S&P500のうち25年間(!)連続増配中の企業だけの指数に連動。
必然的に安定的な優良株が多くなる傾向のこの指数は、IT銘柄の比重が高いS&P500の組み合わせ相手として絶妙な
こんなの欲しかった。
配当貴族??―― 変な名前だと思いますよね?
でもこれは、れっきとしたS&P社の指数「Dividend Aristocrats」の正式な日本語訳。ではいったい何が“貴族的”だというのでしょう?
それはつまり、S&P500構成銘柄の中から、皆が“尊敬”したくなるような「優良株」を絞り込んだ指数ということ。絞り込むフィルターは「25年以上連続で年間の配当金を増額している企業かどうか」です。
企業は決算時に株主に配当の支払いを検討しますが、それを欠かさず払うだけでなく、毎年増額する(増配する)というのは簡単なことではありません。実際、約500社で構成されるS&P500指数の中でも、その条件を満たす銘柄は66*しかなく、それら銘柄を均等割合で平均化した指数が「S&P500配当貴族指数」なのです。
構成銘柄の配当利回りを平均してみると、その配当水準自体も相対的に高いことがわかります。
配当利回りの水準
(2024年6月末現在)
❶ |
安定収益が期待できる堅実な銘柄群 |
ここ数年のS&P500指数は、アップルやアマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)といった巨大IT企業が構成銘柄の上位を占めています。それらの中には資金を配当の支払いではなく、事業の成長投資に充てるという企業もあり、大きな成長に期待が集まる反面、株価の変動率も大きくなる傾向があります。
一方で、S&P500配当貴族指数に採用される企業は、以下のような共通項を持っていると考えられます。
- 他社に対する参入障壁を背景にした事業の安定性を持つ企業
- 安定的な増配ができる、成熟したビジネスモデルを持つ企業
- 配当を中心とした株主還元を重視する経営体制を持つ企業
実際、時価総額の大きな10銘柄だけを見ても、その顔ぶれはS&P500指数の上位銘柄と大きく異なり、IT関連ではなく医薬品などのヘルスケアや、日々の生活で身近な小売や生活必需品関連の企業が並んでいます。
株価指数の時価総額上位10銘柄
(2024年6月末現在)
S&P500配当貴族指数 | |
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1 | ウォルマート (生活必需品) |
2 | エクソン・モービル (エネルギー) |
3 | プロクター・アンド・ギャンブル (生活必需品) |
4 | ジョンソン・エンド・ジョンソン (ヘルスケア) |
5 | アッヴィ (ヘルスケア) |
6 | シェブロン (エネルギー) |
7 | コカ・コーラ (生活必需品) |
8 | ペプシコ (生活必需品) |
9 | リンデ (素材) |
10 | マクドナルド (一般消費財・サービス) |
S&P500指数 | |
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1 | マイクロソフト (情報技術) |
2 | アップル (情報技術) |
3 | エヌビディア (情報技術) |
4 | アマゾン・ドット・コム (一般消費財・サービス) |
5 | メタ・プラットフォームズ (コミュニケーション・サービス) |
6 | アルファベット(クラスA) (コミュニケーション・サービス) |
7 | アルファベット(クラスC) (コミュニケーション・サービス) |
8 | バークシャー・ハサウェイ (金融) |
9 | イーライリリー (ヘルスケア) |
10 | ブロードコム (情報技術) |
❷ |
市場悪化時に下げに強い傾向を持つ銘柄群。 |
25年以上も毎年増配している優良株を、均等配分で計算するS&P500配当貴族指数。その構成企業が持つ特性は、インデックスの値動きの特徴としても現れています。
S&P500配当貴族指数とS&P500指数の年次騰落率
(米ドルベース)
S&P500配当貴族指数とS&P500指数の年間騰落率の推移から読み取るべき、極めて重要な点が2つあります。
- S&P500指数が下落した年は、配当貴族指数はS&P500指数より下がっていない。または逆に上がっている。
- S&P500指数が上がっている年は、(S&P500指数よりも劣る年もあるが)配当貴族指数も同じ程度に上がっていることが多い。
短期の値動きだけで指数の特性を見るべきではありませんが、下落基調となった2022年の米国市場の主要指数を比較してみても、S&P500配当貴族指数の「下落耐性」の強さを確認することができます。
2022年の主要株価指数の推移
(米ドルベース)
こうした「下落がより小さく、上昇は同程度だった」という性質によって、過去20年超の運用成果はS&P500配当貴族指数がS&P500指数を大きく上回りましたが、もちろん今後の「優劣」はわかりません。
時価総額の大きなIT関連銘柄がマーケットをリードする展開になればS&P500指数が優位かもしれませんし、安定収益や事業の堅実性が重視される局面になればS&P500配当貴族指数が優位になりそうです。
S&P500指数だけでいくのか、あるいは同じS&P500指数の構成銘柄から絞り込みをしたS&P500配当貴族指数も上手に組み合わせるのか――。一度は検討してみたいアイデアです。
当ファンドのベンチマークの推移
❸ |
S&P500とのあわせ持ちを検討したいインデックス。 |
S&P500指数のインデックスファンドをNISAのつみたて投資枠で購入している方が、成長投資枠で「上乗せ積立」をしようとする際、ファンド選びで悩むケースが多いと聞きます。
例え、全世界株式(オール・カントリー)のインデックスファンドを選んだとしても、指数の上位銘柄は時価総額の大きな米国の巨大IT銘柄が占めるS&P500指数と似通っており、最適な「分散相手」「補完関係」ではない可能性があるからです。
したがって、S&P500指数との分散を考えるなら、全世界や新興国といった「地域の拡大」ではなく、S&P500配当貴族指数を用いて、同じ「銘柄プール」から特徴ある銘柄をピックアップして「銘柄特性の分散」を図るという考え方は検討に値するかもしれません。
指数算出方法のイメージ