1月、4月に続き、3回連続の下方修正
IMF(国際通貨基金)は、7月26日に最新の経済見通しを発表し、想定を上回る高インフレに伴なう米欧などでの金融政策の引き締めや、中国でのロックダウン(都市封鎖)の影響を主な背景として、2022年の世界のGDP成長率を3.2%と、前回4月の見通しから0.4ポイント下方修正した一方、インフレ率を、先進国で6.6%、新興国で9.5%と、それぞれ、0.9ポイント、0.8ポイント上方修正しました。

同年の成長率見通し下方修正の主な背景は、世界の3大経済国・地域での景気の失速です。具体的には、①米国での2022年上半期での成長鈍化、家計の購買力の低下、金融政策の引き締めの影響、②中国でのロックダウンの強化と不動産危機の深刻化、③欧州でのウクライナ紛争および金融政策の引き締めの影響、とされています。なお、IMFは、世界経済が同年4-6月期にマイナス成長に陥ったとみています。

2023年は一段と大きな下方修正に
2023年については、主要国・地域での金融政策の引き締めの影響などを背景に、GDP成長率を0.7ポイント下方修正し、2.9%としました。一方、インフレ率は先進国で3.3%、新興国で7.3%と、前年から大きく鈍化する見通しながら、揃って0.8ポイント上方修正しました。

成長率は2023年に2%にまで減速の可能性も
また、IMFはリスク要因を挙げ、前述の基本見通し以外に、下振れシナリオも示しています。リスク要因として挙げたのは、①ウクライナ紛争に絡んで、ロシアが欧州への天然ガス供給を完全に停止する、②インフレが高止まりする、③世界の金融環境がさらに引き締まる、④新型コロナウイルスの感染再拡大に伴ない、中国でロックダウンが更に実施される、⑤食料・エネルギーの価格高騰などを背景に、社会不安が拡がる、⑥地政学リスクなどに伴ない、世界貿易や国際協調が阻害される、などです。

そして、これらの一部が現実となる場合、インフレ率が上振れする一方、米国やユーロ圏で経済成長率が2023年にはほぼゼロ%となるほか、その影響などから、世界の成長率は2022年で約2.6%、2023年には2.0%にまで減速するとみています。

今後、世界経済が果たして、IMFの基本見通し寄りの方向に進むのか、それとも、下振れシナリオ寄りとなるのか、コロナ禍やウクライナ紛争の行方、世界的なインフレとそれに伴なう利上げの動きなどが引き続き注目されます。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • (IMFのデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。