米国でのIPO、2021年に初の1,000件越え
米国では、2021年にIPOが1,007件、資金調達額にして3,158億米ドルと、件数及び金額の両面で前年の約2倍となり、過去最高を更新しました。
IPO増加の一因には、企業買収を目的とした“空箱”SPACの上場急増も
こうした活発なIPOを支えた背景として、年末まで最高値の更新を繰り返した米国株式相場の活況や、低金利を背景に株価バリュエーションが高まっていることのほかに、SPACの新規上場が600件超と、前年の2.4倍に増えたことが挙げられます。
自らは事業を営まず、未公開企業の買収などを目的とする“空箱”のようなSPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)は、調達資金を2年以内に他社の事業の買収などに使うことを原則として、株式を発行します。そして、有望な未公開企業などを見つけると、これを買収し、その買収先が存続企業、つまり、最終的な上場会社となります。
高い将来性が見込まれるビジネス・モデルや商品などを擁する未公開企業は、SPACに買収されることにより、IPOに伴なう手続きや時間を省き、より簡単に上場することができます。一方、投資家は、SPACの設立主体の中心が著名投資家やベンチャーキャピタルなどとなっていることから、有望な未公開企業などを発掘する目利き力に期待して、SPACに資金を投じているようです。
今後も有力企業のIPOが見込まれる一方、利上げも視野に入り、銘柄見極めが一層重要に
なお、2021年は、上場後にIPO銘柄の株価が失速するケースが目立ち、その平均パフォーマンスはマイナスになりました。この背景として、年終盤にかけて、米FRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングに動き始めたほか、インフレ率が高い水準で推移する中、2022年にも見込まれている利上げが前倒しされる可能性なども意識され、テクノロジー企業などを中心として、成長期待が高い分、予想PER(株価収益率)も高い銘柄が売られたことの影響が挙げられます。
2022年も、有力企業の新規上場が見込まれており、ヘルスケアやハイテク、消費関連などがIPOの主要セクターになるとみられています。こうした中、SPACの増加などを背景に、創業間もないような赤字企業が上場するケースも多いと見込まれます。IPOが高水準となれば、投資機会が拡がる反面、玉石混交の度合いが強まる可能性もあり、銘柄の見極めが一層重要となります。
- 上記データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。