金融政策の正常化を急ごうとの姿勢が強まる
米FRB(連邦準備制度理事会)は、3月15・16日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨を4月6日に公表しました。その中で、利上げ幅の拡大や、保有資産の縮小によるQT(量的引き締め)、金融政策の迅速な中立化など、FRBが緩和的な金融政策の正常化を急ごうとの姿勢を強めていることが明らかになりました。

利上げ幅の拡大に言及したほか、QTを議論
3月のFOMCでは、多くの参加者が、次回5月以降の会合で、0.5ポイントの利上げを1回かそれ以上実施する可能性に言及しました。なお、3月の利上げ幅は0.25ポイントでしたが、これについても、ロシアのウクライナ侵攻がなければ、多くの参加者は0.5ポイントを支持していたとのことです。

QTについては、ひとまず月950億米ドルを上限とすることで概ね合意しました。これは、前回、資産縮小を行なった2017~19年のほぼ倍のペースです。また、利上げ開始からQT開始まで1年半強かけた前回に対し、今回は僅か2ヵ月後の5月にも開始するのが適切との見方で意見が一致したとのことです。なお、FRBは原則として、保有する国債などを市場で売却するのではなく、償還期限を迎えた債券の再投資を見送ることで資産を縮小します。約9兆米ドルへ膨れ上がった資産をどこまで縮小するのかは現時点で明示されていませんが、QTによっても、金利に上昇圧力がかかることになります。

政策金利は年内にも中立水準に?
また、インフレへの対応として、全ての参加者が、金融政策を迅速に中立に戻すべきとの見方を示したとのことです。参加者の見通し(左下、上段の表参照)によると、中立の目安の1つとされる政策金利の長期見通しは2.4%で、政策金利がこれを上回るのは23年とされています。ただし、今回の議事要旨公表の前日、ハト派とされてきたブレイナードFRB理事は、今年後半には金融政策がより中立的な位置に達し、その後、必要に応じてさらなる引き締めを行なうとの見方を示しました。さらに、タカ派で知られるブラード・セントルイス連銀総裁に至っては、今年後半に3~3.25%に引き上げるべきとの見解を7日に示しました。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、物価上昇に拍車がかかる中、FRBは対応が後手に回ることを警戒し、金融政策の正常化を急ごうとしています。ただし、利上げとQTとの二重の引き締めとなれば、市場への影響も大きくなるとみられます。市場では、景気後退の予兆とされる長短金利の逆転現象、いわゆる逆イールドが出現したこともあり、金融引き締めの行き過ぎによって、米景気が後退するのではとの懸念も聞かれます。それだけに、足元でインフレ抑制に向け険しいファイティングポーズをとらざるを得ないFRBも、今後のFOMCにおいては、その都度、物価や経済状況はもちろん、ウクライナ情勢などの不確実性も踏まえ、慎重かつ柔軟な舵取りを行なうと見込まれます。

【図表】[左図上]3月のFOMC参加者の見通し(中央値)単位:%、[左図下]2022年のFOMC開催予定、[右図]米国の物価上昇率と政策金利の推移
  • 上記は過去のものおよび予定、見通しであり、将来を約束するものではありません。