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Q. 資産が増えているファンドがいいんですよね?


オトナの七五三の2次会(Q&Aフリータイム)などで聞かれる質問に、「資産が順調に増えているファンドがいいんですよね?」というのがある。結論から言うとNOだ。

まず「資産」とはファンドで預かっている中身の時価評価額のこと。一般的な投信の値段である基準価額は1日に1回だけ算出されるが、その日の終わり時点で保有している株式や債券などの一つひとつの値段と、その時点で保有している数量(株数など)を掛け算して、全部を足し算する。そこから1日分の信託報酬などを控除した上で、その日の全保有者の合計口数で割り算したものが、その日の基準価額となる。

この質問をする人の頭の中には、「買う人がコンスタントに存在して、資産が順調に増えていれば、お金が回っているから安心なのだ」という気持ちがあるのかもしれないが、それは詐欺まがいのマルチ商法が回るかどうかという種の話であって、投信にはまったく当てはまらない

上の絵で言えば、ファンドを買う人がいれば「分子」にはお金が入ってくる。そのお金を使って何か新しい株を買ったり、買っていた株数を増やしたりするわけだが、「分母」の口数も同様に増えるから、割り算の結果である基準価額には関係がない。売って出ていく人がいる場合も同じこと。「分母」も「分子」も減るから、解約があってもそれによって基準価額が下がることはない。

そもそも、新規のお金が一向に入って来なくても、投信の運用には何ら影響がない。毎日お金がジャンジャン入ってくる方が、入ってきたお金で何かを買わなくてはいけないからよほど大変だ。

そして、一向に入って来ないその時期に、もしも株価が上がっていたら純資産総額は順調に増えていくのだ。なぜなら純資産総額は株価×株数の結果だから。誰も解約していない時であっても、株価が下がれば掛け算結果である純資産総額は下がる。ただそれだけ。

当社のコールセンターには毎日純資産総額を電話で聞いてくる人が2人くらいいて、何度も無意味だというご説明はしているらしいのだが、残念ながら電話は今日もかかってくる。

本コラムは私が書きました。


今福 啓之(いまふく ひろゆき)

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日興アセットマネジメント マーケティング共同グローバルヘッド。1990年野村證券入社。支店営業、研修部、金融法人部を経て2000年にフィデリティ投信入社。2007年に日興アセット入社。2014年ピクテ投信マーケティング担当執行役員を経て2016年より再び日興アセット。日本証券アナリスト協会検定会員、日本FP協会認定会員


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