4月19日、日本の株式市場では日経平均株価が今年に入り最大の下げ幅を記録し、2月9日以来、終値ベースで2ヵ月ぶりの安値をつけました。以下、下落した主な要因を整理し、当面の見通しについて、弊社チーフ・ストラテジスト神山直樹の見解をお伝えします。

3月に日経平均株価は史上最高値更新

日経平均株価は、東京証券取引所の企業統治改革や新NISA(少額投資非課税制度)を通じた資金流入への期待、円安、生成AI(人工知能)関連への投資の広がりなどから、今年3月に史上最高値を更新しました。しかし、4月に入ると、利益確定の売りなどが広がり、軟調に推移していました。

今回の下落は複合要因

今回の下落は、3つの主な要因が重なり、市場心理が悪化したためとみられます。

1)米国の利下げ観測後退

4月16日、インフレ収束を予想していたFRB(米連邦準備制度理事会)議長が討論会で、インフレ目標に戻る確信を得るには、予想以上に時間がかかりそうだと述べ、同18日には、ニューヨーク連銀の総裁が、今後のデータ次第で利上げもあり得るとの見解を示したことなどから、利下げ先送り観測が強まりました。

2)半導体需要見通しへの疑念

4月17日、大手半導体製造装置メーカーの決算発表で、24年1-3月期の受注が市場予想を下回ったことや、同18日には、半導体受託生産大手の四半期決算発表で、今年の世界の半導体市場の伸び率予測が下方修正されたことなどを受けて、関連銘柄に売りが広がりました。

3)中東情勢の緊迫化懸念

4月19日、“イスラエルがイランに反撃した”との報道があり、報復の連鎖やホルムズ海峡封鎖の可能性が高まった場合、原油が急騰し、インフレ再燃、世界景気の停滞につながるとの懸念が広がりました。

【図表】日経平均株価の推移(2023年末~2024年4月19日)/フィラデルフィア半導体株指数の推移(2023年末~2024年4月19日)
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
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日経平均株価が調整しても、クララは立つ

日経平均株価は、3月22日の過去最高値(終値ベース)40,888円から約1ヵ月で37,000円台まで下落し、調整局面を迎えたようです。3月の上昇時も今回の調整も市場心理の上下動を反映した動きであって、日本経済の大事な部分が変化したわけではありません。日本経済は、23年10-12月期からの設備投資の積極化や、24年の大幅なベースアップ回答などを背景に立ち上がっており(「日本経済(≒クララ)は立ち上がる」についてはKamiyama Reports「クララは立ちがるのか?(2024/2/28)」参照)、ぶれることなく改善しています。

今回の調整は、イスラエルとイランに関わる地政学リスクの高まり、原油価格上昇を背景とした米国でのインフレおよび高金利継続に伴う景気後退懸念、一部の半導体企業の決算と見通しの不調が主な要因です。これらは、いずれも市場参加者の心理的な反応に依存していると考えています。

地政学リスクについて、足元、確かに高まっており、外交的、人道的に大きな問題であることには間違いありません。しかし、経済への影響としては、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など主要な産油国を巻き込むものではないと考えています。また、株価下落と原油(WTI先物)価格上昇のタイミングはずれており、今後、原油の供給懸念などを注視する必要はありますが、株価調整の主な要因ではないと思います。FRBの政策金利高止まり懸念が強まり、4月に米長期金利(10年国債利回り)は上昇しましたが、こちらも日本株下落とのタイミングはずれています。米金利高止まりは、円安を通じて日本株の支援材料になります。半導体関連の株高は期待先行であり、一部関連企業の見通しの引き下げといった小さな材料でも、必要以上に市場心理がぶれてしまいます。これはKamiyama Reports「クララは立ちがるのか?(2024/2/28)」で予想したことの一部であり、文字通り調整が必要なタイミングと考えています。

今回の日経平均株価の調整は、日本経済の回復シナリオに修正が必要となって起きたものではなく、クララ(日本経済)がつまずいた(病弱な状態に戻った)とみる必要はありません。地政学リスクが想定の範囲内に収まり6月ごろに日米政策金利の行方が見定められれば、リバウンドから成長への動きが明確になるとみています。

【図表】ベースアップとCPIの推移(2017年度~2024年度)/日経平均株価とWTI先物、米長期金利の推移(2023年末~2024年4月19日)
  • (連合(日本労働組合総連合会)および総務省、日本銀行、信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
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