IMF(国際通貨基金)は、1月25日に最新の経済見通しを発表しました。それによると、世界のGDP成長率は、2021年に前年比+5.9%と、1980年以降で最も高くなったと推定されているのに続き、22年は+4.4%とされています。これは、昨年10月の前回見通しから0.5ポイントの下方修正で、うち4割強が米国、4割弱が中国の見通しの引き下げに伴なうものです。また、23年の成長率は+3.8%に鈍化するとされているものの、11年~19年の平均成長率の+3.5%を上回る水準となっています。

22年の下方修正の主な背景を見ると、まず、米国については、バイデン政権が掲げる大型歳出法案「ビルド・バック・ベター法案」の成立見通しが立っていないことや、金融政策正常化の前倒しの動き、供給網上の問題の継続となっています。次に、中国については、ゼロコロナ政策に伴なう混乱や不動産業界の低迷の長期化が挙げられています。なお、中国での下方修正の影響が同国の貿易相手の見通しに及んでいるとのことです。また、供給網上の問題を主因としてドイツの下方修正が大きくなったことに加え、新型コロナウイルスの感染再拡大やエネルギー価格の高騰もあり、ユーロ圏の見通しが下方修正されました。さらに、ブラジルやメキシコでは、インフレ対応の金融引き締めの影響が内需に及ぶとされたほか、メキシコについては、米国の下方修正の影響が外需にも及ぶとされています。

また、IMFは、エネルギー価格の高騰に加え、供給網上の問題が予想以上に幅広いインフレにつながっているとして、22年のインフレ見通しを先進国で1.6ポイント、新興国で1.0ポイント上方修正し、それぞれ、3.9%、5.9%としました。ただし、需要がモノからサービスへと徐々に移ることに伴ない、需給バランスが改善に向かうほか、23年にはエネルギーや食品の価格上昇率が鈍化すると見込まれるなどとして、同年にはインフレが先進国で2.1%、新興国で4.7%に落ち着くと予測しています。

なお、IMFは、新型コロナウイルスについて、オミクロン株が22年1-3月期に成長の重しとなるものの、更なる移動制限を必要とするような新たな変異株が発生しない限り、悪影響は4-6月期以降、薄れ始めるとみています。さらに、供給網上の問題についても、22年後半には収まると想定しています。

一方、IMFはリスク要因として、新たな変異株の流行や米金融政策の正常化を巡る不透明感、供給網上の問題、高インフレ、中国の不動産業界の減速の深刻化に加え、ウクライナや台湾を念頭に、東欧や東アジアの地政学リスクを挙げています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率、%)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • (IMFのデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。