本稿は2024年2月19日発行の英語レポート「Harnessing Change」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

中国市場の苦戦が続くなか1月のアジア株式市場は総じて下落


サマリー

  • インド市場は引き続き魅力的である。企業収益の成長はアジア地域で最も高水準にあり、バリュエーションは過去のレンジの中央近辺で推移しているほか、経済成長は好調でインフレは抑制されている。
  • 世界の2大経済大国の株式市場は、引き続き明暗が分かれている。米国株式市場は、テクノロジー銘柄が牽引役となり、また良好な経済環境を受けて上昇傾向を辿っている。一方、中国株式市場は、長引く不動産不況、小出し状態の政策対応、産業に対する規制強化の継続が下押し要因となり、下落基調が続いている。しかし、カントリーリスクの影響を受けているとは言え、非常に魅力的な成長性を備える中国企業は依然として数多く存在する。
  • 当月のアジア株式市場(日本を除く)は、米ドル・ベースの月間リターンが -5.5%となった。米FRB(連邦準備制度理事会)はFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を据え置く一方、利下げの必要性が差し迫ってはいないとみられることを示唆して、3月の利下げ期待に冷水を浴びせた。中国政府は景気刺激の取り組みを続けたものの、引き続き中国市場がアジア市場のパフォーマンスの足枷となった。
  • 国別では、インド(米ドル・ベースの月間市場リターンが2.4%)やフィリピン(同1.0%)が上昇する一方、アジア地域のその他の市場は下落し、特に、中国(同-10.6%)や韓国(同-10.0%)、香港(同-9.7%)のパフォーマンスが劣後した。

市場環境

1月のアジア株式市場は総じて下落
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、2ヵ月連続で上昇(11月から12にかけて10%上昇)してきた流れが途切れて概して下落し、米ドル・ベースの月間リターンが-5.5%となった。FRBはFF金利の誘導目標を据え置く一方、利下げの必要性が差し迫ってはいないとみられることを示唆し、3月に利下げが行われるのではとの市場の期待に冷水を浴びせた。アジア市場のパフォーマンスの足枷となったのは、引き続き中国市場であった。中国政府は市場心理を押し上げるべく幾つかの措置を講じたものの、同国市場は大きく売り込まれた。

引き続き下落圧力に晒されている中国株式
北アジアでは、中国および香港株式が大幅に下落し、月間リターン(米ドル・ベース、以下同様)がそれぞれ-10.6%、 -9.7%となった。中国恒大集団(China Evergrande Group)が香港の裁判所から清算を命じられるなど、苦境にあえぐ中国不動産セクターへの懸念が引き続き重石となった。恒大の清算が進むなか、投資家のあいだでは当局がオフショアとオンショアのステークホルダーの間にどのような線引きをするのかに注目が集まるだろう。その他、政策当局は銀行の預金準備率を0.50%引き下げるなど、低迷する中国株式市場を支援するための強力な措置に踏み切った。とは言え、全般的な経済見通しは依然としてまだら模様であり、1月の製造業活動は4ヵ月連続で縮小して、世界第2の経済大国である中国ではデフレ圧力が強まっている。

韓国株式の月間リターンは-10.0%となった。指数構成比率の高いSamsung Electronicsの第4四半期営業利益が前年同期比35%減となり、株価が低迷したことが重石となった。その他、韓国の中央銀行は政策金利を3.50%に据え置いたほか、韓国の第4四半期のGDP成長率は前期比0.6%増となり、市場予想を上回った。台湾(月間市場リターンは-1.2%)では、民進党が総統選で3連勝したことを受けて、中国との緊張が高まるのではないかとの懸念が投資家のあいだで強まった。台湾の1月の消費者信頼感は2年ぶりの高水準を記録し、また第4四半期のGDP成長率(速報値)は市場予想を上回った。

