「何が分からないか、分からない!」方のためのFAQ

金への投資って積極的にした方がいいんですか?

公開日2025年1月21日

加集 勇夫

日興アセットマネジメント

結論

  • インフレ耐性や分散相手として金は有用

  • インカムを生まないことはデメリット

  • ポートフォリオのパーツとして考える

金は古くから価値のある資産として認識されてきました。そして、アクセサリーや部品素材としてだけではなく、投資対象としても認識されています。金への投資は、インフレ対策やポートフォリオの分散化に役立つとされていますが、同時にリスクも伴います。本コラムでは、金への投資について考えてみたいと思います。

希少性から古くから認められてきた価値

金を使った装飾品は、古代エジプトのツタンカーメン王の黄金のマスクに始まり現代にいたるまで、多くの人々に使われてきました。また、通貨としての歴史もあり、銅貨や銀貨などに比べて、価値の高いものとして、人々に利用されてきました。

装飾品や通貨として利用されてきた理由には、その美しさだけでなく、希少性を挙げることができます。2023年時点の金の埋蔵量は5.9万トンであり、銀の61万トンの10分の1以下と推計されており、その希少性から高い価値を持ち続けてきました。

  • 出所:米国地質調査所(USGS)「Mineral Commodity Summaries 2024」

長い歴史の中で価値があるとされてきた金には、「いざとなればお金の代わりになる」といった貨幣代替機能があるといえます。そのため、経済の不確実性や地政学リスクが高まるときには、価格が上昇しやすい側面があります。

世界が不安定であったり、危機に陥った際でも人々から支持されることから、金は「安全資産」として認識されています。

金への投資方法「金地金、金貨」「金鉱株」「投資信託」

ここ数年の金価格は、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった2020年春ごろから上昇基調にあります。地政学リスクが高まったり、2024年には米国の利下げ観測なども追い風となってきました。

期間:2000年1月4日~2024年12月30日
金価格:ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の金価格(米ドル建て)。信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成

金価格の推移

リサイクルショップなどでは、家に眠っていたアクセサリーの買い取りが活況という報道を目にする機会が増えています。こうした話を聞くと、先々を見越して金を買っておこうという人も増えているかもしれません。

では、金への投資方法にはどのようなものがあるのでしょう。代表的なものは以下の3つです。

1つ目は、金地金や金貨の購入です。とてもオーソドックスな方法で、現物を持つというものです。純金のアクセサリーなどを買うというのも、この感覚に近いかもしれません。

目に見える安心感もあり人気の高い投資方法です。最近では少額から投資できるところも出てきていますが、家に保管する場合には盗難リスクが、預かってもらう場合には管理コストもかかってきます。

2つ目は、金鉱株への投資です。これは、金に直接投資するのではなく、金を採掘・生成する企業に投資するという方法です。

株価が金価格と連動する傾向がある点に着目したもので、株式投資であるため配当金を期待できる点も魅力です。純粋に金価格に連動するわけではなく、企業固有のリスクもありますが、少し変わった金投資と考えられます。

3つ目は、投資信託の購入です。金の先物を組み入れるものもあれば、現物の金を保管するものもありますが、いずれも金価格との連動を目指したものになります。中には、金をパーツの一部として、複数の資産と組み合わせるバランスファンドもあります。

投資信託なので、信託報酬がかかりますが、比較的少額から取引ができる点は魅力的です。株式と同様、少額投資非課税制度(NISA)の対象となっていれば、税制面の優遇を受けられることも、人気が高まっている背景にあります。

金投資の何がいい?メリットを考える

価格の上昇は、最近、金投資を始めた人にとって強い動機になっていると思います。株式であれ、ビットコインであれ、投資資産の価格が上昇すれば、キャピタル・ゲイン(値上がり益)が期待できるからです。

ただ、伝統的に金投資で強調されてきたメリットは、別のところにありました。それは、インフレ対策やポートフォリオの分散化といったものです。

ここ数年話題になっているインフレは、モノやサービスの値段が上がるというものですが、その裏返しとして通貨の価値が下がっていると捉えることができます。そして、信用で成り立っている通貨の価値が下がるということは、現物資産である金の価値が上昇することに繋がります。

また、金以外の資産との関係に注目して見ると、金は株式などとは異なる値動きをする傾向が見えてきます。このことを「相関が低い」といいますが、相関が低い資産同士を組み合わせると、ポートフォリオの分散化に寄与し、リスク・リターンの効率が高まります。

この2点は、価格上昇以外に金投資が勧められてきた大きな理由といえます。最近の価格上昇に加えて、インフレ対策や分散化にも役立つという、魅力満載の金ですが、いくつかの注意点も押さえておく必要があります。

債券や株式との決定的な違い

市場で取引されている金は、その需給などに応じて価格が日々変動します。リスク局面での耐性を発揮する傾向があるといった特有の動き方をするとはいえ、この点については、債券や株式とも共通しています。

一方で、債券や株式との大きな違いとしては、利子や配当といったインカム・ゲインを生み出さないというものがあります。

債券や株式であれば、その背後にある企業などの事業活動から生み出される利益などが源泉となり、定期的な収入が期待できます。しかし、金の場合は、それ自体が新たに何かを生み出すものではありません。

近年の金価格の上昇にクローズアップすると、この点をあまり重要視しない方もいらっしゃるかもしれません。ただ、過去にそうした価格上昇がなかなか見られない局面においては、「金ではなく、債券や株式で十分ではないか」といった意見もありました。

そして、この先も同様の局面が訪れる可能性は十分にあります。そのため、金に投資する際には、債券や株式とは異なる性質を持つ資産として捉え、分散投資のパーツとして保有することが重要です。

金は資産運用のコアではない

ここまで書いてきた通り、金には債券や株式にはない魅力があります。特に「インフレに強い」という特徴は魅力的なので、人によってはインフレが警戒される中では、資産運用における中核(コア)資産として考えようという方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、前項で書いたように、金自体は何かを生み出すものではないということを踏まえると、資産を育てていくという観点からは金は資産運用のコアにはなりづらいと考えています。

世界経済が拡大していくという前提に立つと、長期的には資産運用におけるコア資産は、株式が中心になってくるでしょう。ただ、株式だけではリスクが高いため、そこに債券やREIT、そして金を加えるというのが、安定した資産運用のための王道になってくると思います。

様々な資産との相性がいいとされる金を取り入れることは、ポートフォリオ全体の投資効率(リスク・リターン)を改善してくれると期待されるので、この機会に選択肢の一つとして注目してみてください。

加集 勇夫

日興アセットマネジメント



当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。


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