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Q. 投信の話に「何%で運用すれば...」って?


よく「100万円を5%で20年間運用すると...」という話が書かれていることがあるし、我々もよく使う。しかし当たり前だが、資産運用は毎年5%などの固定金利ではない。資産運用における年〇%というのは基本的に、(1)後から振り返った時に「年何%に相当する増え方」だったのか、(2)それは同期間の預貯金と比べてどれだけの差があり、(3)その差は途中のハラハラに対して妥当だったか、を測定するためのものだ。たとえば100万円が上下しながらも10年後に150万円になった投資は、10年後の時点から見て「あぁ50%増えたということは10年で割って年5%の投資だったんだな。預貯金と比べてこの差があれば、取ったリスクに比べて悪くなかったな」と評価するわけだ。

そうした終わった投資の事後評価、あるいは他人のそれ(一般には指数の過去データ)を今後の計画の参考にすること以外にもうひとつ、我々がこの〇%の話をとても大事に思って使う場面がある。それは「健全な皮算用」でリスクを取る「覚悟」をするために使うというものだ。

本ページの動画の2つ目から4つ目でも話しているが、リスクが嫌いな私たちが勇気を出して資産運用の世界にチャレンジするには、「自分にとって必要だから」という納得が不可欠だ。そのためには、自分の目標金額の達成に求められる「必要利回り」が年〇%なのかを知ることがひとつの大事な方法となる。さっきの逆で、「10年後に100万円を150万円にするためには年5%相当のパワーが必要なのだな」と考えるわけだ。

仮に10年後に今の資産を2倍にしておくことが必要なら、2倍は100%だからそれを10年で割って年10%が「必要利回り」となる。年5%も10%も間違いなく預貯金では無理なので、資産運用の世界に踏み出さざるを得ないという納得が導かれる。投信選びの観点でいえば、安心を謳うタイプのバランスファンドでは年5%でも荷が重い。個人的な感触だが、「必要利回り」が年5%以上なら株式が多めの(=リスクの高い)バランスファンドを選ぶ必要があるし、年10%以上なら間違いなく株式100%の投信を選ばねばならない。

バランスファンドといえば、時々「20%下がってしまったら、その後20%上がっても元には戻らないんです。だから下がらないことが大事です」といった話が出てくる。何かすごくいいことを聞いた気になるが、ちょっと変だ。100万円が80万円に減ってしまった後、80万円が20%上がっても確かに96万円だから100万円に戻っていないでしょう?という意味では間違っていないのだが、リターンの計測は「あくまで後から」なのだ。

100万円が80万円に減った後に、また100万円に戻り110万円や120万円になるかならないかは、その投信の商品設計と株式市場などの状況によってのみ決まる。その動きを3つの時点で後から計測すれば、まずマイナス20%だったが、次はプラス25%(100÷80-1)で、その後はプラス10%か20%かとなる。あくまで上がったり下がったりする動きが事後的に計算できるだけであって、そこに事前に利率が決まった預貯金のような話を持ち込んではいけない。

本コラムは私が書きました。


今福 啓之(いまふく ひろゆき)

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日興アセットマネジメント マーケティング共同グローバルヘッド。1990年野村證券入社。支店営業、研修部、金融法人部を経て2000年にフィデリティ投信入社。2007年に日興アセット入社。2014年ピクテ投信マーケティング担当執行役員を経て2016年より再び日興アセット。日本証券アナリスト協会検定会員、日本FP協会認定会員


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