中国の伝統文化やデザインを再評価し、国産ブランドを選好する「国潮(こくちょう)」と呼ばれるトレンドが、中国内外で改めて注目されています。この背景には、国産ブランドの品質やデザインの向上のほか、中国の若い世代は、親世代とは異なり、海外ブランドへの憧れが希薄で、自国文化への愛着が強い傾向があることなどが挙げられます。このような国潮の動きが、衣料品や食品からハイテク領域まで幅広い分野に拡がっています。
国潮トレンドを後押しする中長期的な政策
近年、打ち出されている政策も、こうしたトレンドを後押ししています。2021年8月、習近平国家主席は「共同富裕」の考え方を示しました。これは、所得分配を進め、貧富の格差縮小と社会全体の豊かさを引き上げることを狙いとするものであり、これにより、中国の中間層は現在の約4億人から中長期的に大きく増加するとの見方があります。また、2021-25年の中期経済目標「第14次5ヵ年計画」では、外需拡大を促進しつつも、個人消費の拡大や市場および企業の成長を柱とする、内需主導の発展をめざす「国内大循環」といった考え方が示されました。これら2つの政策は、中間層の増加などによって消費市場の拡大に寄与するものであり、それ故、中国の株式市場では内需関連銘柄が中長期的な投資テーマになると期待されます。実際に、最近の中国株式市場では、白酒の貴州茅台酒(グイチョウ・マオタイ)や電気自動車のBYD、スポーツ用品の安踏(アンタ)など、内需関連の有力銘柄に投資家の注目が集まる傾向がみられます。
内需関連株式のパフォーマンスは堅調
2020年末以降、中国では社会格差の是正などを目的に、様々な規制の強化が打ち出されました。これを受け、中国A株で構成されるCSI300指数の2021年の推移は、軟調となりました(グラフ①)。一方、共同富裕が提唱された2021年8月以降の消費・サービス関連株式には、持ち直しの動きがみられます。これは、共同富裕の推進により、市場で内需関連銘柄への成長期待が高まったため、と考えられます。
足元では、中国でもオミクロン株の感染拡大がみられるなど先行きに不透明感が増しています。しかし、中国当局は、2021年12月の中央経済工作会議で景気支援重視の姿勢を打ち出したほか、利下げの実施など、景気を下支えする施策を講じています。こうした中、中国本土市場への資金流入も2020年末以降継続しており(グラフ②)、海外投資家の中国株式市場への高い関心も伺えます。「共同富裕」、「国内大循環」などの政策は、中国の消費市場を中長期的に大きく拡大させる可能性があることから、内需関連企業に引き続き注目が集まりそうです。
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