債券・リートについて知っておくべきこと
今福 啓之
日興アセットマネジメント
結論
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債券は株式の「分散相手」として好相性
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債券もリートもまずはバランスファンドのパーツとしてとらえたい
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バランスファンドのパーツだとしても、資産の性質や値動きの理屈は知っておきたい
目次
「投資信託は3×3のマスの理解から」の記事で、投資信託の投資資産は株式と債券とリート(REIT)の「3つしかない」と思って概ね問題ないとしました。
3つのうちの株式はイメージしやすい一方、債券とリートについてピンと来る人は多くないでしょう。
それでも基本的な性質を知っておくことは、バランスファンドを選ぶにあたっては必須ですし、仮に「株式100%」の投資しかしない人でも、金融市場全体を俯瞰して見るための知識として、意味があるはずです。
債券は「クッション役」として使われることが多い
「国債」は聞いたことがあるかもしれません。国が発行する債券が「国債」で、企業が発行するのを「社債」や「事業債」と呼びます。
債券とは一種の借用証書であり、国や企業がお金が必要な場合に発行し、それを買った人のお金が「発行体」と呼ばれる国や企業などに渡ります。
原則として返済期日ともいえる「満期」が定められており、満期になると債券を買った人に元本が返ってきます。それまでの間、お金を貸している「お礼」として、発行時に定められた利子が半年に一度などのペースで支払われます。
つまり債券は、株式に比べるとかなり安心感のある投資対象といえます。何より満期まで持っていれば投資元本が返ってくるのですから。
その性質から債券は、株式と組み合わせて投資信託の価格変動を穏やかにする「クッション役」として使われることが多くあります。「投資信託は3×3のマスの理解から」の記事で触れたバランスファンドです。
「安心イメージ」の債券ですが、しっかり理解してもらわないといけないことがあります。それは、「債券も下がることがある」という点です。
債券も下がることがある!
実は債券にも株価と同じように「債券価格」というものがあり、それは満期までの間、市場で日々変動しています。
もちろん、個人向け国債のような債券を自分で買い、それを満期まで持ち続ける限りにおいて、途中で価格が動いていることを感じる機会はありません。
この場合、預貯金に近い性質があるといえます。債券を発行した「発行体」が潰れない限り、定期的に利子が受け取れ、満期に元本が返ってくるのですから。
しかし投資信託で債券を組み入れた場合は、そうはいきません。投資信託の中に入っている債券については、その日その日の価格を算出し、投資信託の値段である基準価額に反映することになっているからです。
そのため、その日の債券価格が昨日より下がっていれば、当然、投資信託の基準価額にはマイナスのインパクトを与えることになります。
期間の長い債券ほど動く
とはいえ、株価とは違って債券の価格の上下幅は大きくありません。満期になれば元本が返ってくる安心感のある債券と満期がない株式ですから当たり前でしょう。
また債券価格は、満期に近づけば近づくほど価格は動かなくなります。確かに来週に元本で返ってくるなら、その価格は上にも下にも動かなさそうです。
つまり、期間の長い債券の方が値動きが大きく、期間の短い債券ほど値動きが小さいということになります。
では、そもそも債券の価格はどういう風に動くのでしょう。例えば、どんな時に下がるのでしょうか。
それは「世の中の金利水準」が上がる時です。
世の中の金利上昇が弱点
理屈を説明します。もし、ある債券が発行された後に、世の中の金利水準が上がったらどうでしょう。古い債券の利子の利率は今のものよりも低いため、債券としての魅力が下がることになります。
でももし、100万円で満期を迎えるその債券が90万円で安く買えるなら、多少利子が低くても買う人が出てきそうです。
これが、「世の中の金利が上がると、既存の債券の価格が下がる」理屈です。昔の見劣りする利率をカバーできるところまで価格が下がれば、その債券の価格は下げ止まります。
逆に世の中の金利が下がった時には、債券価格は上昇することになります。
つまり債券の価格は、世の中の金利の上下と反対方向に変動します。ということは、価格だけでいえば「債券は世の中の金利上昇が弱点の投資資産」といえます。
あるいは「景気回復時に弱いのが債券」ともいえます。なぜなら、世の中の金利は景気がいい時に上がることが多いからです。
「景気回復時には株式が好調で、債券価格は下落」、「景気不調時には株式が不調で、債券価格は上昇」と覚えておくといいでしょう。
このように、債券は株式とは反対に動く性質があるからこそ、組み合わせて持つ分散効果、バランス効果があるのです。
ところで、世の中の金利が上がって債券価格が下がった時であっても、定期的に支払われる「利子」があることは、債券の大きな強みです。
その利子は変動せず淡々と投資信託の中に入ってくるので、変動する債券価格とは別に、投資信託の価値を少しずつ高める役割を果たしてくれます。
まずはバランスファンドのパーツとして
株式100%のファンドがあるように、債券100%のファンドもあります。でもそれを株式ファンドとバラバラに買って、管理していこうというのは、中々に高度な話です。
株式ファンドと債券ファンドを別々に持ち、それが全体としてのベストな組み合わせだと思っていたとしても、弱い私たちは、別々に出てくるそれぞれの基準価額が気になってしまうからです。
例えば景気回復局面で株式ファンドの基準価額が上がっている時に、債券ファンドの基準価額が下がっているのを見ると、分散効果としては想定内のことだったのに、債券ファンドを売りたくなるのです。
逆の時には債券ファンドが株式ファンドの下落を補ってくれるはずなのに、それが待てなくなるわけです。
であるなら、分散して持つことが適切なお金については1つの基準価額しか出てこないバランスファンドのかたちで持つ方が、精神衛生上も健やかに過ごせそうな気がします。
リート(REIT)こそ、バランスファンドのパーツとして
リートとは、簡単にいえば「不動産賃貸業に特化した法人」が発行した証券で、株式と同じように取引所に上場して売買されています。
ショッピングモールを保有して入居するブティックからの賃料を得たり、オフィスビルを何棟も保有して経営したりしています。
リートも、株式や債券と同じように価格があり、日々変動しています。その値動きの大きさは株式と同じか、時に株式よりも大きく変動する、リスク高めの投資資産です。
一般的な企業の株式と違うのは、株式の配当金にあたるものが比較的多く、安定している点で、これはリートの大きな魅力です。
それはリートが行なっている事業が、不動産賃貸業だからです。賃料はいったん契約されれば変動せず安定的ですし、景気が良くなればオフィスの賃料の値上げもできるかもしれません。
とはいえ投資資産としてのリートは、株式ほど取引市場の規模が大きくなく、資産運用の「メインエンジン」とするには心もとない面があります。
一方で、株式のような成長性が期待できつつ、債券の利払いのような定期的なキャッシュが得られる両方の側面を持つリートは、バランスファンドのパーツとして魅力的で、多くのバランスファンドに組み入れられています。
バランスファンドの中身を調べる際には是非気にしてみてください。
今福 啓之
日興アセットマネジメント
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