ルラ氏、12年ぶりにブラジル大統領に
ブラジルでは、10月30日に大統領選挙の決選投票が実施され、左派・労働者党のルラ元大統領が接戦の末、現職で右派・自由党のボルソナロ氏を破り、当選しました。ルラ氏は、2023年1月1日に大統領に就任し、その任期は4年で、2016年8月以来となる左派政権を率いることになります。

目先は、ボルソナロ大統領が決選投票の結果を受け入れるか否かに要注意
決選投票の結果が明らかになって以降、ボルソナロ大統領は沈黙を守っている模様です。ただし、同氏は選挙前から、現行の電子投票システムは不正の温床だと主張していました。さらに、決選投票の結果が僅差となったこともあり、当面は、同氏が今回の結果を受け入れ、政権移行に協力するのか、それとも、何らかの抗議行動に出るのかが注目されています。

注目される、経済相をはじめとする重要閣僚人事
さらに、ルラ次期政権を巡っては、経済相などの重要閣僚の人事や政策運営の先行きなどが注目されます。

ルラ氏は、低所得層への社会保障を重視する方針などを掲げて、有権者の支持を集めてきました。そうした政策の実現には歳出増が伴なうものの、同国では、歳出の伸びをインフレ率以下に抑える憲法改正が2016年に行なわれています。市場では、ルラ氏がこの縛りを変更する意向を示唆していることが危惧されています。

こうした中、経済相に左派色の強い人物が就くことになれば、市場の警戒感が高まると考えられます。一方で、経済相の有力候補の1人として、メイレレス氏の名前が挙がっていることが注目されます。同氏はかつて、ルラ政権の下で中央銀行総裁を、テメル前政権では財務相を務めた人物で、歳出上限の導入や労働市場改革を推し進めたことなどから、市場で高く評価されている人物です。財政規律を維持することの重要性を唱えている同氏が、ルラ次期政権で経済相に就くことになれば、市場の安心感につながると見込まれます。

少数与党のルラ次期政権、大胆な政策は困難か
また、10月2日に実施された連邦議会選挙では、ボルソナロ氏が所属する自由党が上下両院で最多議席を獲得するなど、右派が勢力を伸ばしたほか、中道系政党が引き続き存在感を示す結果となりました。これに対し、ルラ氏が所属する労働者党は議席を伸ばしたものの、同党をはじめとする左派連合の獲得議席は過半数に遠く及びませんでした。

このため、ルラ次期政権は少数与党となる見通しです。つまり、左派色の強い政策を思い通り進めることは困難であり、中道系政党などからの協力を得るために、政策の修正を余儀なくされる可能性が高いとみられます。

【図表】[左図]ブラジル・レアルと株価、国際商品市況の推移、[右図]ブラジルの主要指標の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。