家計の金融資産は年度末ベースで過去最高に
日銀が6月27日に発表した「資金循環統計」によると、2022年3月末時点の家計(個人)の金融資産残高は約2,005兆円と、季節要因や株安の影響などから21年12月末と比べて約10兆円減少したものの、年度末ベースでは過去最高となりました。

また、主要資産別に家計の資金フロー(流出入)を確認すると(左下のグラフ参照)、残高の過半を占める「現金・預金」の伸びが鈍化した一方で、リスク性資産である「株式・投資信託」への資金流入が増加基調となっているのが目立ち、貯蓄から投資への流れが芽生えつつあるように見えます。

インフレや円安などで現金・預金偏重のリスクが意識され、リスク性資産への投資が活発に
このように、リスク性資産への家計資金の流入が増加基調となっている主な背景として、20年末から21年初めにかけてインフレ率や対米ドル円相場が反転し、足元でインフレ傾向、円安傾向になっていることが挙げられます(右下のグラフ参照)。

インフレが進んだり、続いたりすれば、現金・預金の実質的な価値は目減りすることになります。また、円安により、円資産の実質的な価値は低下します。インフレについては、徐々に鈍化するとの見方もあるほか、日銀は円安を注視するとの声明を出しています。ただし、日銀は大規模金融緩和を継続する意向のため、国内の預金金利は低水準のままと考えられるほか、円安の背景となっている内外金利差が縮小に向かうとは見込みがたい状況です。

政府は「資産所得倍増プラン」で投資を後押し
なお、岸田政権は、現金・預金として眠った状態の家計の金融資産を日本株などへの投資に振り向けて企業価値を向上させ、株価上昇や配当などを通じて家計に恩恵を行き渡らせる、「資産所得倍増プラン」を打ち出しています。NISA(ニーサ:小額投資非課税制度)の抜本的な拡充や、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)制度の改革など、今年末に具体策が策定される予定です。

こうした施策などもあり、貯蓄から投資への流れは今後、定着・拡大すると期待されます。一方で、将来、もしも投資ブームのような状況に発展する場合、気をつけたいことがあります。それは、何事でもブームに安易に乗ると、失敗に終わる可能性が高いということです。

むしろ、昨今のように、世界的に投資家のリスク性資産選好度が低く、株価などが冴えないような状況の時こそ、中長期の視点で投資を検討すべきではないでしょうか。

【図表】[左図]家計の資産別資金フローの推移、[右図]物価と為替相場の推移
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。