初心者3分シリーズ:投信イチから編
高配当株の投資信託ってイイの?
今福 啓之
日興アセットマネジメント
当「20年後ラボ」は「これから投資信託を始めよう」または「始めたけど自信ないんだよね」という人に向けて、投信メーカーならではのちゃんとした内容を、でも社員個人の考えを自由にカジュアルにお届けしたい、というサイトです。
・・・なのですが、どうしても皆、長くなりがち。そこで通常のコラムとは別に、3分で読めるくらいのショートシリーズを立ち上げました。さて短く書けますかどうか。
「高配当株式」というのは昔からあるカテゴリーですが、最近になって急に市民権を得て「人気者」になった気がします。でも私は、投資信託の裾野が拡がった今、「そもそもの基本」を知らずに人気だけが高まってしまうのは良くないな、と思っています。
それは、「高配当って、いいことばかりじゃないですよ」という話。2つにわけてお話します。
まず「配当金」とは、株主に対して「ウチの株を持ってくれていてありがとう。利益が出たので一部を還元しますね!」と、その企業から振り込まれるお金です。したがって、業績が悪い時には配当金が減ったり、なくなったりします。
その配当金が株価に対して高めの企業ばかりを集めたのが「高配当株ファンド」などと呼ばれるひとつのカテゴリーで、その高めの配当金を原資に、定期的に分配金を支払う設計となっていることが多い投資信託です。
個別銘柄を精査するのは難しいので、そのパッケージである「高配当株ファンド」を買い、配当金の代わりに分配金を受け取って楽しく使っていこう、と考える方も多いようです。
さて、「いいことばかりじゃない」のひとつめは、配当金を多く出す企業は成長力が乏しい会社かもしれない(そうでない会社もある)、という少し怖い話です。
先ほど言ったように、配当金を出すという行為は、会社がせっかくあげた利益の一部を、更なる成長のために使わずに株主に返還してしまうことです。
こう聞くと、人によっては「こんな少しのお金は要らないから、工場を増やしたり新商品の開発費に充てて成長したりして、株価を上げてくれよ!」と思うかもしれません。
でもその会社は、工場建設や新商品開発の余地が乏しい成熟企業で、稼いだ利益を使うアテがないから株主に返すしかないのかもしれない。
ここが要注意ポイント。つまり、高配当株とひと括りにせず、配当が高い理由に目を向ける必要があるということです。
もうひとつの「いいことばかりじゃない」は、配当金も分配金も「出したら下がる」という理屈について。
まず先に投資信託の分配金から話しますが、これはもう出た分だけ確実にキッチリと基準価額が下がります。
以前の3分シリーズにも書いたように100万円が110万円に増えた投資信託が1万円の分配金を出したとしたら、手持ちの投資信託の価値は(基準価額が分配金分だけ下がることによって)109万円になっています。別にオトクでもなんでもありません。
配当金の方も、出たら株価がその分だけ下がる――方向に力が働きます。投資信託と違って株価は理論値に対して買いと売りの力関係が働くので、投資信託ほどキッチリとはなりませんが、理論的には配当分だけ株価は下がろうとします。それを「配当落ち」といいます。
さて、悪口ばかり言ったように聞こえるかもしれませんが、ちゃんと調べて選び抜けば、あるいはそういう投資信託を選べば、それら高配当株は毎年しっかり収益をあげている優良企業かもしれないし、配当も安定した優良企業との評価の結果、株価の変動がマイルドで保有しやすい株だったりするかもしれません。
でも、ここまでお話したように「高配当株なら何でもいいわけではない」し、「高配当株投資は決して簡単ではない」ということは覚えておきましょう。何となくいいイメージがあったり、「取り崩し期」に向いているような話が聞こえてきたりしますが、自分なりに研究してからにすることをお勧めします。
今福 啓之
日興アセットマネジメント