米NASDAQ100指数は、今年4月に▲13.4%と、月間ベースで2008年10月以来の大幅安となったのに続き、5月入り後も続落し、同月9日時点の騰落率は前年末比▲25.3%と、主要株価指数の中でも特に軟調となっています。この主な背景として、米国での長期金利の上昇に伴なうバリュエーション調整と企業業績見通しの不透明感が挙げられます。

バリュエーション調整と業績見通しの不透明感
グラフ1の通り、NASDAQ100指数と予想EPS(1株当たり利益)の長期の推移を見比べると、2019年頃まではかなり似通っていました。ところが、2020年2~3月のコロナ・ショック以降は乖離が目立ちます。この主な理由として、コロナ禍を受け、米FRB(連邦準備制度理事会)が行なった大規模な金融緩和により長期金利が歴史的な低水準となり、株価の大幅な上振れを促したことが挙げられます。

また、NASDAQ100指数の場合、業種別時価総額構成比率はITセクターが50%程度を占めてトップ、次いで、メディア・娯楽を含むコミュニケーション・サービス・セクターが20%近くとなっています。このため、コロナ禍におけるIT需要の高まりや「巣ごもり消費」から大きな恩恵を受けるとの見方が拡がると、同指数は他の主要株価指数を凌ぐ上昇を遂げ、株価の割安・割高の判断に用いられるバリュエーション指標の予想PER(株価収益率、グラフ2、グラフ3参照)が一時、30倍台に膨らみました。

ところが、昨年11月にFRBが量的緩和の縮小を開始し、金融政策の正常化に舵を切ると、翌月以降、長期金利が上昇基調となり、今度は株式に売り圧力がかかりました。すると、それまで、株価、予想PERとも大きく上昇していたNASDAQ100指数がより大きな調整を強いられることとなりました。

さらに、企業業績面では、動画配信大手やネット通販大手といった、「巣ごもり消費」の恩恵を享受した主要企業から、冴えない1-3月期決算や事業見通しなどが4月に相次いで発表されたことも、NASDAQ100指数の軟調に大きく影響しました。同指数の予想EPSの推移を見ると、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴なう対ロシア制裁や、ゼロコロナ政策をとる中国での感染拡大の影響などもあり、足元で頭打ちとなっているのが分かります(グラフ1の直近部分参照)。

企業業績見通しの行方に要注目
ただし、これまでの株価下落でNASDAQ100指数のバリュエーション調整が進み、足元では予想PERが過去の平均並みに低下しています。長期金利の更なる上昇などに伴ない、株価や予想PERが一段と下振れする可能性は否定できません。しかし、ここから先は株価に割安感が生じるため、下値抵抗力が出てくると期待されます。一方、景気回復などにより予想EPSが再度、増加基調に戻れば、同指数も早晩、上昇基調を回復すると見込まれます。

【図表】[左図]NASDAQ100指数と主要指標の推移、[右図]左下グラフの足元のクローズアップ
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