よく、投信や株式の「売り時はいつ?」「どうやって判断するの?」と聞かれます。「潤いのあるくらし」を目指すために長期投資するという考えから、市場の見通しや値上がりによって、売り時は決められないと思います。値上がりしたから売る?、でも他の商品も値上がりしているのでは?
「値上がりしたから売る」、でもすぐ買うなら同じ値段
「値上がりしたから売る」というのは、ご自身が過去に購入した価格と比較しているにすぎません。例えば、3,000万円で購入したマンションが4,000万円に値上がりしたとします。仮に売却して利益を得たとしても、広さや立地条件などが同じマンションを購入するには同じ金額の4,000万円が必要でしょう。であれば、住む家が無くなっては元も子もないので、売却は考えないでしょう。
今、毎年1%の金利と5年後に100万円の償還金の支払いが約束(権利)された債券を、90万円で購入したとします。ここでいう「値上がり」とは、(債券価格は償還まで変動しますので)例えば100円当たりの価格が90円から95円になることを指します。値上がりは、経済状況の変化など、さまざまな要因で起こりますが、ここでは脇に置いておきます。ともかく、5円高く売却して利益を得ることが可能になるのです。ただし、毎年1%の金利と償還時に100万円を受け取る権利も消滅します。もう一度同じ権利を持ちたいと思うならば、売却した時と同じ価格の95円で買うことになってしまうのです。投信や株式、リート(不動産投資信託)などでも同じことがいえます。
売る理由は、目的を達成したか、もっと良い商品を見つけた時
投資ってなんだ!?での投資の目的は、引退後の「潤いのあるくらし」を続けるためにお金を作ることなので、売る理由が「値上がりしたから」ではないと思います。引退時期が来て目的を達成したか、(それほど多くはありませんが)他にもっと良いと思う商品を見つけた時でしょう。
目的を達成して売却するとは、ご自身の人生のステージが変わった時です。例えば、資産形成世代(現役世代)から続けてきた株式資産への投資を、引退後のお金の取り崩しと人生100年時代に備える資産運用としてリートなどに切り替えるケースです。
他に良いと思う商品を見つける場合もあります。一般的に、類似商品は同じ価格帯になる事が多いですが、東京証券取引所がリート市場を開設した時のように、新しい商品が制度変更で登場するケースです。しかし、投資目的は変わらないのですから、目的に合った商品をじっくり選んでいただきたいと思います。
余裕資金があり、例えば、ロボット普及で社会が変化すると考え、関連する商品に投資した場合であれば、現実にロボット社会が来た時に商品としての当初の目的が達成されたことになるので、その時点で売却を検討すれば良いのです。少し値上がりしたから売ろう、ということではないと思います。次回は、余裕資金の運用について考えてみます。
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