第二話 夫婦の投信積立は2人同額でオープンに
今福 啓之
日興アセットマネジメント
ポイント
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夫婦で投資信託に取り組むならオープン&同額で
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年末に一度互いにチェックするくらいがちょうどいい
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まずは証券口座を作るところから
では少し照れるが早速始めますか。投資信託の仕事で32年目の僕が、父親の最後のアドバイスとして結婚した娘とその夫2人にこんな話ができるのは、まぁありがたいことだよね。
「本気の積立」を夫婦でオープンに
さっき話したポイントは、預金か運用かとか、何を買ったらいいのか?などの方法論よりも天引き、積立の「元本」の大きさこそが大事なんだってことだったよね。
生活の無駄や見栄を削ぎ落とすことで手取りの25%以上、できれば30%や35%の積立をやったらいいよって、ちょっと踏み込んだ話をした。
ウチの会社はそれを「本気の積立」って言葉でもう10年以上ずっと標榜してるの。
今では投資信託の積立も1,000円とか100円からやれるんだけど、そんなんじゃ意味ないよ!ってあちこちで言い回ってて、「御社って自由ですねー」って同業から苦笑いされてる。
今日もうひとつ踏み込んで言いたいのは、それをぜひ2人でオープンに、平等にやったらどうだろうという話。
2人の稼ぎはそれぞれ違うんだろうけど、日々の生活費の拠出の分担の方でメリハリつけるなりして、「将来の2人のためのお金」については平等に、つまり同額で、かつオープンにして2人で楽しみながら作っていく、っていう考え方。
ウチはご存じの通り僕だけが働く家庭だったから、アドバイスする資格はないかもしれない。でも日本にはまだダブルインカムの家計に対するアドバイスが確立してないんだよね。
それでも最近よく耳にするマズイ例とは、お互いで取り決めた生活費の拠出をしたあと、互いのお財布に関与してない例。
それぞれ「相手は貯金してるだろう」と思っていたがそうではなかった——っていうケースみたい。
2人合わせれば年収1,000万円とか1,200万円とかの「パワーカップル」っていうらしい、豊かな生活をしてる30代後半とか40歳くらいの人たちが、いざフタを開けてみたらほとんど貯蓄がなかったとか、片方しか頑張ってなくてそれが原因で不仲になっちゃうとかね。
投資信託の積立は2人同額で
それではダメだと思う。最初が肝心。デフォルトのセッティングが大事だと思う。
せっかく僕の話を2人で聞こうとしてくれたわけなので、「2人平等にオープンに」を「本気の積立」の次のキーコンセプトとして実践してほしい。
すでに「毎月の2人の生活のため」の拠出を分担していると思うけど、それとは別に「将来の2人の生活のため」の拠出を「新規設計」するっていう話だね。
2人でオープンに話し合い、無理のないギリの「本気の積立」を、できれば同額で設定したらいいと思う。
「今」と「将来」の2つの切り口からオープンに共有し、それを紙のノートでもPCでもいいから記録していったらいいんじゃないだろうか。
そして年末に一度、ノートを2人で一緒にチェックして進捗確認をしたらいいと思う。
このあと話すけど、投信で積立をしていると必ずいい時期と悪い時期があるから、年末に2人でそれを見ながら、喜んだり青くなったりするのも「年末行事」として面白いじゃない。
もちろん青くなるのはないに越したことないけどさ。
2人の将来のためなら口座名義は?
もっと踏み込んで具体的なことを言うね。
この「作戦」を投信で始めるには投信を買うための「証券口座」というのを開設する必要があります。証券会社でも銀行でも同じ。
その時、「2人の将来のためなら共同名義みたいなのにするのかな?」と思ったかもしれないけど、そんなことはないの。
別々に口座を作って別々にやってればOK。
それぞれが、できれば同額で平等に積立をしていることを互いにオープンにしてさえいれば、それぞれ自分の名義でやっていればいい。そもそも自分のお給料だからね。
まだ証券口座を持っていないなら、まずは口座だけを作ることからだね。同じ金融機関にした方が、アプリやウェブサイトの見方とかで相談しやすいからいいんじゃないかな。
ただ、ポイント還元が多いとか少ないとか、口座開設で何かもらえるとか、そういうことで決めないことが大事。
提携のクレジットカードから投信積立の引き落としをするとポイントが付く、みたいな話も最近盛んだけど、僕はちょっと違和感。
そのためにカードを増やしたり、銀行口座を変えたりするのが面倒だっていう僕の無精な性格のせいもあるけど、そういう「ポイ活」と自分の人生設計そのものである投信の積立が、何となくミスマッチな気がするっていうのもある。
企業は口座獲得のプロモーションで色んな手を打ってくるけど、それはあくまで「オマケ」だと考えるクールなスタンスをお勧めするかな。
君たちは10年20年の大プロジェクトをしようとしてるんだから、目先のコスパ話に釣られるのでなく「20年は絶対潰れないだろう」というところで口座を作ることが大事。
投信って購入した金融機関が潰れても投信のお金自体には一銭も被害が及ばない仕組みなので、本当はどこでも大丈夫なんだけどね。
とはいえ潰れたり、サービスをやめちゃって口座を移管しなきゃならなくなったり、何回も名前が変わられたりしたら面倒くさいからね。ホント。
ちなみに口座を作る時には、同時に何かのファンドを買わなくてもいいし、同時に現金を入れる必要もないから安心して。
とにかく口座だけはすぐに作るアクションをすると。それが大事。
この世界、とにかくアクションをすること。そうしないと何も始まらないから。
NISA?――別に大した話じゃありません
ところで、「NISA」というのは聞いたことあると思うけど、それは証券口座を開いたあとに出てくる話で、簡単に言えば証券口座の中が2つに分かれているの。
だから口座作る時には気にしないでいい。「NISAも使うつもりです」とチェックボックスに印を入れて、マイナンバーの写しとかの必要な書類を添えておけばいい。
実際に何かファンドを買う時になると、証券口座の中の「NISA」の口座の方で買うか、そうでない口座、「特定口座」っていうんだけど、その中で買うかを選ぶわけ。
そうそう、ちょっと気が早いけど「特定口座・源泉徴収あり」が良し――と覚えておいて。
ネットでは申告不要な年間20万円以下の利益にも源泉徴収されちゃうのが損だとか何だとかいう議論があるんだけど、そもそも20万円以下の利益確定を毎年チビチビやったり、年単位の損をわざわざ出して利益と相殺したりとかっていうことに頭と時間を使ってほしくない。
税金を払う、つまり売却するのはずっとずっとずっと先。
その時に利益への税金を取りませんよ、って国が言ってくれてるNISA口座なら非課税だし、そうじゃない口座の方は金融機関に最初から税金分を引いてもらってそれで終了!っていう源泉徴収にしとけばシンプル、以上。
ということで「特定口座・源泉徴収あり」で口座開設しとけば良し。
そしてNISAについては、100万円分買って150万円になって売りました、となった時に普通は50万円の利益の約20%の約10万円が税金として引かれちゃうのがNISA口座で買っていればそれがかからない。
こう言っちゃ何だけど、ただそれだけなの。
もちろんありがたい制度だから使うべきなんだけど、でも最後の最後の利益の2割の話でしかないわけ。詳しくはまた商品の選び方と一緒に説明するね。
今福 啓之
日興アセットマネジメント