2017年11月29日から12月2日までの4日間、東京ビッグサイトにて「2017国際ロボット展」が開催されました。
ロボティクス関連企業の投資信託を運用する当社は、金融業として異例のブース出展を行なうと共に、ロボ業界の最前線を把握すべく、社員の皆で各企業の展示を見て学び、同時に自社ブースで多くの方と情報交換を行ないました。本レポートでは、出展企業のご協力を得て、当日の模様の一部をお伝えします。
初めてのブース出展となる当社は、どれくらいの数の、どんな方が来場するのかを十分把握しないまま当日を迎えましたが、なんと4日間で13万人を超える入場者(過去最高)が詰めかけ、通路を歩けないほどでした。
ほとんどはスーツ姿のビジネスマンで、各ブースには専門的な質問をしたり、その場の商談スペースで話し込んだりする方も。
ロボの導入を真剣に検討する企業がいかに多く、人手不足の解消という「必然のニーズ」がいかに切実なのかを実感しました。
FA(Factory Automation/工場自動化)関連のメジャープレーヤーは、ほぼ出展していました。ファナック(日)、安川電機(日)、キーエンス(日)、オムロン(日)、KUKA(独)、ABB(スイス)、SMC(日)など、ロボティクス株式運用でよく耳にする企業を多く見ることができました。
その背景は人手不足。先進国でも中国でも、生産年齢人口はすでに減り始めており、工場で働く人を集めることは年々難しくなっています。また、生産性の向上は常に求められており、生産現場の自動化へのニーズは高まるばかりです。
FAの主役「産業用ロボット」とは、実は複数の“関節”を持つアーム(腕)のこと。3軸以上の動きを持つものという定義ですが、今は6軸が主流です。
それぞれの関節をモーターで動かし、先端に別途取り付けた「ハンドピース」に、モノを掴んだり、溶接したり、塗装を行なったりなど目的に応じた仕事をさせます。その産業用ロボの世界的なプレーヤーが、日本の安川電機でありファナック。海外ではABBとKUKAが有名です。
ちなみに先端のハンドピースを作るのは別の企業群。アームとはまた別の、FA関連の重要なプレーヤーです。
例えば、モノを掴んだり離したりするハンドピースには、日本のSMCなどの空圧技術が使われているといわれます。
山梨県忍野村に本社置くファナックは、日本を代表する世界的産業用ロボメーカー。黄色がトレードマークです。
米自動車メーカーにも早くから採用され、重いものの移動(ハンドリング)から、塗装・溶接・組立などの工程の自動化に貢献しています。
動画はこちらのリンクから
北九州市に本社を置く安川電機も、ファナックと並ぶ世界的産業用ロボメーカー。
モーターをルーツとする同社の産業用ロボのシリーズ名は「モーター+マン(人)」で“MOTOMAN”。青色がトレードマークです。
動画はこちらのリンクから
ドイツのKUKA(クカ)は、ドイツの自動車メーカーの工場はもちろんのこと、2017年に中国家電大手の美的集団の傘下に入り、旺盛な中国の需要も取り込み中。
ブースでは、ドイツビールをグラスに注ぐ高精度のロボット*のデモンストレーションが目を引いていました。
*人協調型センシティブロボット
動画はこちらのリンクから
四大メーカーが共通してアピールしていたのは、人協働ロボ-コボット(Collaborative Robot)と呼ばれるタイプ。安全柵なしで人のそばに配置できるロボットの登場により、自動車に代表されるような大型・定型のライン作業ではない、幅広い業種の工場におけるロボ活用が可能になってきました。
ファナックブースにて撮影
安川電機ブースにて撮影
KUKAブースにて撮影
人が触れるとセンサーが検知して自動でストップする安全機能も、各社の差別化のポイントのようです。
以前の展示会ではロボがガラス越しにしか見られなかったことを思うと、まさにロボの普及が第2ステージに入ったことを実感します。
従来の産業用ロボは、ベルトコンベアのようなライン上に配備され、決まった位置にある部材に決まった動きの仕事をさせるものが主流でした。国際ロボット展における、「人協働」に並ぶ各社共通のキーワードは「センサーやカメラ」、そしてAI(人工知能)です。
カメラを内蔵し、部材を自ら認識して掴んだり仕分けをしたり、キズの有無を検品したり、熟練工の作業の様子を各種センサーで“完全コピー”で再現したり―センサーやカメラは、産業用ロボットが出来る仕事を飛躍的に拡げています。
ファナックブースにて撮影
食品・化粧品・医薬品―俗に「三品産業」と呼ばれる産業は、製品の形にバラつきがあり、少量多品種かつ商品サイクルも短いため、ロボ化がなじまない業界とされてきました。
しかし、「人協働」と「センサーやカメラ」による、小型で賢く柔軟性のあるロボの登場により、これらの業界が今、非常に大きなビジネスチャンスと見られています。
ABBブースにて撮影
今回の国際ロボット展は、産業用ロボット関連の企業ブースが多くを占めましたが、投資対象としてのロボティクスは、これらFA(工場自動化)関連はもちろんのこと、その工場で実際に作られるモノに(IoTの進展によって)多く組み入れられるようになった半導体関連や、さらには医療・介護分野などにも及びます。
4日間の参加を通じて、私たち日興アセットが考えるロボティクス投資とは、まさに「株式の柱」として長期投資にふさわしい“メガトレンド”であるとの意を強くしました。