2022年に入り、欧米を中心に債券価格が大きく下落しています。年初からの世界債券の騰落率は▲21.3%(9月末まで【下左グラフ】)と、過去30年で最大の下落となっています。

この下落の主な要因は、欧米で急速に進むインフレを抑制するため、各国の中央銀行などの金融当局が、金融引き締め政策として相次いで利上げに踏み切ったことが挙げられます。

【債券は市場金利によって取引価格が変動する】
債券とは、発行体が債務不履行とならない限り、満期日になれば額面が返済され、満期までの間、定期的に利子の受け取りが期待できる金融商品です。ただし、債券の取引価格は満期までの間、市場の金利動向に応じて変化します。市場金利が上昇すると、債券は一般に利子が固定されているため投資対象としての魅力が薄まることとなり、債券価格は下落します。

米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)は、政策金利であるFFレートをコロナ・ショック時に大きく引き下げ、以来0.25%(上限値、以下同じ)で維持していましたが、インフレ進行を抑制するために、本年3月に引き上げを開始し、9月時点では3.25%に到達しました【下右グラフ】。なお、市場では、この先も政策金利の引き上げはしばらく続くと予想されています。

本年3月から現在までの政策金利の引き上げ幅は3%ポイント(3.25-0.25)と、大きさを実感しづらいかも知れませんが、変化率で見ると13倍(3.25÷0.25)と非常に大きく、また、半年程度という短期間で実施されたことから、債券市場はかつてないほどの下落に見舞われました。

また、欧米各国で政策金利が同時期に引き上げられたことや、国債を大量保有している金融機関や機関投資家が、損失回避のために半ば強制的な売却に踏み切り、売りが売りを呼ぶ中で急落した側面もあったと考えられます。

【債券投資とどう向き合えばよいのか】
中央銀行は、金融政策の柱にインフレターゲット(目標インフレ率)を据えており、この先、物価上昇が落ち着きをみせれば、政策金利の引き上げを緩め、景気動向によっては引き下げに転じると見込まれます。政策金利が引き下げられれば、債券価格は上昇に転じるとみられますが、急激に下落した後だけに、投資家心理の回復には時間がかかるとみられます。

このように、債券価格は金利動向で変動しますが、それとは関係なく定期的な利払いや満期時の額面金額の返済(償還)が期待できます。足元の状況は稀にみる債券価格の急落局面であり、金利は大幅上昇しています。そのため、この先の債券投資は、高いインカム(利子)収入が期待できる上に、市場金利の低下余地が大きく、金利低下に伴なう債券価格の上昇も期待できると考えられます。

【図表】[左図]世界債券の騰落率(年次)、[右図]米国の債券と金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。