「神山流」経済の見方では、長期投資の観点から経済のトレンドを見るとき、需要を大切にします。米国の“雇用増→小売売上高増→輸入増”は、“輸出国の輸出増→世界経済の成長”につながっていきます。

米国人の買い物は世界からの輸入に依存

米国人の買い物パワーがなぜ輸入につながるのか、それは、米国内での製造が少なくなり、欧州や中国、メキシコ、カナダなどから輸入しているからです。

では、“日本は関係ないのか?”、というとそうではありません。例えば、高付加価値の部品や製造用の機械が日本から中国に輸出され、その部品や機械を使って生産された商品が「Made in China」として米国などに輸出されているからです。

ということは、「米中貿易摩擦」はトレンドに影響を与えるの?

今のところ、大きな影響は見当たりません。米国の輸入に占める中国の割合は、18.6%(米商務省、2020年)と大きいのですが、トランプ前政権以降、米中貿易摩擦や安全保障上の懸念などから低下傾向にあります。しかし、中国からの輸入が減っても、ベトナムなど他国からの輸入が増えており、全体の輸入は増加しているのです。このことから、米国人の買い物が輸入を通じて行われるトレンドは変わっていないといえます。また、コロナ禍対応の財政出動実施後に米国の輸入が増加していることからも、米国の買い物パワーの強さは変わっていないといえます。

時折、世界経済への中国の影響が増している、などと言われます。しかし実際は、中国の最終需要よりも部品や製造用機械の需要の方が主要国にとって大きいので、高性能で高付加価値の商品への最終需要、つまり米国など先進国の買い物パワーに依存していることに変わりはないのです。

米国輸入額推移(季節調整済)
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものであり、将来を予測するものではありません。

米ドルの動向は気にしなくていいの?

あまり気にしなくても良いでしょう。米国はどちらかといえば輸入国なので、米ドル安→輸出企業の収益向上→給与上昇・景気好転という関係は弱いです。米国経済が強くなる時は、小売売上高増と米国金利上昇・強い為替が同時に進むことが多く、米ドル高が原因で消費が改善したり悪化したりするという結果になりにくいです。輸出国の日本は、世界経済と米ドルが強い→輸出増→経済成長という順番になるので、為替動向に敏感になりやすいのです。世界経済の成長を考える時は、米国経済、特に消費動向をみて、次に世界経済への波及を知るために米国輸入をみることになります。