大統領選は現職と元大統領との一騎打ちの様相
ブラジルでは、10月2日に大統領選挙が実施されます。世論調査では、左派のルラ元大統領(労働者党)が支持率でトップ、これに次ぐのが再選を目指す右派のボルソナロ大統領です。そして、3位以下は1桁の支持率にとどまっており、両氏の一騎打ちの様相となっています。

資源高ながら、ブラジルの景気は低迷
同国は資源国として有名ながら、国際商品市況の上昇にもかかわらず、景気は足元で低迷しています。その背景として、供給網上の制約の影響などから世界的にモノの価格が広範に上昇する中、ブラジルの輸入品の価格上昇に伴なうマイナスの影響が資源価格の上昇に伴なうプラスの影響を上回っていることが挙げられます。また、国内での少雨・干ばつが電力不足や作物の不作につながっていることもあり、インフレ率が高水準となっています。

そして、高インフレへの対応で繰り返される利上げや、高い失業率、個人消費の低迷、金利上昇に伴なう投資の鈍化などにより、今後も景気低迷が続く見通しとなっています。

旧政敵と組み、支持拡大を狙うルラ元大統領
こうした中、6月23日に発表された民間調査会社の世論調査での支持率は、ルラ氏の47%に対し、ボルソナロ氏は28%にとどまりました。また、白票・無効票や態度未定と答えた票を除くと、ルラ氏の支持率は53%に達し、決選投票(10月30日の予定)無しでの当選の可能性が示唆されています。

ボルソナロ氏は2019年の大統領就任以降、年金改革や国営企業の民営化などに取り組み、一定の評価を受けました。しかし、コロナ禍への対応を軽視し、多数の感染者・死者が出ることとなったほか、暴言が目立つことや、前述のような足元での高インフレや景気低迷もあり、批判を浴びています。

一方、ルラ氏は、2003年からからの8年の大統領在任中、資源高を背景とした好景気にも支えられ、貧困対策を推し進めたことなどから、低所得層を中心に今でも高い人気を誇っています。前回2018年の大統領選では、汚職疑惑で出馬を見送ったものの、その後、有罪判決が取り消しとなり、今回の出馬に至りました。

なお、ルラ氏は今回の選挙での伴走者として、かつて大統領選の決選投票で戦った、中道左派のアルキミン氏(社会党)を副大統領候補に選びました。同氏は、主要政党の党首やサンパウロ州知事を務めたこともある大物政治家で、産業界との結びつきが強いことなどから、ルラ氏の支持基盤の拡大に大きく貢献すると見込まれています。

選挙の結果は終わってみないと分からないものの、ルラ氏がリードを保って大統領に返り咲き、大衆迎合主義など、極端な政策を実施しようとするような場合には、副大統領となるアルキミン氏が歯止めになることが期待されます。

【図表】[左図]ブラジル・レアルと株価、国際商品市況の推移、[右図]ブラジルの主要指標の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。