中国の新エネ車販売は政策支援を受けて急拡大
足元で中国の景気減速が懸念されています。しかし、そうした状況にあっても好調を維持し、注目を集める分野があります。その一つとして、自動車、特に新エネルギー車(新エネ車)が挙げられます。

今年前半に実施された長期のロックダウンを受け、中国の自動車産業は大きく落ち込みました。これに対し、政府は相次いで大型の支援策を発表し、なかでも新エネ車に関しては、中央政府のみならず、多くの地方政府も次々に販売支援策を打ち出しました。その結果、新エネ車の販売は大きく増加し、足元の新車販売台数に占める新エネ車の割合は25%を上回る勢いとなりました。これは2020年11月に発表された「新エネ車産業発展計画」の目標を前倒しで達成する水準となります。

新エネ車市場の急拡大の裏には、中国メーカーの躍進があります。中国最大のシェアを誇るBYDが、世界最大のEVメーカー、米テスラと世界トップを争う存在となったように、今や中国のEVメーカーは高い生産能力や価格競争力に加え、技術面でも先進国に迫る水準へと成長しつつあります。そうした中国メーカーは、巨大な国内市場のみならず、欧州諸国やアジア・オセアニアなどへの海外進出も活発化させており、今後ますます注目を集めるとみられます。

太陽光発電分野にも強力な追い風が
新エネ車と共に、好調が目立つのは太陽光発電分野です。中国では近年、太陽光発電をはじめとするクリーンエネルギー政策が次々に打ち出されており、今年上期に新設された太陽光発電設備は前年比約2.4倍に拡大しました。こうした旺盛な国内需要に加え、足元では海外需要、とりわけ欧州の需要が中国企業への追い風となっています。

欧州では、ウクライナ問題が引き起こしたエネルギー危機により、クリーンエネルギーへのシフトが加速しています。欧州委員会はロシア産の化石燃料依存からの脱却をめざし、太陽光発電設備の大規模な拡大を計画していますが、これらの実現には、同分野の生産能力において圧倒的な強みを有する中国企業の力が不可欠とみられています。

国の威信をかけた国策、“脱炭素”の成長可能性
上述の新エネ車や太陽光発電はいずれも、中国政府が国策として掲げる“脱炭素”の分野です。2030年までのカーボンピークアウトと2060年までのカーボンニュートラルをめざす中国政府は、脱炭素分野での世界的な主導権の獲得をめざし、強力な支援を続けています。そのため、中国における脱炭素への取り組みは不可逆的であり、決して一過性のものではないと考えられます。

足元の株式市場では、世界的な先行き不透明感から、株価の変動性が高まっています。しかし、政府のコミットメントに裏打ちされた中国の脱炭素分野の成長可能性は相対的に高く、かつ長期のものであると考えられます。短期的な値動きに一喜一憂せず、中長期の投資のテーマとして、中国の脱炭素分野に注目してみてはいかがでしょうか。

【図表】[左図]中国の新エネ車の販売台数およびシェア、[右図]中国の太陽電池輸出額(米ドルベース)
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