約50年ぶりに再び月をめざすアルテミス計画
9月3日、米国の月面探査計画、「アルテミス計画」の第1号機となる無人宇宙船オリオンの打ち上げが、同月19日以降に再延期されることとなりました。1972年に終了したアポロ計画以来、約50年ぶりに有人で月をめざす同計画には、欧州やカナダ、日本なども参加しています。今回の試験飛行を経て、2025年以降に有人月面探査の再開、さらに2030年代には有人火星着陸を目標としています。

民間主導により、宇宙産業は大きく前進
本計画は、多くの民間企業が参画している点も注目されます。例えば、宇宙船オリオンの開発には航空・防衛関連大手のロッキード・マーチン社が主に携わるほか、打ち上げシステムではボーイング社やノースロップ・グラマン社、また、オリオンで月周回軌道まで到達後に月面着陸までを担う有人宇宙船の開発は宇宙新興大手のスペースX社、というように、その顔ぶれはさまざまです。

米国は、世界の中でも宇宙開発に巨額の国家予算を投じる、まさに宇宙産業先進国と言えますが、2004年にスペースシャトル計画の終了が発表されて以降、宇宙産業の「官から民へ」の移行を進めてきました。このことが技術進化とコスト低下につながり、結果的にビジネスとしての宇宙産業を大きく前進させることとなりました。

近年は、ロケットの再利用や打ち上げコストの大幅な低下が実現されたことで、スペースX社やブルーオリジン社などの新興企業が相次ぎロケット打ち上げを行なっており、宇宙関連ビジネスの中でも、衛星ブロードバンドの拡充や宇宙データの利活用などは、すでに実用化が進んでいます。

今回のアルテミス計画も、2012~2025年の累計で930億米ドル程度と巨額の費用が見込まれるものの、再利用技術の活用などにより、関連費用はアポロ計画時から大きく抑えられているといわれます。

2040年には1兆米ドル市場との見通しも
宇宙産業の商業化に伴なう恩恵は、ロケットや人工衛星の製造などにとどまらず、地上設備の普及や宇宙データの利活用など、幅広いビジネスに及ぶといわれています。そのこともあり、現在の市場規模は4,000億米ドル程度とされますが、今後、宇宙通信サービスならびに宇宙関連ビジネスを利活用したサービスなどを中心に、市場規模の拡大が見込まれ、2040年には1兆米ドルに達するともいわれます。

足元で、景気減速懸念に伴なって金融市場には先行き不透明感が強まっていますが、時間と投資先の視点を少し先に移し、壮大な宇宙ビジネスがもたらす投資機会に注目してみてはいかがでしょうか。

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【図表】[左図]主要国・地域の宇宙開発プログラム政府支出、[右図]世界の宇宙関連ビジネス内訳(売上ベース)
  • Statistaデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
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