしょうし、米国の成長を強く信じるなら米国株との併せ持ちというのも選択肢になるでしょうね。
加集:
バランスファンドからレバレッジが効いたものまであるので、すでにあるTracersシリーズのファンドとの組み合わせというのも、十分に検討できそうな気がします。Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の登場で、賢く分散できるパーツがまた増えたなという印象ですね。
金澤:
新ファンドということで、当初の純資産総額の少なさを警戒される方もいらっしゃるかもしれませんが、すでにあるマザーファンドを活用するので、運用規模の小ささを不安視する必要はないかなと思います。
加集:
ベンチマークである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)」に連動することを目指す運用なので、値動きの特徴なども過去の指数の動きが参考になります。パッシブ運用の良さは、こういうところにもあると感じますね。

(ご参考)MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの推移
(1999年12月末~2023年1月末)
※当指数は、公表指数をもとに日興アセットマネジメントが円換算したものです。 ※ベンチマーク「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)」はあくまで参考情報であり、当ファンドの運用実績ではありません。 ※信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成 ※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
阿部:
パッシブ運用ならではの分かりやすさと低コストを兼ね備えつつ、世界の主要企業の株式に幅広く投資できるのが、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)。世界に目を向けて、株式投資をしていきたいと考える多くの投資家にとって、このファンドは新しい選択肢になると思います。
金澤:
ますます資産運用の必要性が高まって、資産運用がより身近なものになると考えられています。新しいNISAの登場で、資産運用を始めてみようという方も増えていると思うので、そのときにこのファンドを使っていただけるとうれしいですね。
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)
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