日本の新興株は晩秋以降、下げ足を速める
昨年11月下旬以降に拡がった、オミクロン株の感染拡大に対する過度の懸念は和らいだものの、米国の超緩和的な金融政策の正常化が前倒しされるとの見方が強まりつつあることなどから、足元で世界的に株価が軟調となっています。中でも、東証マザーズ指数やJASDAQインデックスに象徴される日本の新興株の場合、米主要株価指数が昨年末にかけて最高値の更新を繰り返した際ですら反発することなく、むしろ下げ足を速めた感があります。

米金融政策の変更観測以外にも重なった悪条件
新興株市場の東証マザーズおよびJASDAQの構成銘柄と日経平均株価の構成銘柄を比較すると、前者は事業面で国内市場への依存度が高く、後者には海外展開が進んでいる企業が多いという違いがあります。このため、米国などと比べてワクチン接種の開始が遅かった日本において、経済活動の再開や景気回復が米国などより遅れている影響に加え、オミクロン株の感染が今まさに拡がりつつあることへの懸念などが、日本の新興株の軟調振りに色濃く反映されているとみられます。

また、東証マザーズ、JASDAQの両市場では個人投資家による取引が多いということの影響も考えられます。つまり、相場の下げが続くと、個人投資家の投資余力が低下し、下げ局面で買いが入らないばかりか、信用取引での損失拡大に伴なって追証が発生し、投げ売りが相場の更なる下落につながるという悪循環が起きたとみられます。

さらに、昨年の日本ではIPO(新規株式公開)が活発で、特に12月単月では30社超えと、約30年ぶりのラッシュとなりました。これに伴ない、個人投資家の投資資金が分散されたり、IPO株取得に向けた既存保有株の換金売りなどにつながったことの影響も小さくなかったとみられます。

株価の下げが大きい分、悪材料の織り込みが進んでいる可能性も
一方で、下の右グラフに見られるとおり、東証マザーズ指数構成銘柄の場合、予想EPS(1株当たり利益)の改善が顕著です。今週から本格化する昨年10-12月期の決算発表などを通じて、こうした見通しが広く確認されることとなれば、株価の下げ止まりや持ち直しにつながると期待されます。

また、米金融政策の正常化前倒し観測の強まりなどに伴なう同国での金利上昇は、予想PER(株価収益率)などのバリュエーションが相対的に高い日本の新興株には厳しい環境ですが、足元の株価下落が大きくなっている分、織り込みも進んでいると考えられます。このため、高水準で推移している米インフレ率が落ち着き始めるなどし、同国の金融政策を巡る警戒感の後退や安堵感につながるような場合には、日本の新興株の回復が大きくなることも考えられます。

【図表】[左図]日本の主要株価指数の推移、[右図]主要株価指数ベースの予想EPSの推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。