2022年に入り、ブラジルレアルの見直し買いが進んでいます。ブラジルレアルは2020年春のコロナ・ショック時に大きく下落しましたが、足元で急速に上昇し、対円ではコロナ・ショック前の水準を回復しています。

ブラジルレアル好調の背景
ブラジルレアルの見直し買いが進んでいる背景の1つに、資源高が挙げられます。ブラジルは、鉄鉱石や石油、農産物など、様々な資源を輸出する資源大国であり、資源価格上昇の恩恵を受けやすい国と言えます。世界的な景気回復に伴なう資源需要の拡大に加え、足元では、ウクライナ情勢の緊迫化およびロシアに対する各国・地域の制裁措置を受け、資源価格は一段と上昇しています。こうした中、ブラジル経済の回復に対する期待感が高まっていると考えられます。

また、ブラジルが高金利政策をとっていることも、ブラジルレアル上昇の大きな要因となっています。今年3月の金融政策決定会合において、同国中央銀行は政策金利を1.0%ポイント引き上げ、11.75%とすることを決定しました。中銀は、今後もインフレ圧力の強まりが懸念されることから、5月の次回会合における引き締めの継続を示唆するなど、タカ派の姿勢を示しています。

さらに、同国の新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きつつあることも、投資家の安心感につながっていると考えられます。同国は世界の中でも累計感染者数が多く、新型コロナウイルスへの対策を巡って様々な混乱が生じていました。しかし、ワクチン接種が進んだことなどから新規感染者数は今年2月をピークに減少傾向に転じ、4月17日には、2020年2月から続いていた公衆衛生上の緊急事態宣言の解除が発表されました。これに伴ない、今後、消費など国内経済活動の活発化が期待されます。

注目を集める秋の大統領選挙
ブラジルレアルが好調な値動きとなる中、10月の大統領選挙に注目が集まっています。現地では、不平等の是正など貧困層向けの施策を優先課題に掲げるルラ元大統領が支持を集めており、3月の世論調査での支持率はトップとなっています。しかし、同氏は市場経済や財政規律を重視しない旨のコメントを発しており、市場では、同氏の返り咲きを警戒する声もあがっています。現職のボルソナロ大統領については、新型コロナウイルス対策を巡る失策や汚職疑惑などの影響で、支持率は2位と苦戦しています。支持率3位には、経済改革を重視する元法務・公安相のモロ氏が続いています。次期大統領の政策次第では、ブラジルレアルのさらなる見直し買いにつながる可能性もあることから、選挙を巡る今後の動向が注目されます。

【図表】[左図]ブラジルレアルおよび商品指数の推移、[右図上]ブラジルの政策金利・インフレ率の推移、[右図下]ブラジルの新型コロナウイルスの感染状況
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。