足元で中国株式市場は回復傾向に
年初以降、中国株式市場は、景気鈍化懸念に加え、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ情勢の緊迫化に伴なう商品価格の急騰などを受け、軟調に推移しました。しかし、4月下旬を底に、足元で回復傾向となっています。

年初からの株安の最大の要因は、新型ウイルスの感染拡大です。中国政府はゼロコロナ政策によって新規感染者数を低く抑えてきたものの、3月半ばには深センでロックダウン(都市封鎖)が実施されたほか、3月末からは上海が2ヵ月を超えるロックダウンに追い込まれました。大都市における厳格な行動規制は、消費や企業活動の低下に加え、物流やサプライチェーンの混乱も引き起こし、中国経済の停滞を招きました。

そうした中、政府が4月末の中央政治局会議で2022年の「5.5%成長目標」を堅持する姿勢を見せると、株式市場は政策への期待感から大きく反発しました。その後、5月20日には中央銀行が利下げを行なったほか、23日には国務院常務会議において6分野33項目にわたる景気支援策の実施が決定されました。また、最大の懸念材料であった上海の感染状況も5月半ばには落ち着きを見せ、6月初めからのロックダウン解除が発表されると市場心理は大きく改善しました。

景気の底打ちも見え始めてきた
一方で、上海のロックダウンが中国のマクロ経済に与えたダメージは大きく、4月の経済指標が消費や生産を中心に大きく悪化したことから、景気や株価の本格的な回復には更なる時間を要するとの見方もあります。

そうした中、中国国家統計局が5月末に発表した5月の製造業購買担当者指数(PMI)は、好・不調の境目である50を3ヵ月連続で下回ったものの、前月から2.2ポイント上昇し、市場予想を上回りました。上海のロックダウンでは、行動規制の解除に先立って企業活動が優先的に再開されたことから、物流の改善と、新規受注や輸出などの需要が戻りつつあることが反映されたものと考えられます。

また、4月下旬以降の株価動向を業種別に見ても、製造業の顕著な回復がうかがわれます。太陽光・風力・EVバッテリーなど、脱炭素分野の上昇が最大となったほか、上海を一大製造拠点とする自動車セクターも大きく反発しました。消費やヘルスケアの回復が遅れているため全体的な大幅反発には至っていないものの、成長分野の株価には投資家の自信と期待が表れていると考えられます。

株式市場の本格的な回復が期待される
なお、米国の金融政策動向は引き続き中国株式市場のリスク要因になるとみられるものの、ウクライナ情勢からの更なる影響は限定的と見込まれるほか、中国国内の不透明感も後退しつつあります。海外からの資金流入も足元で回復傾向にあることから、今後も感染拡大が抑制されれば、景気対策の効果も徐々に表れると見込まれ、中国株式市場の本格的な回復が期待されます。

【図表】[左図]中国株価指数の推移(現地通貨ベース)、[右図]中国のPMIの推移
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。