「何が分からないか、分からない!」方のためのFAQ

年代別のオススメの組み合わせを教えてください

公開日

加集 勇夫

日興アセットマネジメント

結論

  • 同じ年齢でも状況は十人十色だから、年齢を軸にした指南はあくまでも参考程度に

  • リスクを取れるなら、株式ファンド100%も選択肢。期間が短かったり使い道が決まっているなら、リスクの取り過ぎは厳禁

  • 細かな売り買いにあまり時間をかけたくないなら、投資信託の活用は有効な選択肢

「20代のための投資の始め方」「60代からの資産運用」など、書店やインターネット上には、年代別の投資をテーマにしたものが多くあります。

その年代の方にとっては、そうした本や記事の内容を自分と重ね合わせて考えたくなるかもしれません。とはいえ、「それは、あくまでも参考程度」として捉えておくのが、ちょうどいいと思います。

他の人と同じじゃなくても大丈夫

これから投資を始めようと思っている人に限らず、すでに投資をしている人でも、「他の人はどうしているのかな?」と気になったことはありませんか。

これは投資に限った話ではありません。服装や趣味など、いろいろなことを人と比べた経験は、多くの人にあると思います。だから、周りのことが気になって、人と比べたくなるのは、もしかしたら本能的なことなのかもしれません。

私自身、「結婚したら読むお金のこと」のような本を夫婦で回し読みした経験もありますし、そうしたタイトルの書籍には、思わず手が伸びてしまいます。だから、SNSや雑誌の特集などで、「20代なら、S&P500指数に連動するインデックスファンドに100%」「50代は守りの運用」といった内容を見聞きして、それを試したくなる気持ちはとても分かります。

ただ、いきなりすべてのお金をそこで紹介されているものに投じるのは考えものです。なぜなら、たとえあなたが20代や50代だったとしても、そのお勧め投資法が、今やこれからのあなたにあっているとは限らないからです。

これは、ステレオタイプ的に、「今どきの20代は、お酒を飲まないし、物欲もない」とか、「50代は、意外とアクティブで、子どもが巣立って自由」などと言われても、当てはまる人もいれば、そうじゃない人もいるのと同じです。特定の年代の多くの人に当てはまりそうなお勧め投資法であっても、それが本当に自分にあっているのかは、よく考えてみる必要があります。

20代や30代といった「年齢」、新社会人や子育て期、退職後といった「ライフステージ」。こうした特定の切り口で何かを語るのは、とても分かりやすい方法です。

たしかに、かつては年代ごとに家族構成やライフステージの「モデルケース」ともいえるものがありました。ただ、今は、一人一人が以前にも増して、多様な生き方を選択する時代であり、そうしたモデルケースに当てはまる人の方が少なくなってきています。

だからこそ、年齢はあくまでも自分の状況を示す一つの要素にしか過ぎず、その他の要素を含めて「己を知る」ことがより大切になっています。自分を正しく理解することが、人の意見を鵜呑みにしない、自分らしい資産運用に繋がっていくと思います。

収入・支出・時間から、投資のためのお金を考えてみる

では、自分の状況を正しく理解して資産運用をしていくためには、どうすればいいのでしょう。いろいろな視点があると思いますが、ここでは「収入」「支出」「時間」という3つを取り上げてみます。

給与でも年金でもお小遣いでも構いませんが、「収入」は、定期的に受け取れるお金のことです。そして、「支出」は、日常生活でかかるお金のこと。食費や薬代だけでなく、家賃なども含まれます。すでにある程度のお金を持っている人でない限りは、収入から支出を差し引いた範囲で、投資に回す金額を決めていくことになります。

ただし、その場合でも、何かあった時に生活を支えられる「生活防衛資金」といえるお金は、預貯金口座に用意しておく必要があります。万が一に備えて、保険にも入っておこうという人もいるでしょう。

最後は「時間」です。時間というのは、「どれだけ投資を続けられるか」を考えるということ。

投資したお金は、自分の意思とは関係のない動きをします。また、長期的には有望でも、短期的には大きな損失を経験することも十分にあり得ます。もちろん、「時間をかければ必ず報われる」という訳でもありませんが、数ヵ月や数年しか投資できないという場合には、投資自体を考え直した方がいいかもしれません。

収入・支出・時間というのは、ファイナンシャルプランナーの方などが、ライフプランを考える際に必ず押さえる項目です。そうしたプロに相談するのも一案ですが、まずは月の収支などから確認してみるといいと思います。

