世界的な株安が続く中、日本株式は底堅く推移
年初から世界的に株価下落が続いています。その背景としては、インフレの抑制などをめざし、各国・地域の中央銀行が金融政策の正常化を進めていること、ロシアのウクライナ侵攻によって地政学リスクが高まっていること、中国の主要都市におけるロックダウン(都市封鎖)の実施により同国の景気減速が懸念されていることなどが挙げられます。

このような中、日本株式は下落が限定的であり、世界株式に対して相対的に底堅く推移していることが確認できます(グラフ参照)。

金融政策や企業業績などが支援材料に
日本株式が底堅く推移している背景としては、欧米との金融政策の方向性の違いや円安の進行、良好な企業決算内容、国内消費の回復期待などが挙げられます。

高インフレが続く欧米で金融政策の正常化が進む一方、日本では個人消費や労働市場の回復が鈍い点などを踏まえ、日銀が金融緩和を継続する姿勢を明確にしており、これが市場で好感されています。また、海外との金利差拡大を受け、3月以降、円安が進行しています。

こうした中で、東証プライム市場に上場している日本企業の2022年3月期の純利益は、4年ぶりに最高益を更新することが見込まれています。

加えて、まん延防止等重点措置の解除に伴ない、国内消費の回復が期待されていることから、2023年3月期はさらなる業績の拡大が期待されます。国内消費に目を向けると、例えば、2022年のGW(ゴールデンウィーク)では、緊急事態宣言が3年ぶりに発令されなかったこともあり、各地で人出が前年を大幅に上回り、コロナ前(2019年)の実績を超えた地域もありました。

これら以外にも、業績回復を受け、自社株買いや増配など株主還元策の強化を発表する日本企業が相次いでいることや、引き続き、米国株式などと比べて株価の割安感が強いことなども、支援材料となっています。

4月は海外投資家が3年ぶりの高水準で日本株式を買い越しました。海外投資家は日本の株式市場において存在感が大きいことから動向が注目されており、今後の資金流入を左右するという意味でも、政策面での動きなどが重要と考えられます。

参院選を見据えた岸田政権の政策手腕に注目
岸田首相は5月初旬に「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」と発言しました。日本の個人金融資産2,000兆円の多くを占めている預貯金を投資へシフトさせ、資産所得の倍増を目指すという首相のシナリオについて、具体的な実行計画が6月末までに取りまとめられる予定です。

また、7月の参院選を見据え、政府の観光需要喚起策である「Go To トラベル」事業の再開(時期未定)や、6月以降、外国人観光客の入国再開が検討されていることもあり、インバウンド需要の回復にも期待が寄せられています。このように、日本株式は引き続き支援材料が多いことから、今後も投資家の注目度は高いと考えられます。

【図表】2022年の主要株価指数の推移
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。