第十二話 投資信託は「口数」だから難しいんだよね
今福 啓之
日興アセットマネジメント
ポイント
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投資信託は投資金額を基準価額で割った結果としての「口数」で購入することになる
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変わらない口数と毎日変わる基準価額の掛け算がその日の投資信託の時価評価となる
では少し照れるが早速始めますか。投資信託(投信)の仕事で32年目の僕が、父親の最後のアドバイスとして結婚した娘とその夫2人にこんな話ができるのは、まぁありがたいことだよね。
投資信託は「口数」で買う
投資信託の基礎知識の話が続いちゃったけど、それはそれで飽きてきたかな。
でももう少しだけしておきたい話があるんだ。「投信は口数(くちすう)を介して考えますよ」っていう基本的、かつ大事な話をします。
まずは結論から。例えば100万円で基準価額10,000円の投信を買ったら、君たちは「100万口」を取得することになる。
「100万口」を「取得」なんて言われると急に難しく感じるよね、きっと。はい、こういう計算です。
「購入金額」100万円を、買う投信の「基準価額」で割り、最後に10,000を掛けて出た答えが、100万円でゲットした口数、今回の購入による「取得口数」だってことだね。
最後に10,000を掛けたのは、元々基準価額というのが「1万口当たり」で表示する慣習になっているせいなんだよね。
基準価額の計算は、投信の資産の時価と保有者の全口数との割り算だったよね。その割り算の答えは当然「1口当たり」の投信の価値なわけだけど、それに慣習的に10,000を掛けて「1万口当たり基準価額」っていう表示をしてきた歴史があるのよ。
なので、今日のお題の「口数」を計算する際にも最後に10,000を掛けないといけないわけ。
あ、「ちょっと何言ってるかワカラナイ」って顔になったな。別にいいや、テクニカルな話であって本質ではないから。
変わらない投資信託の口数と、日々変わる基準価額
さっきは基準価額が10,000円だったので取得口数は100万口だったけど、同じ100万円でも、もし5,000円の投信を買ったのなら100万円÷5,000円×10,000で200万口を取得することになる。
もし基準価額12,500円の投信なら100万円÷12,500×10,000だから、取得口数は80万口ってことだよね。
もちろん取引金融機関のウェブサイトやアプリを見ればこの口数は載っているので、自分で計算する必要はないよ。
でも載っている数字の意味を知っているかどうかはすごく大事で、ずっと役に立つ知識だと思う。だからもう少し辛抱して聞いといて。
さて、買う金額とその投信の基準価額との割り算によって取得口数が決まるということだけど、この口数は、今後君たちが投信を一部売却したり、同じ投信を買い増ししたりしない限り変わりません。
厳密には「分配金の再投資」ってヤツが行なわれた時には口数が増えるんだけど、今日それを話すと混乱すると思うのでやめとくわ。
ところで今言った「一部売却」って少し専門用語っぽいね。
投信って、買った後は自分で売るまで持っていられるわけよ。定期預金みたいな「満期」はないのが普通なので、ずっと持っていればいいわけ。
それでも多くの場合は1万円とかから部分的に売ることができるの。これを一部売却とか部分解約とか言う。
ちょっと話がそれるけど、毎月の積立以外の投信の買い方について、大金で一度にドンと買って、売る時もエイヤ!と一度で全部売るしかないと思っている人が多いんだよね。
全然そんなことなくて、100万円のまとまったお金で投信を買いたいと思ったとしたら、50万円ずつ日を2回に分けて買ってもいいし、売る時も必要な金額分だけを売ればいいんだよ。
個別の株式の場合は、銘柄ごとに決まった最低株数単位でしか売買できないので不自由なんだけど、投信は何たって「口数」を介して売買する仕組みだからね。
そして、この基本「変わらない口数」に、「日々変わる基準価額」を掛け算したのが、君たちが持っている投信の時価評価ってことになる。ここ大事。
さっきは買う時の基準価額によって取得口数が100万口だったり200万口だったりしたじゃない。
でもその口数の多い少ないは実はどうでも良くって、大事なのは「買った後にその基準価額がいかに上がってくれるか」だけなんだよね。
買った後に、「しばらく忘れてたけど、この投信の基準価額は今いくらかしら。私の投信はいくらになってるかしら」と思った時、もし基準価額が12,000円なら、保有口数に12,000円を掛けてやれば時価が出るわけだ。
100万円で基準価額10,000円の投信を買って取得口数が100万口だったケースなら、100万口×12,000円÷10,000の120万円が時価評価ってことになる。
こんな風にして、保有投信の口数は、基準価額を掛けて時価を出すために使われる。
「変わらない口数」に「日々変わる基準価額」を掛け算することによって、君たちの保有投信の時価は計算される。
投資信託の積立における口数
「取得する口数の多い少ないに損得はない」って話をしてきたわけだけど、投信積立における口数について、少し補足をしておくね。
僕自身の若い頃からの20年以上の積立の実際の話をしたよね。あの時にも実は口数の話をしたんだけど覚えてるかな。
積立をしている投信の基準価額がどんどん下がったんだけど、僕は構わず毎月の積立をやめなかった。そのおかげで最終的に大きなリターンを得たよ、っていう自慢話だったよね。
そうなった理由が、口数を効率的に溜め込んでいたことにあるよって話だった。
今日話したのと同じように、毎月の積立で取得する口数も「購入金額÷基準価額」で決まるんだよ。
毎月5万円の積立なら、毎月、毎月「5万円÷その時の基準価額」の計算結果としての「取得口数」をゲットしていくわけ。
それが毎月累積的に積みあがっていく。だから積立をしている間は、毎月口数は増え続けていく。一部売却をしない限り減ることはない、ってことだね。
もし先月よりも今月の基準価額が安いなら、割り算結果である今月の取得口数は、先月よりも多いわけだ。来月もまた下がっているなら、さらに今月より来月の取得口数は多くなる。僕はそんな風にして、結果的に口数をスピーディに増やしていた。そうそうこんな風に。
その効果が、のちに基準価額の上昇期にブーストして、ターボがかかって「ワッ」と花開くことに繋がったわけ。
だから、積立においては「下がることは嬉しいことだ」「今は口数を効果的に増やしているんだ。溜め込んでいるんだ。上がるのはたっぷり口数が溜まったあとでいいんだ」って思って続けてほしいんだよね。
前にも話したことの繰り返しで悪いけど、口数絡みで思い出しちゃったので一応ね。
今福 啓之
日興アセットマネジメント