ロシアによるウクライナへの侵攻が続き、対ロ制裁が強化されるなか、3月7日にはニューヨーク金先物が1トロイオンス=1,995米ドルと、2020年8月以来、約1年半ぶりの高値で引けました。

金が選好され易い4つの主な局面
実物資産である金は、投資家がリスク回避に動く有事の際や、物価が高騰するインフレ局面で選好される傾向があります。また、利息が付かない金は、金利低下局面で相対的な魅力が高まるとされています。さらに、米ドル建てで取引される金は、米ドルの代替通貨として、米ドル安局面で買われる傾向があります。以上、金が選好され易い局面をまとめると、左下の①~④のようになります。

2000年以降、有事が金価格を大きく押し上げ
足元では、①の有事が金価格の上昇に大きく関係していると考えられます。なお、2000年以降の主な有事を振り返ると、2008年9月にはリーマン・ショックが起き、それをきっかけとした世界金融危機が2011年8月にかけての金価格の上昇を後押ししたとみられます。また、2020年には新型コロナウイルスの感染が拡大し、同年8月にニューヨーク金先物が過去最高値の2,069米ドルをつけました。

なお、足元では、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴なう対ロ制裁の影響もあり、原油や天然ガスといったエネルギーのほか、一部のレアメタルなどの価格高騰の可能性が懸念されている状況で、②のインフレへの警戒感も金価格上昇の背景になっていると考えられます。

神経質な市場展開が見込まれる中、活用したい金の分散投資効果
欧米を中心に、新型コロナウイルスの感染拡大が鈍化する中、行動制限の緩和・廃止の動きが拡がりつつあり、経済活動の再開進展が景気回復を促すと見込まれます。そうした一方で、インフレ率が高水準で推移し続けていることから、米国を中心に、緩和的な金融政策の正常化が加速するとの観測が拡がりがちとなっています。

ロシアとウクライナの停戦協議に進展が見られないことに加え、上述のとおり、米金融政策を巡る不透明感もあり、当面の金融市場では、神経質な展開が続くと見込まれ、株式などのリスク資産の価格が大きく振れる、ボラティリティ(価格変動性)の高い局面が想定されます。

そうした環境を踏まえて、改めて注目したいのが、分散手段としての「金」の役割です。金は、前述のような、有事における強みや米ドルとの関係に加え、宝飾品としての需要や、各国中央銀行による外貨準備目的での需要などもあり、株式や債券とは異なる値動きをする傾向にあり、金を含めた分散投資を行なうことにより、保有資産全体としてのリスクの低減が期待されます。

近年は、予期せぬ出来事で金融市場の変動が大きくなる局面が多く見られるようになっています。市場の変動と長期で上手に付き合うために、金を運用資産の一角に加える形で活用し、リスク低減を図ることを検討してみてはいかがでしょう。

【図表】[左図]金の主な注目点、[右図]主要資産の価格と米長期金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。