コロナ禍からの景気回復過程にある中、需給不均衡や原油高などから物価上昇が進み、主要中央銀行は利上げなどで金融政策の正常化を探っています。このような環境下、債券市場では金利が上昇し、株式市場ではグロース(成長)株中心に株価の下落基調が続いています。
高PER銘柄の割高感が意識されたと言うが
最近の米国株式市場について、金利上昇を受けて、ハイテク関連など高PER(株価収益率)のグロース株の割高感が意識され、相対的に大きく下落した、とされています。市場では、金利上昇が起きると、金利と株式益利回り(PERの逆数、1株当たり利益÷株価)との差が、PERが高いほど(分母の株価が大きいほど)拡がり、グロース株の投資魅力が低下した、と受け止められているようです。
しかし、金利上昇の主な要因が物価上昇とみられる中では、製品の値上げなどにより、企業の1株当たり利益(前述の分子)の成長が期待される場合、益利回りが上昇する可能性も考えられます。なお、米主要企業の2021年10-12月期決算では、前年同期比20%超の増益が見込まれています。
良いインフレによる金利上昇
モノやサービスの価格が上昇する状態を指すインフレには、良いインフレと悪いインフレがあります。前者は景気拡大に伴なうインフレで、後者は景気が良くないなかで価格が上昇するインフレです。
現時点の米国は、FRB(米連邦準備制度理事会)議長が述べているように、堅調な雇用情勢を背景とした需要増などによる価格(物価)上昇なので、良いインフレといえそうです。
良いインフレが起きた際、例えば、1年後に価格が上昇する前に、今のうちに少しでも安い価格で買いたい人が増え、資金需要が増える状態となる場合などに、一般的に金利が上昇し、企業業績の拡大が見込まれます。
金利上昇で株価が下落すると一概に言えない
また、良いインフレによる金利上昇の場合、企業の将来の売上げや利益も相応に高まることが見込まれます。本来、株価を決定する最大の要因は「企業収益」です。そのため、足元、相対的に大きく下落しているグロース株についても、いずれ市場で利益成長が確認されることになれば、正当に評価されると期待されます。
実際、2009年3月から2021年12月までの153ヵ月における日米それぞれの金利の変化と株価指数の騰落の関係を調べると、日米とも金利上昇時に7割以上の確率で株価が上昇し、グロース株でも下落した確率は3割以下という結果になりました。金利がほぼ横ばいの月を含んでいるとはいえ、過去の経験則からは、金利上昇で株価が下落すると一概に言えないようです。
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足元、米国で起きているインフレ圧力の高まりは、景気回復を背景とした良いインフレとみられることから、今後、稼ぐ力が強く、高い成長率が見込まれるグロース株への見直し買いが期待されます。
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