大統領選挙、議会選挙は5月14日投票に
トルコのエルドアン大統領は3月10日、6月までに実施することになっている大統領選挙および議会選挙について、5月14日に実施することを正式に決定しました。

議院内閣制復活には5分の3以上の議席が必要
2月に大地震が発生し、犠牲者が4.5万人超におよんだ同国では、初動対応の遅れや建築基準の運用の緩さなどから、大統領や政府への批判が強まりました。ただし、復興への取り組みによっては、政権連合への支持が回復・向上する可能性も考えられます。

一方、野党側は、6党の連合で選挙に臨み、エルドアン氏が導入した実権型大統領制の廃止・議院内閣制の復活をめざしています。また、中央銀行の独立性を重視し、金融政策を正常化させる意向も示していることから、金融市場では、野党連合の勝利が望まれているとみられます。なお、3月6日には、大統領選の統一候補として、最大野党の中道左派CHP(共和人民党)の党首、クルチダルオール氏を擁立することが決まりました。

直近の世論調査での支持率では、クルチダルオール氏と野党連合がそれぞれ、エルドアン大統領と政権連合を上回っています。ただし、実権型大統領制の廃止・議院内閣制の復活には憲法改正が必要で、それには議会の5分の3以上の議席を確保する必要があり、実現は容易ではありません。また、74歳のクルチダルオール氏は、官僚出身の経験豊かな政治家で、安定感はあるものの、6党による連合を上手く率いていけるかなどを不安視する向きもあります。

トルコ・リラは今後も軟調傾向か
高インフレに見舞われている同国では、エルドアン大統領からの圧力に押され、中央銀行は昨年8月から11月まで利下げを繰り返しました。その後、利下げは完了したとして、今年1月まで2会合連続で政策金利は据え置かれたものの、大地震が発生すると、震災後の復興を支えるべく、2月には政策金利が8.5%へ引き下げられました。

インフレ率については、1年前の水準が高かった影響もあり、目先は鈍化するとみられていました。ただし、被災地域が農産物の生産地であることから、供給不足が物価に影響する恐れがあるほか、復興に向けた取り組みが様々な分野での物価の押し上げ要因になるとみられ、インフレ率は先々、高止まりすると想定されます。加えて、中期的には、復興需要などを背景に輸入が膨らみ、経常赤字が拡大する可能性があります。

こうした中、トルコ・リラは今後も軟調に推移する可能性が高いとみられます。ただし、インフレ率の高止まりなどにより、エルドアン大統領や政権連合への批判が一段と強まり、野党連合が大統領選挙で勝利するだけでなく、議会選挙で圧勝し、議席を大きく伸ばすとの見通しが強まる場合には、体制や政策が変更されるとの期待から、トルコ・リラが反発に転じることも考えられます。

【図表】[左図]トルコ・リラの推移、[右図]トルコの物価および政策金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。