8月の米消費者物価指数は総じて予想を上回る
米国では、消費者物価指数が今年6月に前年同月比+9.1%と、1981年1月以来の高い伸びとなった後、エネルギー価格が下落傾向に転じたことなどから、インフレはピークアウトし、収束に向かうとの見方が足元で拡がっていました。しかし、9月13日に発表された8月の消費者物価指数は総じて市場予想を上回りました。

このため、9月の米国の利上げ幅は0.75ポイントのままか、1.00ポイントに引き上げられるとの見方が拡がり、13日の欧米市場では、長期金利が上昇したほか、株価は大きく下落しました。また、14日のアジア市場でも、株安が拡がったほか、日本でも国債利回りが上昇、さらに、円相場は下落し、一時、1米ドル=145円に迫りました。

サービス価格の上昇が予想上振れの主な要因
8月の米消費者物価指数は、全体で前年同月比+8.3%と、2ヵ月連続で伸びが鈍化したものの、市場予想ほどには鈍化しなかったばかりか、エネルギーや食品を除くコアでは+6.3%と、予想を上回る伸び率加速となりました。

予想上振れの主な背景として、モノからサービスへの需要シフトや賃上げの拡がりなどを受け、サービス価格が上昇したことが挙げられます。中でも、サービス価格の大部分を占める、家賃を中心とする住居費の上昇が響きました。住宅の賃借人は通常、自身の給与で支払い可能な家賃水準を基に物件を決めるため、家賃は賃金動向の影響を強く受けるとされています。

労働市場のひっ迫が賃金インフレを招く恐れも
一方、8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比+31.5万人と、前月から伸びは鈍化したものの、市場予想を上回る堅調ぶりでした。また、失業率は3.7%に上昇(悪化)したものの、前月および2020年初めに記録した、約半世紀ぶりの低水準となる3.5%を僅かに上回るだけです。さらに、平均時給は前年同月比+5.2%と、2022年に入って以降、5%を上回る高い伸びが続いています。

米国では、今年7月に総雇用者数がコロナ禍前の2020年2月の水準を回復するに至りましたが、翌8月の雇用統計でも、労働市場のひっ迫が続いていることが示唆されている状況です。FRB(連邦準備制度理事会)は、こうしたひっ迫が続けば、賃金インフレを通じて、インフレがより持続的になる可能性があるとして、警戒しています。

需要がモノからサービスへ移行していることに加え、足元ではエネルギー価格が下落傾向となっていることもあり、モノの価格上昇については今後、弱まる可能性が高まっているようです。ただし、賃金上昇の影響を受け易いサービス価格については、上昇が勢いを増す可能性も考えられます。このため、FRBは、物価動向はもちろんのこと、労働市場のひっ迫状況にも目を光らせながら、今後の金融政策のかじ取りを進めていくとみられます。

【図表】[左図]米国の消費者物価指数と政策金利の推移、[右図]米雇用関連指標の推移
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。