食料危機への関心が高まっています。国際連合のグテーレス事務総長は2021年の声明で、2020年に世界で飢餓に直面した人は7億人超に上り、2019年比で約1.6億人増加したとして、食料システムの変革への投資を訴えました。早ければ、2020年代後半にも、タンパク質の需給バランスが崩れ始める「タンパク質危機」が訪れるとの予測もあり、食料システムの変革が求められています。

食料危機は構造的な要因が背景に!?
食料危機が懸念される背景として、短期的にはロシアによるウクライナ侵攻が挙げられます。両国は小麦やトウモロコシといった穀物や肥料などの一大輸出国であることから、紛争による混乱などの影響で、それらの価格が高水準で推移しています。

一方、長期的には、より構造的な要因が指摘されています。まず、世界の人口増加と新興国の経済発展が挙げられます。世界の人口は急速に増えており、2050年代後半には100億人を超えると予想されています。さらに、新興国の経済発展に伴なう食の多様化、飽食化も加わり、食料需要の急激な増加が懸念されています。

また、地球温暖化などを背景に、自然災害が増加傾向にあり、食料の収穫量に影響が出ていることも挙げられます。近年では、豪州での大規模な干ばつや北米での熱波による小麦・菜種生産への打撃、2022年には、欧州が「500年で最悪」ともされる干ばつの危機にさらされており、穀物などの収穫量に影響が及んでいます。

従来型の食料の増産には課題も
一方、従来型の食料の増産には課題もあります。家畜の飼育を例にすると、土地や水、飼料用の穀物が大量に使用されるほか、家畜が排出するメタンガスには高い温室効果があり、穀物や豆類などと比べて環境負荷が高いことから、生産性や持続可能性の点で問題視されています。

加えて、高齢化や離農者の増加により、世界的に農業従事者が減少傾向にあるほか、農地の砂漠化や土壌の劣化などの問題もあり、農業・畜産業の生産性の向上が急務となっています。

課題解決に寄与する技術に注目が集まる
こうした中、農業・食料の課題解決に寄与する技術が注目されています。例えば、トラクターなど農機の自動化、ドローン・AI(人工知能)を使った農作物・家畜の管理など、農業の生産性を高める「精密農業」技術のほか、大豆など植物を原料とする代替肉や家畜の細胞から肉を作る培養肉などの「代替タンパク質」技術、品種改良により収穫量を高める「ゲノム関連」技術など、最新技術で食料システムを変革する試みが活発になっています。

こうしたこともあり、食料・農業関連銘柄の株価は、足元で堅調な推移となっています。食料危機は構造的な要因を抱えていることから、その改善・解決に資する分野は中長期的な投資テーマとして、今後も注目を集めると考えられます。

【図表】[左図]急速な増加が見込まれる食料の消費量、[右図]足元で堅調に推移する農業・食料関連株式
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。