中小型株投資って何がいいんですか?
加集 勇夫
日興アセットマネジメント
結論
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中小型株の魅力は、成長性と株価上昇力
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チャンスの裏にある中小型株のリスクへの理解は欠かせない
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投資信託なら中小型株投資のハードルを乗り越えやすい
目次
新NISAが始まってからも人気なのが、S&P500指数や全世界株指数(オール・カントリー)のインデックスファンド。そうした王道の選択肢の一方で、「大化けするかもしれない中小型株」に注目する投資家もいます。この記事では、そんな中小型株の魅力と付き合い方をご紹介させていただきます。
大・中・小は時価総額で分類される
中小型株とは、「企業の価値や規模を表す指標である時価総額(株価×発行済み株式数)が中・小規模の株式」のこと。言葉から「中小企業」をイメージする人もいるかもしれませんが、上場企業を対象とした呼び方なので相応の事業規模を有しています。そのため、地域に根差した金融機関やニッチな分野に強みを持つメーカー、新しい事業領域を切り開こうとする新興企業などがその一例として挙げられます。
具体的に「時価総額が●●億円以上は中小型株」といった絶対的な基準はありません。また、米国の株式市場で中型株と見なされる時価総額が、別の国の大型株と同じくらいだったということもあります。
そのため、「大型」「中型」「小型」は、その国や市場における各企業の時価総額の相対的な大きさによって分類されるとイメージするといいでしょう。では、時価総額の大小で分類される株式の中でも注目されることの多い「中小型株の魅力」はどこにあるのでしょうか。
中小型株の魅力①「成長力への期待」
雑誌などの株式投資の特集記事でも見かけることの多い中小型株。その魅力は、大型株を上回る高い成長によって、株価が大きく上昇していくという期待感にあります。
大型株の企業に比べると、中小型株の企業の資金力や人員には限りがあることがほとんどです。自ずと出店地域や商品、サービスは絞り込まれ、幅広い事業を展開することも難しいため、特定のビジネスの成否が、会社全体の業績に与えるインパクトも大きくなりがちです。
ただ、ユニークな商品・サービスを武器に市場シェアを拡大したり、市場自体を拡大したりできれば、売上や利益の大幅増につながります。その事業への依存度が高く、事業規模が小さいからこそ、一発当てたときの成長率や爆発力は大きく、それが株価の飛躍にもつながるという理屈です。
中小型株の魅力②「割安に放置されがち」
市場からの注目度が高い銘柄の場合、業績や商品・サービスについてのニュース、事業構造の変化に対しては投資家も敏感に反応します。そして、日経平均株価やS&P500指数などの構成上位に名を連ねる、時価総額の大きな大型株がその代表格です。
そうした企業は、証券会社のアナリストや新聞などのメディアが常に追いかけているので、投資家の眼に触れる機会も多くなります。一方で、中小型株の場合は、アナリストなどがカバーしていない銘柄も多く、メディアでの扱いも小さくなりがちです。
そのため、「実は隠れた好調・好業績企業なのに、株価がそれを反映できていない」ということが、中小型株ほど起こりやすいということがいえます。そして、大型株を中心に構成されている株価指数のインデックスファンドを選ぶ投資家が増えていることも、こうした動きに拍車をかけているかもしれません。
だからこそ、いずれ適正に評価されれば、株価が大きく上昇する「お宝銘柄」を見つけてワクワクできることも、中小型株の魅力の一つといえます。
中小型株の魅力③「大型株と違う値動き」
まず大型株の中には、ターゲットにする市場の規模が大きく、グローバル企業と呼ばれるものが多いといえます。規模の大きな市場を主戦場とし、売上や利益をあげてきたことが評価され、巨大な時価総額につながっているのです。
一方の中小型株は、ターゲットにする市場の規模が相対的に小さくなります。潜在的な成長力を秘めた市場であるという場合もありますが、足元では、「九州で圧倒的知名度!」「主力製品の市場シェアは80%!」「日本のZ世代に人気!」のようなキーワードの方がしっくりくる、どちらかというとローカル企業が目立ってきます。
国や地域、業種、提供する商品・サービスが違ってくれば、株価を動かす要因も違ってきます。そして、先に挙げた2点の「株価上昇のポテンシャル」に加えて、こうした大型株との様々な違いによって株価の動き方に違いが生まれるというのが、3つ目の中小型株の魅力になります。
もちろん、経済環境などによっては、大型株と中小型株の動きが同じになることもあります。それでも、「大型株優位の相場」や「中小型株優位の相場」といった見出しが、新聞紙面で目にすることもあるくらい、動き方に違いがあることを押さえておいて損はないと思います。
リターンの裏にあるリスクを知る
ここまで、中小型株の3つの魅力をご紹介しました。その中でも、株価が大きく上昇して、大型株以上のリターンを期待できるというのが、多くの投資家を惹きつけていると思います。
こうした点に魅力を感じて、中小型株への投資をスタートするのもいいですが、魅力の裏側にあるリスクにもしっかり目を向ける必要があります。
すなわち、
● 事業を集中することで大きく成長する可能性がある一方で、失敗した場合の影響が深刻になりやすい
● 割安で魅力的な株価にある一方、誰にも気付かれないまま時間が過ぎていく可能性がある
● 大型株と違う動きをするということは、大型株優位の相場では劣後する可能性があり、流動性の低さから株価変動も大型株に比べて大きくなりがち
ということです。
自らの選別眼に基づいて個別株に投資をすれば、大化け株やテンバガー(10倍株)といわれるような、急激な株価上昇を遂げる銘柄に出会えるチャンスもあります。そうした個別株投資は、とても夢のある戦略ですが、決算書や会社四季報を読み込める玄人向けの方法といえます。
そのため、中小型株への投資がより手軽にできる手段としては、中小型株に投資する投資信託、いわゆる中小型株ファンドがお勧めです。
扱いやすいのは中小型株ファンド
マイナーな銘柄が多い中小型株への投資の最大の障壁ともいえるのは、有望な銘柄の発掘と選定です。しかし、中小型株ファンドなら、投資家は個々の銘柄を選ぶというこの手間を省いて、中小型株への投資を手軽に実現できます。
大別すると、投資信託はアクティブファンドとインデックスファンドに分かれます。まずはどちらを選ぶことになる訳ですが、調査・分析を経て銘柄数を絞り込んでいる点を考慮すると、アクティブファンドの方がより個別株投資に近く、インデックスファンドは中小型株市場全体を捉えられるといったイメージを持つといいと思います。
中小型株への投資は、リスクが高くなりやすいので、1銘柄ではなく複数銘柄に投資する「銘柄分散」が重要になります。また、銘柄をどのタイミングで売買するかといったことも大切です。投資信託であれば、そうしたこともあまり気にしなくてよくなるメリットもあります。
中小型株への投資には、ポートフォリオに「成長エンジンをプラスする」という視点と、大型株以外にも投資対象を広げることのできる「サイズの分散」という視点があります。
S&P500指数や全世界株指数(オール・カントリー)、日経平均株価といった、大型株中心の株価指数と連動するインデックスファンドが主流となっています。だからこそ、中小型株への投資を取り入れることの価値が高まっているのではないかと思います。
加集 勇夫
日興アセットマネジメント