高配当株って何がいいんですか?

加集 勇夫
日興アセットマネジメント

結論
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新NISAが始まって以降も高配当株は人気
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「なぜ高配当か?」を見極めないと、投資成果が上がらない可能性も
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高配当株に投資するなら、長期スタンスで挑むのが肝心で、積立を活用するのもよさそう
相対的に配当利回りが高い「高配当株」への注目が高まっています。配当金を非課税で受け取れる新NISA(少額投資非課税制度)も、関心の高まりに拍車をかけているようです。
しかし、「配当利回りが高い銘柄を選びさえすれば安心」という考え方には注意が必要。高配当株の中には、業績不振によって配当が減少する「減配リスク」や、株価が大きく下落するリスクを抱える“危険な高配当株”が潜んでいる可能性もあるからです。
そこで本記事では、こうしたリスクを低減しながら継続的に高配当株投資を行なうための手段として、投資信託を活用する方法をご紹介します。
高配当株の魅力
企業が利益の一部を株主に還元する「配当金」。その配当金が株価に対してどれほどの割合を占めるかを示す指標が「配当利回り」です。そして、この配当利回りが相対的に高い株式が「高配当株」と呼ばれます。

たとえば、日本株の代表的な株価指数である日経平均株価の配当利回りはおよそ2%ですが、その中でも配当利回りの高い50銘柄に絞った「日経平均高配当株50指数」では、その水準が約2倍になっています。米国株や全世界株など、他の国・地域の株価指数でも同様に、高配当株指数は代表的な株価指数に比べて配当利回りが高くなっています。
※全世界株価指数:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス、全世界高配当株価指数:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス高配当利回りインデックス※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。出所:日本経済新聞社、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社、MSCI社

主な株価指数の配当利回り
同じ国や地域の株式であっても、銘柄ごとに配当金や株価の水準は異なります。高配当株指数は、そうした様々な銘柄の中でも配当利回りが相対的に高いものを選んでいるため、こうした結果となっています。
相対的に配当利回りが高い銘柄を見つけること自体は簡単で、依然として低金利の環境下において「高配当」は魅力的な響きでもあるため、高配当株は多くの投資家の関心を集め、マネー誌などでも頻繁に特集が組まれています。
高配当株の落とし穴
しかし、配当利回りの高さだけに注目すればいいわけではありません。たとえば、業績が一時的に悪化した企業では、株価の下落によって配当利回りが高くなるケースがあります。こうした企業は、近い将来減配を余儀なくされて配当利回りが低下する可能性がありますし、株価の下落も懸念されます。
また、利益に対する配当の割合を示す指標である「配当性向」が、極端に高い企業にも注意が必要です。近年では、成熟した業界の企業などの間で、株主還元を強化する動きが広がっています。これ自体は好ましい傾向ですが、将来の成長のための投資を犠牲にして配当に資金が回っている可能性もあります。また、その企業が投資家からの支持を集めるために利益の大半を配当に充てている場合、業績が悪化すれば減配を余儀なくされる可能性が高いと考えられます。

株価下落や減配と配当利回りの関係のイメージ
さらに、高配当株の値動きに対する誤解にも注意が必要です。一般的に、配当利回りが高くなってくると、配当狙いの買いが入って株価が下がりにくくなる(下値抵抗力がある)ため、高配当株にはそうした買いが入りやすいと言われています。確かにそういった一面もありますが、決して「高配当株の株価は下がらない」という意味ではありません。
たとえ企業業績が安定していたとしても、株価は企業業績のみで決まるものではありません。そして、「〇〇ショック」のような急激な市場変動時に限らず、配当利回りを上回って株価が下落することも珍しくありません。
株式投資である以上、値動きのリスクは常に伴うため、「高配当株を選べば安心」という考えは誤解だと言えます。むしろ高配当株投資の魅力を活かすためには、こうした“落とし穴”にも目を向けながら、慎重に銘柄を選定していく姿勢が必要なのだと思います。
高配当株投資を継続する方法
高配当株を選ぶ際には、企業の財務状況や業績の推移、配当方針などを調査する必要があります。しかし、企業がいつ業績見通しや減配を発表するかを正確に予測するのは困難なことです。
最近では、証券会社などが情報収集ツールを提供してくれているので、自ら細かく分析しようという投資家も増えています。ただし、財務諸表の分析に加え、製品・サービスの開発状況などのような定性的な情報も把握しようとすると、たとえ数銘柄でも相当な手間がかかりそうです。
そこで注目したいのが、高配当株を主要投資対象とする投資信託。これらのファンドを活用すれば、複数の高配当株に効率的かつ手間なく分散投資することが可能になります。
こうしたファンドでは、仮に組入銘柄の中で配当利回りの水準に変化があった場合、インデックスファンドなら指数の銘柄選定基準に従って銘柄が自動的に入れ替えられ、アクティブファンドならファンドマネージャーが市場環境や企業動向を踏まえて、より柔軟に銘柄の見直しを行なってくれます。このような自動調節機能によって、減配などのイベントに対して、個人投資家がその都度対応する必要はなくなります。

運用スタイルによって異なる銘柄入替
また、減配や株価の下落は、プロが運用していても避けられないリスクではありますが、投資信託であれば複数銘柄に分散投資されているため、特定の企業の動向が投資成果全体に与える影響を抑えることができます。
このようにコンスタントにその時の高配当株に分散して投資を続けることができるのは、投資信託を使った高配当株投資の大きなメリットと言えるでしょう。
さらに、投資信託の中には、企業から受け取った配当金などを原資として、定期的に「分配金」として現金を受け取れるタイプもあります。分配金を受け取らずに自動的に再投資する設定も可能なので、使う予定がなければ資産の成長を効率的に促すためにそれを選択するようにしてみましょう。
短期視点は高配当株投資にNG
株式投資は、「短期的な株価の動きを捉えて細かく利益を上げるスタイル」と、「長期的な株価の上昇や配当金の積み上げを狙っていくスタイル」の2つに大別されます。その2つの中でも、高配当株への投資では、長期投資を前提にしたスタイルの方がよりあっていると思います。
高配当株が短期投資に不向きであると考える理由は、その値動きが相対的に緩やかなものになりやすいためです。高配当株は、業績が安定している成熟企業であることが多いため、成長企業などに比べると株価の変化は小さくなりがちです。たとえば市場が急落した後の回復局面で戻り益を狙おうとしても、株価の戻りが市場全体に比べて遅れたり小さくなることは珍しくありません。
だからこそ、タイミングにこだわった短期的な売買で利益を狙うよりも、早い段階から積立などを通じて、長期的な視点で資産形成を進める方が、高配当株投資は向いていると言えると考えています。
高配当株投資には、個別株を買う方法もあれば、投資信託を使う方法もあります。個別株投資であれば、銘柄によっては配当金に加えて株主優待を受け取る楽しみもあります。一方、投資信託を活用すれば、個別銘柄の選定や管理といった煩雑な作業から解放され、より手軽に高配当株投資を行なうことができます。
いずれの方法を選ぶにせよ、高配当株は魅力的な投資対象であり、資産形成の有力な選択肢のひとつです。その特徴を正しく理解し、自分の投資スタイルに合った形で活用していくことが、資産づくりへの第一歩となるでしょう。
加集 勇夫
日興アセットマネジメント
