高インフレが続く一因となっているサプライチェーンの混乱
コロナ禍は続いているものの、経済活動再開の動きが進む中、世界的にインフレ率が高止まりしていることもあり、米国をはじめとする主要国の中央銀行が、超緩和的な金融政策の正常化に動き出しています。ただし、インフレの主な背景の1つと指摘されてきた供給網上の問題、いわゆるサプライチェーンの混乱について、今後、状況が改善に向かう可能性があると、米ニューヨーク連邦準備銀行(以下、NY連銀)が年初に指摘しました。

サプライチェーンに関する新指標「GSCP指数」は混乱がピークを迎えた可能性を示唆
NY連銀は今回、世界のサプライチェーンの逼迫度合を示す新たな指標「GSCP(グローバル・サプライ・チェーン・プレッシャー)指数」を公表しました。同指数は、欧米アジア間の海上輸送や航空便などの輸送コストを捉えている各種指標のほか、主要国・地域の製造業購買担当者指数の構成要素の「納期」「受注残」「購入在庫」など、計27の指標を基に算出されています。なお、同指数の公表頻度は現時点では不定期とのことです。

下の左グラフに見られる通り、同指数は、東日本大震災が起きた翌月の11年4月に2近くに上振れしたほか、米中が関税の引き上げ合戦を繰り広げた2018年にも上昇し、1近くで推移しました。そして、新型コロナウイルスの感染が拡がり始めた20年春には4弱へと一段と大きく上振れした後、一旦落ち着いたものの、同年秋に再度、上昇に転じると、21年10月には4を上回りました。ただし、それをピークに、12月にかけては2ヵ月連続で僅かながらも低下しました。

NY連銀によると、経済活動の再開過程で大きく高まった輸送コストの伸びがここにきて鈍化し始めており、GSCP指数は歴史的な高水準にあるものの、ピークに達し、今後はサプライチェーンの混乱が和らいでいく可能性があるとのことです。

米生産者物価指数にもインフレ圧力緩和の兆し
また、米国の物価指標にも、インフレ圧力緩和の兆しが見られます。下の右グラフが示すように、21年12月の米生産者物価指数は前月比+0.2%と、11月の+1.0%から伸びが大きく鈍化しました。特に、モノの価格は▲0.4%と、20年4月以来の下落となりました。また、サービスの価格も+0.5%と、11月の+0.9%から伸びが鈍化しました。

サプライチェーンの混乱はインフレの一因に過ぎないほか、オミクロン株の感染拡大が続けば、サプライチェーンに影響がおよぶ可能性もあり、注意は怠れません。しかし、サプライチェーンの混乱の緩和→生産者物価の上昇鈍化→消費者物価の上昇鈍化という連鎖が起きることとなれば、米国の金融政策の正常化の前倒しを織り込む動きが進んできた市場では、長期金利の上昇が一服となるなど、安堵感が拡がると期待されます。

【図表】[左図]GSCP指数と米インフレ率の推移、[右図]米国の生産者物価指数(前月比)の推移
  • ニューヨーク連邦準備銀行や米労働省などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。