ロシアはウクライナの一部地域の独立を承認し、軍を派遣へ、欧米はロシアに対する制裁を導入
ロシアのプーチン大統領は2月21日、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域について、独立を承認した上で、現地の平和維持を目的にロシア軍を派遣することを決めました。これを受け、欧米がロシアに対する金融・経済制裁措置の導入に動くなど、ウクライナを巡る情勢の緊迫化を背景に、22、23日に米国株式などが売られた一方、原油や金の先物は買われました。なお、ウクライナ政府は24日、全土に非常事態宣言を発令しました。

ロシアにとり、ウクライナがNATOに加盟する事態は「越えててはならない一線」
ウクライナは、EU(欧州連合)諸国とロシアの間に位置し、かつてはソ連を構成した共和国でしたが、ソ連崩壊に伴ない、1991年に独立しました。人口は4,000万人を超え、国土面積もロシアを除く欧州で一番広いという、東欧の大国です。なお、ウクライナ人はロシア人と同じ東スラブ民族です。

ロシア系住民が多数を占めるウクライナ東部は、ロシアの勢力下にあった期間が長く、歴史的、経済的にロシアと強く結びついています。一方、かつてオーストリアなどの支配を受けたウクライナ西部や中部は、欧米との関係を重視する傾向があります。こうした背景から、同国では、親ロシア派と親欧米派が政権を競ってきましたが、2014年に親ロシア派政権が倒れると、ロシアは、ロシア系住民が多数を占め、戦略的な要衝でもあるウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合したほか、東部に侵攻しました。そして今回、ロシアが独立を承認したのは、この時から親ロシア派武装勢力が支配してきた地域にあたります。

ソ連崩壊後、かつての東側陣営の国々が相次いでNATO(北大西洋条約機構)に加盟したのに続き、ロシアによるクリミア半島併合を機に親欧米政権が続くこととなったウクライナも、NATO加盟を目指すようになりました。一方、NATOの拡大停止やロシア国境近くへの兵器配備の取り止めなどを求めているロシアは、安全保障上の理由に加え、ウクライナを「兄弟国家」として特別な存在と考えていることなどもあり、同国のNATO加盟は「越えてはならない最後の一線」と主張してきました。

ロシアの本格的な軍事侵攻につながる口実が揃わなければ、にらみ合いが続く可能性も
欧米の金融・経済制裁は今のところ、ロシアの国営銀行や政権幹部などに的を絞った限定的なもので、ロシアが直ぐに退く可能性は低いとみられます。このため、ウクライナ東部に派遣されるロシア軍とウクライナ軍との衝突などがきっかけとなり、いずれロシアが本格的な軍事侵攻に踏み切るような事態が懸念されます。一方で、そうした事態が回避されるようであれば、相手の出方を窺いながらの駆け引きが長引くことも考えられます。

【図表】[左図]ウクライナとその周辺の地図、[右図]主要国・地域のロシアに対する主な制裁
  • 報道をもとに日興アセットマネジメントが作成(2022年2月24日朝時点)