「何が分からないか、分からない!」方のためのFAQ

分配型ファンドは選ばない方がいいですか?

公開日2024年05月28日

加集 勇夫

日興アセットマネジメント

結論

  • 分配金とうまく付き合うためには、正しい理解が必要

  • 分配金再投資コースでも、NISAを使えば、課税による運用効率の低下を避けられる

  • 分配型ファンドの中に多くある、インカム創出力が高い投資信託にも注目してみよう

投資信託を使った資産形成で大事なのは、「どの投資信託を選ぶか」。自分にあった投資信託を選ぶために、資産や国・地域など、いろいろな条件を付けて絞り込んでいくという人も多いと思います。

ただ、もしもそのときに、「分配型ファンドはダメ」と切り捨ててしまっているなら、少額投資非課税制度(NISA)を使った考え方にアップデートした方がいいかもしれません。

分配型ファンドって、どんな投資信託で誰に人気?

分配型ファンドとは、毎月や隔月などの決算のタイミングで、分配金の支払いを目指す投資信託のこと。最大の魅力は、定期的にお金が振り込まれるところにあります。

たとえ、投資信託が値上がりしても、売却するまでは手元にお金は入ってきません。しかし、分配金という形でお金が口座に振り込まれると、臨時収入をもらったような気持ちになり思わず嬉しくなります。

そのため、分配型ファンドは、仕事を退職した「リタイアメント層」とも呼ばれる方たちに根強い人気があると言われてきました。

そんな数ある投資信託の中でも、根強い人気を持つ分配型ファンドですが、健全に付き合っていくためには正しい理解が不可欠です。特に、①分配金は資産の取り崩しである、②分配金が必ずしも利益を意味するわけではない、③分配金に課税される場合がある、という3点は重要です。

分配金は、資産を取り崩して支払われる

押さえておきたい分配金の知識の1つ目は、「分配金は資産の取り崩しである」です。

預貯金や債券、株式の場合は、利子・利息や配当金が支払われたからといって、その元金や価格は変わりません。しかし、投資信託の場合は、分配金が支払われると基準価額がその分だけ下がります

上記はイメージです。
投資信託では、基準価額は変動し、分配金が支払われるとその分の基準価額が下がる。預貯金では、元金は一定で、利子・利息が支払われても元金は影響を受けない。

投資信託の基準価額と分配金の関係

この違いは、それぞれのお金を「誰が支払うか」という点に由来します。利子・利息や配当金であれば、それを支払うのは銀行や企業ですが、分配金は、その投資信託の純資産(投資信託が保有する株式や債券の時価総額から、経費などを差し引いた資産のこと)を取り崩して支払われます。

そして、基準価額は、この純資産を総口数(すべて投資家の持ち分の合計)で割ったものなので、分配金によって純資産が減れば、その分だけ基準価額は下がるというわけです。

特に、分配金と配当金は、語感も似ているためか混同されがちです。ただ、性格は全く異なるものなので、「分配金は運用会社からの配当金のようなものだ」と誤解しないように注意したいところです。

上記はイメージです。
投資信託の分配金は、投資信託の純資産から支払う。預貯金の利子・利息は銀行が支払う。株式の配当金は企業が支払う。

投資信託と分配金、預貯金と利子・利息、株式と配当金の関係

分配金は、必ずしも利益を意味しない

押さえておきたい分配金の知識の2つ目は、「分配金が必ずしも利益を意味するわけではない」です。

投資信託では、株式などを売買したり、配当金などを受け取って得た利益が、分配金の原資になります。分配金はその一部が支払われたものなのですが、分配原資の範囲内でしか分配金は支払えない決まりになっています。

とはいえ、分配原資は、相場が下落して基準価額が下がったからといって減るものではなく、また、すべてを一度に払い出す必要もありません。そのため、仮に500円の分配原資があれば、基準価額が下がっていても今期に100円、来期に100円、その次の期にも100円といった具合で分配することも可能です。

前期決算日の基準価額が10,500円、分配原資が500円。配当金を受け取るも基準価額が下落したため、当期決算日分配前の基準価額が10,400円。そこから配当等収益20円に加え、分配原資のうち80円を取り崩して分配金を100円支払う。その結果、当期決算日分配後の基準価額は10,300円、分配原資は420円に。

基準価額の下落時における分配金支払いのイメージ

分配金が定期的に振り込まれていると、「運用が順調」「利益が出ている」と思いがちです。ただ、分配方針が、「安定的に分配金を支払うことを目指す」というようなものであった場合などには、分配金が支払われたとしても、利益が出ているとは限らないという点は、押さえておく必要があります。

