米国株、90年ぶりの8週連続安、米国債は反発
米国では先週、高インフレが景気や企業業績を圧迫するとの懸念が拡がったことなどから、ニューヨーク・ダウ工業株30種が週間ベースで8週連続安と、大恐慌時の1932年以来の連続安を記録したほか、S&P500、ナスダック総合の両指数も7週連続安と、2001年以来の連続安となりました。一方、投資家のリスク回避の動きを背景に国債が買われ、10年物の利回りは5月初めにつけた3%超の水準から、先週末には2.7%台まで低下しました。

小売大手から業績見通しの下方修正が相次ぐ
景気や企業業績の悪化懸念がここにきて拡がったのは、米大手小売企業3社が先週、運送費や人件費といったコスト上昇に加え、在庫の値下げ・処分などを理由に予想を下回る決算や業績見通しの下方修正を相次いで発表したためです。

ただし、これらの発表には、消費者が支出の対象をモノから旅行・娯楽などのサービスへとシフトしつつあることを示唆している面もあります。そして、モノへの需要の低下は、インフレ圧力の緩和に直接つながるほか、労働市場のひっ迫や供給網の混乱といった問題の緩和を通じても、物価面での安心材料になり得ると考えられます。また、新型コロナウイルス感染への懸念が後退し続け、より多くの人々がサービス分野で積極的に支出するようになれば、モノへの需要の低下の影響を相殺し、景気や企業業績を支えると期待されます。

9月以降の利上げペースを左右する、今後の物価・景気の行方に注目
なお、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は先週17日、利上げ幅を0.5ポイントに引き上げた5月のFOMC(連邦公開市場委員会)に続き、向こう2回(6月、7月)の会合での0.5ポイントずつの追加利上げを改めて示唆しました。さらに、インフレ圧力の鎮静化を示す明確で納得できる証拠が得られるまで利上げを続けるとして、必要であれば中立水準を超える利上げも躊躇しないと述べた一方で、経済は強く、金融引き締めに耐えられる好位置にあるとの見方も示しました。

現在、0.75~1.00%の政策金利(FFレートの誘導目標)は、6・7月のFOMCを経て1.75~2.00%に引き上げられる方向で、その次の9月の会合でも0.5ポイントの利上げが繰り返されれば、2.4%程度とされる中立水準に達することになります。これに関連して、パウエル議長は17日、上述のインフレ圧力沈静化の証拠が見られるかどうか次第で、利上げのペースを和らげるか、一段と速めるかを検討することになると述べています。つまり、9月以降のFOMC(9月、11月、12月)では、今後の物価や景気の動向に一段と注目し、利上げについて、その幅の縮小・拡大の可能性も含め、より慎重に議論されることになります。その際、モノからサービスへの消費のシフトが上手く進み、インフレ圧力が和らいでいるようであれば、利上げ幅が0.25ポイントに戻されることになると期待されます。

【図表】[左図]米国の物価上昇率と政策金利の推移、[右図]米国の株価と長期金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。