米国の景気後退確率は2008年並みの高水準
米国における景気後退懸念が高まっています。例えば、ニューヨーク連銀が毎月公表している、米国経済の1年先の景気後退確率(下図)は、2023年11月の予想値で38.06%と、危険水準の30%を上回っており、リーマンショック前の2008年3月(41.71%)並みの高水準となっています。
米国における景気後退の定義
米国では、一般的に、実質GDP(国内総生産)成長率が2四半期以上連続で前期比マイナスになると景気後退といわれます。ただし、この機械的な判定に基づく景気後退は、「テクニカル・リセッション」と呼ばれ、正式な景気後退を意味しません。
米国において景気後退を正式に判断しているのは、全米経済研究所(NBER)です。NBERは、景気後退を「経済全体に広がり、数ヵ月以上続く経済活動の著しい低下」と定義しており、景気後退を判断する際には、深さ、広がり、期間という3つの基準のほか、実質個人所得や非農業部門雇用者数などの経済指標も重視しています。
市場では浅くて短いマイナス成長を予想
資料作成時点での市場見通しによると、米国経済は今後、成長が鈍化し、実質GDP成長率が2023年1-3月期から7-9月期にかけて3四半期連続で前期比マイナスとなる可能性があります。ただし、想定されるマイナス成長の幅が小さいことなどを考慮すると、たとえテクニカル・リセッションになったとしても、正式な景気後退には陥らないとみられています。
景気後退局面で株価は底打ちしやすい
実質GDP成長率の前期比マイナスが続き、正式に景気後退入りしたとしても、一般に、景気後退局面では、企業業績の悪化予想とともに株価が下落した後、その先の景気や企業業績の回復を見越して、株価が上昇し始める傾向があります(右図表)。景気後退にはマイナスなイメージがありますが、本来、景気は循環するものであり、いずれ景気は後退から拡大に転じます。景気後退懸念で投資家心理の悪化が長引くよりむしろ、景気後退入り後に市場の関心が次の景気拡大期へと向かう可能性や、株安が進行した場合でも、景気に対する株価の先行性から、そこが投資の好機となる可能性などもあり、景気後退に対して、必ずしも悲観的になる必要はないと考えられます。
- 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。