分配金は、課税対象になる場合もある

押さえておきたい分配金の知識の3つ目は、「分配金に課税される場合がある」です。

まず大前提として、投資信託に限らず、金融商品全般にいえるのは、利益に対して税金がかかるということ。そのため、購入した時よりも基準価額が上がっている投資信託を売却したときは、利益に対して課税されます。そして、これと同様に、分配金が利益に相当する場合には、分配金も課税の対象になります

分配金を受け取ったり、運用している途中で利益に課税されてしまうと、「運用益が、将来の運用益を生む」という複利的な効果を損なうことにつながります。そしてこれが、資産を増やすことを目指す人たちから、分配型ファンドが敬遠される大きな理由になっています。

ちなみに、販売会社によっては、投資信託の購入時に、分配金を自動的に再投資する「分配金再投資コース」を選べる場合があります。一見すると、分配金を受け取らない場合と同じ経済効果が期待できそうですが、「分配金を受け取ってから再投資する」というものなので、分配金再投資コースを選択していても分配金が課税対象になる場合があるので注意が必要です。

分配金の支払いがない場合は、投資信託を売却するまで課税されないため、運用益が積み上がりやすい。分配金を再投資する場合は、分配金に課税された後に再び運用に回される。分配金を受け取る場合は、分配金を受け取れるが資産は増えづらい。

基準価額と分配金の関係のイメージ

新NISAで広がりそうな分配型ファンドの使い方

「分配型ファンドは、資産成長を目指す人には不向き」というのは、投資信託を使う人にとっての一つの常識のようになっていると思います。しかし、新NISAを使えば、これまで敬遠されがちだった「分配型ファンドを分配金再投資コースで」という利用方法が広がるかもしれません

  • 信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は、新NISAでの投資対象商品から除外されます。

既に述べたように、分配型ファンドを分配金再投資コースで使う時のデメリットは、分配金が課税対象になってしまうことです。税金として徴収された分は、運用に回せなくなり、運用効率が低下してしまうからです。しかし、NISA口座を使えば、分配金も非課税扱いとなるので、課税による運用効率の低下を回避することができます。

では、なぜ新NISAが変化のきっかけになるのでしょう。2023年までの旧NISAでも分配型ファンドは利用可能でした。ただ、年間投資枠が小さく、非課税保有期間も限られていたことから、「限られた期間で大きく増やすために、分配に消極的な投資信託を選ぼう」という人が多かったと思います。

しかし、こうした状況は、「年間投資枠の拡大」「非課税保有限度額の再利用が可能」「非課税保有期間が無期限」という新NISAでの制度変更で一変。「長期投資のスタンスで分配金を再投資に回しても、簡単には非課税投資枠は使い切れない」という状況が生まれました(詳しくは「NISAって何がいいんですか?」をご覧ください)。

「新NISAを使って分配型ファンドを分配金再投資コースで」という選択は、実質的には分配金を支払っていない投資信託を買うのと同じ経済効果が期待できます。年1回決算型のように分配金の支払いに消極的な投資信託以外でも、NISAを使うことで効率的に資産成長を目指すことが可能になったと言えそうです。

分配型ファンドの中でもインカム創出力に注目

分配型ファンドの中には、債券や高配当株式から得られる利息や配当金といった「インカムゲイン」に注目した戦略を採用している投資信託があります。その背景にあるのが、「比較的安定して得られるインカムゲインを分配原資に充てたい」という狙いです。

けれども、「分配金の受け取りを必要としない」「資産の成長を目指したい」という投資家であれば、NISA口座の中で分配金を再投資することによって、「インカム分も積極的に積み上げて、資産成長につなげていく」という選択肢が浮上してきます。

銀行や証券会社の取引画面上では、詳細な条件を設定して投資信託を絞り込むことができます。そのため、資産成長を目指す人の中には、「年1回や年2回の決算頻度以外の投資信託は選ばない」という方も多かったかもしれません。

たしかに、多くの商品から自分にあったものを選ぶのは大変です。とはいえ、「分配型ファンドはNG」という、これまでのイメージに引っ張られてしまった結果、選択肢を意図せず狭めてしまっていた、ということは十分に起こり得ます。

長く続ける資産運用だからこそ大切にしたい「何を買うか」の選択で、理想の一本を見落とさないようするためにも、これを機に分配型ファンドとの付き合い方もアップデートしてみてはいかがでしょう。

加集 勇夫

日興アセットマネジメント



当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。


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