IMF(国際通貨基金)は、4月19日に最新の経済見通しを発表し、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴なう対ロシア制裁の影響を主な背景として、2022年の世界のGDP成長率を3.6%と、前回1月の見通しから0.8ポイント下方修正した一方、インフレ率を、先進国で5.7%、新興国で8.7%と、それぞれ、1.8ポイント、2.8ポイント上方修正しました。

また、2023年については、GDP成長率は前年から横ばいの3.6%と、0.2ポイント下方修正した一方、インフレ率は先進国で2.5%、新興国で6.5%と、前年から大きく鈍化する見通しながら、それぞれ、0.4ポイント、1.8ポイント上方修正しました。

2022年の成長見通し下方修正の背景としては、ロシアのウクライナ侵攻と対ロシア制裁のほかに、中国での新型コロナウイルスの感染拡大に伴なうロックダウン(都市封鎖)や、高インフレを背景とした、米国をはじめとする多くの国での金融引き締めが挙げられています。

商品市況の上昇に伴ない、関連する輸出国の多くについては、成長見通しが引き上げられました。しかし、紛争当事国のロシアやウクライナを含め、成長見通しが下方修正となった国は143ヵ国、世界経済の86%にも達しており、資源等の輸出国での成長見通しの上方修正は、世界経済全体の下振れを相殺するには遠く及びません。なお、世界全体の成長見通しの下方修正に最も影響したのはロシアで、これに、同国と経済的結びつきが深いEU(欧州連合)が続きます。

今回の見通し(基本シナリオ)では、ウクライナでの紛争が拡がらず、対ロシア制裁が3月までに発表された以上に強化されないことを前提としています。このため、IMFでは、リスク要因として、紛争拡大や制裁強化を挙げているほか、中国経済の予想以上の減速、新型コロナウイルスの強力な変異株の出現、インフレの長期化に伴なう利上げの加速などにも注意が必要としています。

そして、IMFは、原油や天然ガスの禁輸、世界の金融・貿易システムからの排除といった対ロシア制裁が今年半ばに強化されると仮定したシナリオも紹介しています。それによると、商品市況の更なる上昇、供給網の混乱、世界の金融環境の引き締まりなどが起き、2023年のGDP成長率が、EUで基本シナリオの見通しを3ポイント下回り、世界全体でも約2ポイント下振れするとしています。また、世界のインフレ率は、2022、23年にそれぞれ1ポイント以上上振れすると想定されています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率、%)、[右図]先進国、新興国のGDP規模の推移
  • (出所:IMF「World Economic Outlook, April 2022」)
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。