年齢に関わらず、株式ファンド100%も選択肢

日々の生活にゆとりがあって、20年以上、少なくとも10年は使う予定がないお金があるならどうでしょう。もしも「大きな価格の動きも受け入れられる」というなら、20代でも60代でも、「株式ファンド100%」というのは選択肢にしてもいいと思います。

なぜ20年のような長い期間を前提にするのか。それは、景気が良い時と悪い時を行ったり来たりする動きをあらわす「景気サイクル」の期間が、平均5~6年、長いと10年くらいになるといわれているからです。

20年くらいの投資期間が取れるなら、こうした景気サイクルを2~3回は経験できる計算になります。そのため、十分な時間が取れるなら、大きな下落を経験したとしても、その後の回復を経験できる可能性が高くなるという訳です。

ただ、時間がかけられるからといって、全てのお金を一度に投じるのは控えましょう。たしかに、大きな成果を狙うなら、タイミングを見計らって大きく投資するというのも選択肢です。でも、世界恐慌やリーマン・ショック、コロナ・ショックなど、「まさか」と思う出来事は、いつ起こるか分かりません。そして、投資した翌日にそれが起こらないとも限りません。

つまらないと思う人もいるかもしれませんが、一度に投資せずに、投資するタイミングを何度かに分ける積立投資に代表される「時間の分散」という考え方は、地味ながらも大負けを予防するためにも押さえておきたい方法です。

保守的なお金は、リスクを抑えたバランスファンドが選択肢

「10年や20年も投資できない」「株式なんて怖い」という場合はどうでしょう。

たしかに、株式やリート(REIT)などのようなリスクが高いとされる資産の場合は、「お金を使いたい」というタイミングで大きな損失が出ている可能性も十分にあり得ます。それに、相対的にリスクが低いとされる債券などにおいても、元本割れを完全に避けることはできません。

そのため、「どんな商品がお勧めか」という話以前に、リスクを取ってはいけないお金、つまり「減っては困る」というお金で投資をするのはやめましょう。

収入と支出のバランスからは、余裕資金だと判断できたとしても、「家を買うための頭金」や「介護施設への入居費用」のような使い道が決まっていて、減ると困るお金での投資は厳禁です。

そうしたお金ではないけれども、「あまり長くは投資できない」「大きな変動は困る」というお金については、しっかりと分散をするのが一つの鉄則といえます。

投資する資産を分散したり、国を分散したり、テーマを分散したり、先程と同じく投資のタイミングを分散したりといった具合です。分散をすることは、集中をするのに比べると、大きな成果は得られづらくなりますが、その代わりにリスクを抑える効果が期待できます。

もちろん、自分で資産や国を選んで組み合わせることにチャレンジするのも素敵です。でも、分散投資を手軽にしたいなら、「バランスファンド」も選択肢の一つになります。

バランスファンドのよさは、複数の資産への分散や投資割合の管理などを、1本の投資信託の中でできることにあります。バランスファンドには様々な種類があり、投資先やリスクの大きさもマチマチなので、たしかに選ぶときの手間はあります。それでも、選んだ後の「メンテナンスの手間がほとんどかからない」というのは、大きなメリットだといえるでしょう。

投資を続けるうえで大切なのは「自分らしさ」

繰り返しになりますが、年齢というのは、私たちの特性を表現する一つの要素ではありますが、全てではありません。そのため、大切なお金の扱い方を決めるときに、一部の要素のみに注目して判断を下すことは、絶対に避けなければいけません。

大切にしないといけないのは、自分の状況を理解したうえで、自分が納得して、自分がいいと思って投資ができるか、ということだと思います。

もちろん、年齢や世代、ライフステージごとの分類に基づいた話というのは、最初の取っ掛かりとしてはいいと思います。また、ファイナンシャルプランナーによる相談事例の記事などは、リアリティがあって非常におもしろく、参考になる話もたくさんあります。

ただ、そうした話も「しょせん他人事」でしかありません。なぜなら、たとえ似ていても、その話は「あなた」のことではないからです。「20代」であっても、「収入」「支出」「既婚・未婚」「子どもの有無」「職業」「働き方」など、たくさんある要素の一つでも違えば、違う事柄として考えるべきだと思います。

大切なのは、一つの偏った意見に傾倒せず、様々な事例を見聞きし、自分で判断できるようになることだと思います。これは決して、「それができるようになるまで投資をしてはいけない」ということではありません。

投資を始める前でも後でも、いろいろな話を見聞きして、「ここは自分に当てはまるけど、ここは違うな」と自分らしい資産運用の軸のようなものを確立していくのが、せっかく始めた投資を続けるうえでは必要なことだということです。

加集 勇夫

日興アセットマネジメント



当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。


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