日本の家計の金融資産は2022年末時点で約2,023兆円と、2021年末の2,014兆円を上回り、過去最高を更新しました。一方、米国の家計金融資産は、2021年末に過去最高の約118.7兆米ドルに達したものの、その後の長期金利の上昇や世界的な株安などを背景に、2022年末時点では約110.7兆米ドルと、約6.7%減少しました。ただし、それぞれを2000年末の規模と比較(中央グラフ)すると、日本では約1.4倍なのに対し、米国では約3.2倍と、拡大ペースに大きな違いが見られます。

長期で見た場合に、米国の家計金融資産の伸びが相対的に高い主な理由として、多くの人が資産形成に積極的で、運用成果を享受していることが挙げられます。同国では、家計金融資産に占める株式・投資信託(投信)の構成比が5割を超えているほか、保険・年金においても、確定拠出年金制度を通じて投信が積極的に活用されています。

一方、日本の場合、家計の金融資産の半分以上を現金・預金が占め、株式・投信は約14%にすぎないため、運用の効果は限定的となりがちです。ただし、投信については、コロナ・ショック直後の2020年4-6月期以降、11四半期連続で家計は買い越しとなっており、その額は13兆円に及びます。資産所得倍増を掲げる政府の方針・施策もあり、今後、投資機運が一層、拡がる可能性があります。

なお、投資にはもちろんリスクがつきもので、運用成果は市況などにより変動します。ただし、一般に、投資対象を分散することにより、リスクは低減し、さらに長期投資によって運用成果が安定化するとされています。また、国内資産に限らず、海外資産にも分散して投資をすれば、世界経済の成長の果実を得やすくなると考えられます。

このように、海外資産も活用し、リスクを抑えながら行なう長期投資の一例が、右下のグラフの赤い線です。この例では、2000年末に内外の主要6資産に等金額投資を行なった結果、足元の評価額は約3.6倍に膨らんでいます。こうしたシミュレーションや家計のリスク許容度を踏まえ、現金・預金を積み上げるのではなく、「おカネ」を投資に振り向け、働いてもらうことを検討してはいかがでしょうか。

【図表】[左図]日米の家計金融資産
の構成比、[中央図]日米の家計金融資産の推移、[右図]長期分散投資のシミュレーション
  • 上記は過去のものおよびシミュレーションであり、将来を約束するものではありません。