アセアン市場はまちまち
アセアン域内では、フィリピン市場(月間リターンは+1.0%)が最も良好なパフォーマンスをみせた。フィリピンの第4四半期のGDP成長率は前年同期比5.6%増と市場予想を上回り、2023年通年のGDP成長率は5.6%増となった。一方、タイ(同-7.9%)は2024年のGDP成長率予測を2.8%増へと引き下げ、従来予測の3.2%増から大幅に下方修正した。マレーシア(同-0.3%)は、2023年の輸出額が前年比8%減となったことなどにより、同年の経済成長率が3.8%増に減速する見込みとなっている。また、マレーシアの中央銀行は主要政策金利を3%に据え置いた。インドネシア(同-1.7%)の中央銀行も同様に、主要政策金利を3会合連続で6%に据え置いた。シンガポール(同 -4.4%)では、インフレが緩和するのは今年後半になると予想されるなか、MAS(シンガポール金融通貨庁)は3回連続で金融政策設定を据え置いた。

インドは最も良好なパフォーマンス
インド株式は最も良好なパフォーマンスをみせ、月間リターンが2.4%となった。インド政府は、民間および政府支出の増加により、今年度(2023年4月~2024年3月)の経済成長率が7.3%になるとの予想を示した。インドの中央銀行は、インフレ率が目標の4%前後にしっかりと落ち着かない限り、利下げはまだ検討しないと述べた。インドの小売インフレ率は、2023年11月の前年同月比5.55%から12月は同5.69%と4ヵ月ぶりの高水準に加速した。

今後の見通し

世界の2大経済大国の株式市場は明暗が分かれる

世界の2大経済大国の株式市場は引き続き明暗が分かれている。米国株式市場は、テクノロジー銘柄がけん引役となり、また良好な経済環境を受けて上昇傾向を辿っている。月末時点の米国債10年物利回りは3.9%となり、「ゴルディロックス(適温)・シナリオ」の維持が示唆されている。米ドル指数(DXY)は1.9%上昇して、前月の下落分を概ね回復した。米国経済は底堅さを保っており、インフレは鈍化傾向を辿った。

一方、中国は正反対とも言える状況にある。中国株式市場は、長引く不動産不況、小出し状態の財政・金融政策対応、産業に対する規制強化の継続が下押し要因となっており、これらがいずれも投資家の信頼の欠如を招くなか、下落基調が続いている。明るい面に目を向けると、カントリーリスクの影響を受けてはいるものの、非常に魅力的な成長性を備える中国企業が多数存在する。対外的な面では、欧州とのあいだでEV(電気自動車)の貿易戦争が起こるリスクがある。中国は、EVと関連産業の大規模な製造基盤を構築しているが、国内市場はこれを吸収できるほど大きくはなく、また米国は関税の障壁を設けている。そのため、余剰分の多くを吸収するのに十分な大きさの市場は欧州だけであり、必然的に欧州の自動車産業に攻勢をかけることになる。当社では、この分野を引き続きモニタリングしていく方針だ。

好材料が豊富なインド
インド市場は引き続き魅力的である。企業収益の成長はアジア地域で最も高水準にあり、バリュエーションは過去のレンジの中央近辺で推移しているほか、経済成長は好調でインフレは抑制されている。過去5年間、与党のインド人民党政権は国内のインフラ整備に重点的に投資してきた。この先5年は、固定資産投資の恩恵がもたらされるとみている。インドは「ゴルディロックス・シナリオ」を謳歌しており、さらに政治環境も追い風となっている。これは政治が不安材料となりかねない米国とは異なる点だ。インド株式への海外からの投資は依然として低水準であり、今年は海外からの資金流入が拡大する可能性が高まっている。

年序盤のアセアン市場は軟調
アセアン市場は2023年に好調となったものの、今年は軟調な出だしとなった。収益成長率は相対的に低いものの、4.3%にのぼる配当利回りがそれを補っている。マレーシアやインドネシアでは、国内の開発に重点を置いた財政政策が積極的に展開されていることも市場心理を下支えするだろう。シンガポールは引き続き代表的な安全逃避先市場となっており、金融情勢の影響を受けやすい同国株式市場にとっては金利の低下が追い風になるとみられる。

米国やアジア新興国市場の他に、MSCIワールド(MXWO)が続伸してリターンが1.1%となるなど、グローバル市場全体が上昇基調を維持した。また、日本の株式市場は最高値の更新を続けている。中東情勢の緊迫化は今のところ市場全体ではあまり材料視されていないが、中東で軍事的エスカレーションが拡大するリスクが高まっていることを受けて、原油価格は6%上昇した。


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