2014年に開始されたNISA(少額投資非課税制度)は、運用益に対して基本的に税金がかからない制度です。2024年からは投資限度額や非課税保有期間が大幅に拡充され、より使いやすくなりました。投資家の投資目的や売買機会を変える趣旨ではありませんが、その活用法についてお伝えしたいと思います。

投資成果に税金がかからない、うれしい制度

 制度の詳細はNISAを知る:金融庁(fsa.go.jp)などで詳しく解説されていますので、ここでは省略しますが、NISAを活用することで、年間最大360万円まで投資した場合の運用益(売却益や配当・分配金、以下、リターン)が非課税になるのです。

 投資家にとってリターンに対する税金は、投資信託でいう投資先の調査・分析や配分比率の変更といった運用サービスの対価として支払う信託報酬と異なるもので、安ければ安いほど良いことは言うまでもありません。リターンへの課税の有無は、最終的な運用成果に影響します。

 NISAを活用せずに投資した場合、リターンに対する税率は20.315%(本書執筆時点)です。仮にリターンが3%であれば、税引後のリターンは約2.39%になってしまいます。NISAを活用すれば非課税になるので、リターンの3%がそのまま運用成果になるのです。逆に、税引後のリターンを3%にするには、約3.8%のリターンが必要となります。これは意外に大きいですね。

 こう考えると、毎年、投資する際に、できるだけNISA口座を使えば、その部分の投資で得たリターンへの税金がかからなくなります。この意味で、NISAは引退後の「潤いのあるくらし」で消費するためのお金をさらに増やすために投資するインセンティブと位置付けてよいでしょう。

NISA制度の概要
  • 金融庁HPの情報をもとに日興アセットマネジメント作成

一般・特定口座とNISA口座はどう使い分けたらいいの?

 NISA枠以上の投資をする方は、原則として、リターンが大きいと期待している商品ほど非課税となった際の効果が大きいので、NISA口座を優先的に利用するのが良いでしょう。例えば債券だけの投信よりも株式投信のほうがリスクが大きい分リターンの期待も大きいので、NISA枠は株式投信が優先するでしょう。投資対象が、長期の積立・分散投資に適しているとされる投資信託に限定されるつみたて投資枠と、上場株式と一定の条件を満たした投資信託などを対象とした成長投資枠は、それぞれ選択できる商品の条件がありますので、株式、リート、債券など、ご自身の資産全体のバランスが取れるよう、NISA対象商品以外への投資も含めて「組み合わせ」を考えることが必要です。

 投資金額が多い人も少ない人もおられますから、答えは一つではありませんが、あまり細かいことにとらわれないでください。まず投資の目的をしっかり持ち、その上で節税をどうするかを考えてください。