米利上げ幅拡大、スイスも予想外の利上げ
米FRB(連邦準備制度理事会)は、6月14・15日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で、追加利上げを決定し、その幅を0.75ポイントと、1994年11月以来の大幅引き上げとしました。利上げ幅拡大観測が事前に拡がったことに加え、パウエル議長が会見で、同利上げ幅は「異例」であり、「普通」とはならないとして、次回7月の利上げは0.5ないし0.75ポイントのいずれかになる可能性が高いと述べたことなどから、15日の米国市場では、国債利回りが低下し、株式相場は上昇しました。

翌16日には、英中央銀行が5会合連続の利上げを決定したほか、スイス中央銀行も予想外の利上げ、それも0.5ポイントの大幅引き上げを決定し、両行とも追加利上げを示唆しました。すると、高インフレへの対応で拡がる利上げに伴なう景気への悪影響が懸念され、欧米株式相場が大幅安となったほか、17日のアジアでも株安が拡がりました。

FRB見通し:景気は引き下げ、失業率は引き上げ
FRBは、6月10日に発表された5月の消費者物価指数が前年同月比+8.6%と、1981年12月以来の高い伸びとなったことや、同日発表の家計の1年先の期待インフレ率が1981年以来の高水準となったことなどを主な背景に、今回、利上げ幅を一段と引き上げました。

また、今回示されたFOMC参加者の見通しでは、24年までの政策金利(中央値)が上方修正され、今年末では3.4%と、年内残り4回の会合で計1.75ポイントの利上げが想定されているほか、23年にも追加利上げが見込まれている一方、24年には利下げが想定されています。そして、24年にかけてのGDP成長率は下方修正、失業率は上方修正されましたが、前者については、潜在成長率程度の水準は維持すると想定されています。

なお、パウエル議長は会見で、米国経済の軟着陸は可能と強調しながらも、ウクライナ情勢や世界的な供給網上の懸念に言及し、制御できない多くの要因がFRBの目標達成の可能性を大きく左右するとして、目標到達の道はあるものの、一段と険しくなっていると述べました。

景気軟着陸に向け、柔軟な舵取りが期待される
米国では、住宅ローン金利の上昇などから、住宅関連指標に既に陰りが見られるほか、15日に発表された5月の小売売上高も予想外の前月比減となるなど、経済指標に下振れが目立ちます。こうした中、来年にかけて景気鈍化が進み、23年中に利下げに転じるとの見方が市場で拡がっており、先物市場で織り込まれている同年末の政策金利の水準はFOMC参加者の見通しの3.8%を下回り、3.4%台にとどまっている状況です。

FRBは、インフレ抑制に向けて険しいファイティングポーズをとらざるを得ないものの、今後のFOMCでも毎回、物価や労働市場などの経済状況を踏まえ、景気を軟着陸させるべく、慎重かつ柔軟な舵取りを行なっていくと期待されます。

【図表】[左図上]6月のFOMC参加者の見通し(中央値)単位:%、[左図下]年内のFOMC開催予定(下段:議事要旨の公表日)、[右図]米国の物価上昇率と政策金利の推移
  • 上記は過去のものおよび予定、見通しであり、将来を約束するものではありません。