長期投資の観点から経済のトレンドを見るとき、需要を大切にします。特に、消費大国である米国の需要が重要で、供給面は短期的にサイクルとして調整されやくなります。

需要は、仕事があり収入があることから始まる

需要、というと難しく聞こえますが、簡単にいえば買い物をする力のことです。ここでは、米国経済に注目します。日本や欧州、中国などの輸出国からみた米国の買い物パワーは、とても重要になります。

買い物パワーは、「仕事があり収入がある」≒『雇用』が前提になる、ということが直感的にわかると思います。つまり、世界経済の成長トレンドは、買い物パワーの前提となる『雇用』の成長からスタートするわけです。

米国雇用統計の推移 2005年1月~2024年4月
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものであり、将来を予測するものではありません。

米国のリーマン・ショックとコロナ・ショックの違いは?

リーマン・ショックとコロナ・ショックにおける、米国の雇用情勢の変化の違いに注目してみます。

2008年に米国で起きたリーマン・ショックでは、失業者が2年もの長い期間増え続け、約870万人の雇用が失われました(上図、A)。そして、失われた雇用が元に戻るのに4年超もかかったのです(上図、B)。この頃のことを、長い期間かけて失われた雇用が元に戻っただけで拡大しなかったので、「失われた7年」とも呼ばれています。一方、2020年のコロナ・ショックでは、約2,200万人の雇用をたった2ヵ月で失ったのですが(上図、C)、職場のコロナ対応等で半数がすぐに職に戻り、行動制限の撤廃が早かったこともあり、2年超で雇用が元に戻ったのです(上図、D)。

神山流では、雇用回復までの期間が長かったリーマン・ショックからの回復をトレンドと分類しますが、期間が短かったコロナ・ショックはサイクルに分類します。

経済の供給は「トレンド」にならないの?

多くの場合、経済の供給はサイクルとして調整されると考えています。ここでいう経済の供給とは、主に企業が生産し流通させる量を指します。ハリケーン被害で石油の供給が止まる、といったことが典型的な供給ショックになります。この場合、製油・パイプラインが復旧すれば供給が再開されるので、サイクルに分類します。仮に大規模な戦争で石油供給が数年にわたりストップするなどとなれば、供給ショックからの立ち直りをトレンドとみなすことになるケースが(可能性は低いですが)あり得ます。また、雇用も労働の供給とみれば、人手不足などがショックになりますが、徐々に解消されていくので、サイクルに分類します。コロナ・ショックで一時的に港湾で積み下ろしをする作業者が大幅に不足し、行動制限解除で緩やかに解消された例が、これに当たります。